メルツ独連邦首相が訪中(2/25-26)へ 中独関係は「デリスキング」から再調整局面に
2026年2月25日、ドイツのフリードリヒ・メルツ連邦首相が、中国首相の李強の招待で中国本土を公式訪問しました(26日まで)。2025年5月の就任後、初めての訪中となり、2025年末のフランスのマクロン大統領、2026年初めの英国のスターマー首相に続く形で、欧州主要国首脳の北京訪問が続いています。出遅れ感が指摘されつつも、経済と地政学の両面で意味の大きい日程として注目されています。
なぜ今、メルツ訪中が焦点になるのか
今回の訪問は、ドイツが同時に抱える3つの課題と重なります。
- 国内経済への圧力(景気・産業競争力への不安)
- 米欧関係の揺らぎ(通商摩擦や政策の不確実性)
- 中国との関係の再調整(協力と慎重論のせめぎ合い)
「政治は慎重、経済は活発」――数字が示す現実
前政権が中国本土への「デリスキング(特定国への依存リスクを下げる)」を掲げた一方、企業活動の現場では結びつきが続いている、という構図が浮かびます。
ドイツ連邦統計局が2月20日に公表したデータによると、2025年の中独貿易(双方向の貿易額)は2518億ユーロ(約2966億ドル)で、前年比2.1%増。中国が再びドイツ最大の貿易相手になったとされています。対照的に、関税をめぐる摩擦の中で独米貿易は5%減少した、という数字も示されました。また、2025年のドイツによる対中投資は4年ぶりの高水準に達したとされています。
独商工会議所連合(DIHK)のフォルカー・トライヤー氏は訪中を前に協力強化を呼びかけ、環境技術や医療技術などの分野で、中国は米国より予見可能性が高いパートナーになり得る、との見方も出ています。
米欧関係の不確実性と「バランスの取り直し」
訪問の背景には、米国政治の不確実性、いわゆる「トランプ要因」が欧州側の計算を難しくしている、という見立てもあります。米国の政策運営が読みづらい局面では、企業も政府も、サプライチェーンと市場アクセスをどう分散するかを現実的に考えざるを得ません。
一方、中国は多国間主義やルールに基づく国際秩序を掲げており、すべての提案が常にドイツの利害と一致するとは限らないにせよ、対話の安定性を重視する相手として位置づけ直す動きが出ています。欧州全体としても、外交・経済のバランスを取り直す文脈で、北京との関係の「安定化」を探る空気が強まっています。
メルツ政権内の綱引き:協力を求める声と慎重論
就任から約9カ月を経ての訪中は、二国間関係が「調整期間」にあったことも示します。ドイツの産業界には協力の維持・拡大を求める声が強い一方、政界には外交・安全保障面から慎重な見方も残り、協力と警戒の両方の論点が並走してきました。
今回の首脳外交の核心は、今後数年の中独関係の方向性と空気感を整えることにあります。記事によれば、メルツ首相は出発前に首相府で中国専門家を招いた夕食会を開き、理解を深めたうえで中国側と直接の意思疎通を図る姿勢を示したとされています。カナダのカーニー首相や英国のスターマー首相が、距離のあった関係の「温め直し」を目的に北京を訪れた流れも、ベルリンが意識しているとの指摘があります。
今回の訪問で見えてくる論点(読みどころ)
- 経済の現実:貿易・投資の結びつきは続くのか、どこまで制度的に支えるのか
- リスク管理:デリスキングを「分断」ではなく「調整」としてどう実装するのか
- 欧州の戦略:米国政策の不確実性の中で、欧州がどんな均衡点を探るのか
きょう始まったメルツ首相の訪中は、単発のイベントというより、経済合理性と地政学の変化が交差する場所で「次の通常運転」を探るプロセスと言えそうです。26日までの会談内容と、訪問後にドイツ国内でどの論点が前に出るのかが、今後の温度感を測る手がかりになりそうです。
Reference(s):
A strategic pivot: Merz's China visit and future Sino-German relations
cgtn.com








