TikTok停止の米国でココ・ガウフが語った「なくなってほしくない」理由 video poster
2025年1月に米国でTikTokのサービス停止と法的なシャットダウンが始まる中、女子テニス世界3位でグランドスラム優勝者のココ・ガウフ選手が「TikTokには続いてほしい」と語りました。スポーツ界の若きスターが米国のSNS規制に言及したことで、国際ニュースとしても注目を集めています。
ココ・ガウフが見ている「TikTokの価値」
ガウフ選手は、2023年全米オープン優勝者で、現在は女子テニス世界ランキング3位のトップ選手です。今年1月の全豪オープンでジョディ・バラージ選手(英国)に6−3、7−5で勝利した後の記者会見で、TikTokへの思いを語りました。
米国でTikTokが全面的な禁止の可能性に直面していることについて、ガウフ選手は次のように話しました。
「TikTokが続いてくれたらいいなと思います。私の国のたくさんの小規模ビジネスやクリエイターが、ストーリーを広めるために使っている素晴らしい場だからです。」
彼女自身もTikTokで75万5,000人以上のフォロワーを持つ人気アカウントの一人です。もしTikTokがなくなったら何が一番寂しいかと聞かれると、意外な存在の名前を挙げました。
「すごくたくさんのトレンドがあります。でも一番恋しくなるのは『マーリン』という名前のブタです。ボタンを押して“会話”ができるオンラインのブタで、とても辛口なんです。」
巨大プラットフォームの是非をめぐる議論が続く一方で、ガウフ選手の言葉からは、TikTokが小さなビジネスや個人の発信、そして日常のささやかな楽しみの場として機能してきた現実が見えてきます。
米国で高まったTikTokへの警戒と規制
急成長するアプリへの早期からの懸念
TikTokは、中国発のショート動画アプリ「抖音(Douyin)」の国際版として2017年に登場し、運営企業はByteDanceです。サービス開始から急速に普及し、2019年にはデータ分析会社SensorTowerの集計で、世界で2番目に多くダウンロードされたアプリとなりました。
しかし同じ2019年、米国国防総省は軍関係者に対し、TikTokを端末から削除するよう勧告しています。この頃から、米国内で安全保障やデータ保護の観点からの懸念が本格化していきました。
トランプ政権期の規制と法廷闘争
2020年、ドナルド・トランプ前政権は、TikTokのデータ収集や中国政府との関係を懸念する声を理由に、本格的な規制に動きました。大統領令を出してアプリの利用制限を試みましたが、これらの措置には相次いで訴訟が起こされ、実施は大きく足踏みすることになりました。
バイデン政権と新法「外国勢力管理アプリ」規制
ジョー・バイデン現政権は発足当初、トランプ政権期のTikTok禁止をめぐる裁判手続きをいったん停止し、事実上棚上げしました。その一方で、競合する米IT企業などからは、TikTokが子どもや若者に悪影響を与えているとする主張が継続していました。
2024年春、米議会は「外国の敵対勢力に管理されたアプリケーションから米国人を保護する法案」といった趣旨の法律を可決し、バイデン大統領が署名しました。この法律により、大統領は国家安全保障上の脅威と認定したアプリを禁止できる権限を得て、TikTokを運営するByteDanceに対し、米国事業の売却期限が設定されることになりました。
2025年1月:最高裁の審理とサービス停止
こうした動きに対し、TikTokは米政府を提訴し、この法律は憲法に違反し、企業と利用者の表現の自由を保障する米国憲法修正第1条(ファースト・アメンドメント)に反すると主張しました。
2025年1月10日、米連邦最高裁判所はTikTok側と政府側の主張を聞く審理を行いましたが、その場では結論は示されませんでした。
そして、TikTokの停止を義務付ける法律が2025年1月19日(日)に発効するのを前に、その直前の土曜日の深夜、米国内でTikTokは利用できなくなり、AppleとGoogleのアプリストアからも姿を消しました。法律の発効前には、約1億7,000万人の米国民がTikTokを利用していたとされています。
スポーツスターの一言が映す「プラットフォーム依存」
今回のココ・ガウフ選手の発言は、単なる「お気に入りアプリがなくなるのは嫌だ」という話にとどまらず、いくつかの問いを投げかけています。
- 小規模ビジネスや個人クリエイターにとって、TikTokのような巨大プラットフォームはどれほど重要な販路・発信の場になっていたのか。
- 国家安全保障やデータ保護の名の下に、どこまで表現の場を制限してよいのか。
- トップアスリートや文化的なインフルエンサーの声は、こうした政策議論にどのような影響を与えうるのか。
ガウフ選手が口にした「小さなビジネスやクリエイター」「一匹のブタ『マーリン』」という具体的なイメージは、TikTokが単に娯楽アプリではなく、多様な人々の日常や仕事、そしてユーモアの一部になっていたことを象徴しています。
一方で、米国ではTikTokをめぐる安全保障上の懸念や政治的議論が長年続いてきました。今回のサービス停止は、その議論が法律と司法判断のレベルまで進んだ結果でもあります。
これから何が問われるのか
2025年12月時点でも、米国のTikTok規制は、プラットフォーム企業への信頼、国家安全保障、そして表現の自由のバランスという大きなテーマを投げかけたままです。今後の司法判断や政治的な動きによって、プラットフォーム規制のあり方はさらに変化していく可能性があります。
ココ・ガウフ選手のような若い世代の声を、政策や議論の側がどのように受け止めるのか。170万人規模の利用者を抱えていたTikTokをめぐる米国の動きは、他国のデジタル政策や国際的なインターネット秩序にも少なからぬ影響を与えるとみられます。
スマートフォン一つで世界とつながる時代に、私たちはどのようなルールでプラットフォームと付き合うのか。スポーツとテクノロジー、国際ニュースが交差する今回の出来事は、その問いを改めて投げかけています。
Reference(s):
Tennis Grand Slam winner Coco Gauff hopes TikTok isn't banned in U.S.
cgtn.com








