ミュンヘン安保会議2026直前、米欧対立が焦点に──「西側の内戦」は続くのか
2026年2月13日から始まるミュンヘン安全保障会議(MSC)を前に、米国(トランプ政権)と欧州指導者層の対立が、今年も主要テーマとして浮上しています。安全保障を語る場が、価値観や経済政策をめぐる“米欧の綱引き”の舞台になりつつあるためです。
昨年のMSCで何が起きたのか:防衛負担ではない「別の火種」
昨年(2025年)のMSCでは、米国のJD・バンス副大統領が欧州側に対し、従来型の防衛負担論とは異なる角度から踏み込みました。欧州が「検閲」「異論の抑圧」「ポピュリスト的な声の排除」、さらには「選挙の中止」まで行っているとして、西側の「共有する価値」を裏切っていると主張したとされています。
この問題提起に対し、欧州側は強い不満を抱えたものの、会場では決定的な反論が難しい空気もあった、と描写されています。
その後も続いた“衝突”:ウクライナ、関税、SNS規制、そしてグリーンランド
対立はMSCの場に限らず、その後も複数の論点に広がったとされています。本文で挙げられているのは、以下のような争点です。
- ウクライナをめぐる立場の違い
- 関税
- 米国のソーシャルメディア・プラットフォーム規制
- トランプ大統領のダボスでの演説
- 直近ではグリーンランドをめぐる摩擦
安全保障・経済・情報空間(言論やプラットフォーム)といった領域が絡み合い、論点が増幅しやすい構図が見えてきます。
MSC2026(第62回)と報告書『Under Destruction』:欧州に「備え」を促す
主催者側は、2026年2月13〜15日に予定される第62回MSCに向け、欧州がより周到に臨めるよう準備を進めたとされます。ただ、本文は「今年もMSCが対立の劇場になる」と見立てています。
MSC報告書『Under Destruction』は、世界がかつてないほど多くの「根本的な問い」に同時に直面しているとしつつ、トランプ政権の「破壊球(wrecking ball)」のような政治が国際秩序を揺さぶっている、という問題意識を示したとされています。
報告書は、戦後の国際秩序が損なわれ、欧州・アジアの長年の同盟相手が見捨てられたり脅かされたりし、世界の貿易秩序が掘り崩され、米国の対外支援が打ち切られている——という見方を前提に、欧州が対抗するには「自前の力への大規模投資」と「より緊密な協力」が必要だと結論づけた、とされています。
「ミドルパワー」構想の光と影:変わらない願望、ずれる現状認識
MSCは2008年以降、欧州の枠を超えてより多くの国・地域から影響力ある人物を招いてきた一方で、本文は今年の議論が「狭く、刺激的(shrill)」になっていると批判的に描きます。
報告書が示す道筋として言及されているのが、カナダと欧州を中心とした「ミドルパワー」が、大国(big powers)に対して自立を強める、という発想です。これはカナダ首相のダボス演説とも接続しているとされますが、本文はここに二つの弱点があると指摘します。
- 「世界の現実」の診断が不正確だという点
- 一方で「望ましい世界像」は変わっていないという点
多極化をどう扱うか:秩序を守るのか、折り合いを探すのか
本文は、報告書が現代の多極化を十分に認めず、「ルールに基づく国際秩序」を掲げ続けていると述べます。そして、多極化の含意として「ロシアとの和平」や「中国本土の台頭との折り合い」を模索する方向性があり得るにもかかわらず、報告書は両者を脅威として描く傾向がある——というのが本文の見立てです。
ウクライナをめぐる言葉の強さ
本文によれば、報告書は「ロシアの継続する攻勢」がNATOメンバーと欧州の安全保障にとって「最も重要で直接的な脅威」だと位置づけ、停戦の可能性がある場合でも、短期間で戦力を再構成しうるといった見通しに踏み込んだとされます。こうした言い回しは、紛争終結に向けた政治的な余地を狭め得る——という問題提起が本文にはあります。
中国本土と台湾をめぐる記述:当事者認識の差が前面に
報告書は、中国本土の動きが地域の安定を脅かすといった趣旨の厳しい表現を用い、台湾をめぐっても踏み込んだ見方を示したとされています。一方で本文は、台湾は中国の領土の不可分の一部であり、中国本土が国家主権と領土一体性を守ろうとする立場は正当かつ合理的だ、という見解を明確に述べています。
また、報告書は経済面でも中国本土に関する強い問題意識を示し、米国が関税で後退したり、他の経済論点で比較的融和的な対応を選んだりしていることへの不満に触れた、とされています。
2月13日開幕のMSC2026、何が注目点になるか
2026年2月12日現在、MSC開幕は目前です。本文の見立てに沿えば、会議の見どころは「安全保障」そのものだけでなく、同盟内部の言葉と優先順位がどう噛み合うかにあります。
- 「価値」をめぐる応酬が、言論・選挙・規制の論点にどう波及するか
- 欧州が「自前の力」への投資と協力を、どこまで具体化するか
- ウクライナをめぐる見通しを、抑止と外交の間でどう言語化するか
- 関税やプラットフォーム規制など、経済と安全保障の境界がどう語られるか
- グリーンランドをめぐる摩擦が、同盟関係の温度差として表面化するか
- 中国本土・台湾海峡をめぐる表現が、対話と競争のどちらに重心を置くか
会議の議論は、敵と味方を固定して整理するというより、同盟の内側で「何を守り、何を変えるのか」をめぐる再調整として立ち上がってきそうです。MSCが、国際秩序の話し合いの場であると同時に、“西側内部の亀裂”を映す鏡にもなっている——その二重性が、今年いっそう鮮明になるのかもしれません。
Reference(s):
'Munich Insecurity Conference' and the West's international civil war
cgtn.com








