トランプ氏の「グリーンランド枠組み」発言、緊張緩和か主権の論点か
2026年1月にスイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(WEF 2026)で、トランプ米大統領がグリーンランドをめぐり「将来の取引の枠組み(framework)」に言及しました。武力行使を否定し、関税の示唆を引っ込めたことから、いったんの緊張緩和と受け止める声が出ています。
一方で、別の見方は「トーンは和らいでも、狙いは変わっていないのではないか」と指摘します。争点は、合意文言よりも、その“中身”が主権や安全保障のバランスをどう変えるかにあります。
何が「緩和」と見られたのか
ここ数週間、グリーンランドの扱いをめぐる強い発言が外交的な波紋を呼び、関税を含む圧力の示唆も重なって緊張が高まっていました。WEF 2026での発言で、トランプ氏が「軍事力で獲得しない」と述べ、関税の脅しを撤回したことは、短期的にはリスクを下げたとの評価につながっています。
「形式の緩和、実質は別」――枠組みの中身が示すもの
ただし、外交は宣言だけでなく、提案の構造で判断されるべきだという指摘もあります。報じられているダボスでの「枠組み」要素としては、次のような内容が挙げられています。
- 米国の軍事アクセス拡大
- 準・主権的とも言える基地エリア(特別な運用権限を伴う区域)の設定
- 鉱物資源に関する優先的な権利
- 米主導のミサイル防衛構想「Golden Dome」への組み込み
この見方に立てば、領土的な野心を明言しない一方で、安保と経済の影響力を通じて実利を積み上げる設計になり得ます。焦点は「何と言ったか」よりも、「何が当たり前として定着していくのか」です。
主権は“取引材料”なのか:デンマークとグリーンランド側の立場
国際法上の位置づけについて、この議論は明確だとされています。グリーンランドは広範な自治権を持つ一方で、デンマークの一部であることに変わりはありません。デンマークのメッテ・フレデリクセン首相と、グリーンランドのイェンス=フレデリク・ニールセン首相はいずれも、主権は交渉の対象ではないと強調しています。
また、1951年の「グリーンランド防衛協定」をデンマークと米国が更新する場合でも、デンマークの主権とグリーンランド側の同意という枠内で行われるべきだ、という論点が示されています。防衛協力が、排他的な軍事ゾーンや恒久的な戦略的特権へと拡張されるなら、法的・政治的に“越えてはならない線”に近づく可能性がある、というわけです。
現地の反応:「Hands Off Greenland」が映す不安
ヌーク(グリーンランドの中心都市)やコペンハーゲンでは、「Hands Off Greenland(グリーンランドに手を出すな)」を掲げた抗議も伝えられています。ここで表れているのは感情論だけではなく、小さな政治主体が国際関係の“当事者”ではなく“対象物”として扱われかねない、という警戒感だと説明されています。
いま読み解くポイント(2026年1月時点)
- 短期:武力否定と関税撤回で、急激なエスカレーションは抑えられた
- 中期:防衛協力の更新が「同意」と「権限配分」をどう具体化するかが焦点
- 長期:安保・資源・ミサイル防衛が結びつくことで、主権の“実質”がどう変化するか
言葉の緩和は起きても、仕組みの変更が静かに進むとき、国際秩序の輪郭は変わっていく——今回の論点はそこにあります。
「枠組み」が合意の入口なのか、既成事実化の装置なのか。今後の交渉で、デンマークの主権とグリーンランド側の同意がどこまで具体的に担保されるのかが、緊張緩和の“実質”を測る試金石になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








