トランプ氏の「平和委員会」構想、ガザで進む“取引型外交”に各国が慎重
2026年1月、ガザ停戦の「第2段階」計画が打ち出される中、米国が新たに掲げた「Board of Peace(平和委員会)」構想が国際社会の様子見を招いています。復興の加速をうたう一方で、仕組みそのものが従来の多国間外交と異なるためです。
「平和委員会」とは何か:復興を“外部運営”で進める構想
米国のドナルド・トランプ大統領が公表した「平和委員会」は、表向きはガザを「瓦礫から復興へ」導くための政府間の枠組みとされています。およそ60の国・組織に招待状が送られた一方、参加や支持の広がりは鈍い状況です。
3層構造と、パレスチナ側の位置づけ
提示された設計は3層の階層型です。頂点に米国主導の理事層(富豪や政治的に近い人物が中心)を置き、パレスチナ側の行政は自治体業務を担う技術官僚的な委員会に位置づけられる、とされています。
「10億ドルで常任席」:資金拠出で席が決まる仕組み
とりわけ注目を集めているのが、いわゆる憲章に盛り込まれた“pay-to-play(支払って参加する)”型の制度です。報じられた内容では、10億ドルの拠出で常任席を得られ、それ以外は任期3年に限られる仕組みだといいます。
米側の狙い:国連を「迂回」し、民間型のスピードを優先
背景には、米政権が国連や関連機関を「官僚的」とみなし、米国とイスラエルの利益に対して不利な運用があるという不満がある、とされています。構想は、過去の国連安全保障理事会決議に基づく正当性を掲げつつも、日常的な監督の枠外で動くことで、従来型外交を迂回し、商業的な信託統治(トラスティーシップ)に近いモデルで復興を進める意図が示唆されています。
なぜ各国は慎重なのか:広がらない支持の2つの理由
1月18日時点で支持を表明したのは、ハンガリーやアルゼンチンなど一部の同盟的立場の国に限られる、という状況が伝えられています。各国の慎重姿勢には、大きく2つの論点があります。
1)国際制度の摩耗:主権平等の原則が揺らぐ懸念
欧州・アジアの外交当局者の間では、この枠組みを国連の補完ではなく、競合する別制度とみる見方があるとされます。「10億ドルで席が買える」設計は、合意形成を基礎にする国際法秩序よりも、資本の論理を前面に押し出す印象を与え、主権平等という前提を弱めかねない、という問題意識です。
2)権限の拡張:ガザを超えた“介入装置”になる不安
もう一つは、委員会の権限が将来的に広がる可能性です。目下の焦点はガザである一方、憲章は領域の扱いを明確にしないまま、紛争の脅威にさらされるあらゆる地域の統治を回復する「世界的権限」を想起させる表現があるとされます。これが一部の国には、平和構想というより一方的介入を制度化する仕組みに見えうる、という指摘です。
周辺国も様子見:安定に不可欠でも「外部監督」への警戒
ガザの安定に協力が欠かせないヨルダンやトルコ(Türkiye)ですら慎重姿勢を崩していない、とされています。理由として、構想がパレスチナの自己決定よりも、外部からの監督を優先しているように映る点が挙げられています。
焦点は「復興」だけで足りるのか:政治課題の先送りという疑問
この動きがガザ危機の解決に資するかどうかは、今後の参加国の広がりだけでなく、設計の中身にかかっています。指摘されているのは、持続的な和平には地域の正統性(当事者の納得)と政治的な明確さが必要だという点です。
構想がガザの将来を「国際的な資金提供者が管理する復興プロジェクト」として描くほど、占領、国境、国家のあり方といった難題が後景に退きやすい——そんな懸念が、国際社会の慎重さにつながっているようです。
これから何が注目点になる?
- 参加の広がり:招待を受けた国・組織が、資金条件や議席設計をどう評価するか
- 国連との関係:既存の多国間枠組みの補完になるのか、競合になるのか
- 当事者性の扱い:パレスチナ側の意思決定がどこまで制度的に担保されるか
- 権限の範囲:ガザ以外への適用可能性が、各国の警戒をどう左右するか
停戦の「次」に必要なのは、スピードだけなのか、それとも手続きの正当性なのか。2026年1月の国際社会は、その問いの前で立ち止まっています。
Reference(s):
The 'Board of Peace' and the rise of transactional diplomacy
cgtn.com








