ジョコビッチがテニスのドーピング制度を批判 不公平さとえこひいきを指摘
男子テニスのノバク・ジョコビッチ選手が、ヤニック・シナーやイガ・シフィオンテクの処分を例に、テニス界のアンチ・ドーピング制度の不公平さとえこひいきを公然と批判しました。トップ選手と下位選手で扱いが違うのではないか――テニス界全体を揺さぶる問題提起です。
ジョコビッチ「多くの選手が不満」 制度の一貫性に疑問
ジョコビッチは月曜日、テニス当局に対しアンチ・ドーピング制度の抜本的な見直しを求めました。きっかけとなったのは、男子のヤニック・シナーと女子のイガ・シフィオンテクという、いずれもテニス界を代表するトップスターのドーピング案件です。
ジョコビッチは、ロッカールームで話した選手たちの声として、次のように訴えています。
- ここ数日だけでなく、この数か月に話した選手の大半が、ドーピング案件の扱い方に満足していない
- 多くの選手は「公平ではない」と感じている
- えこひいきが起きているように見える
- トップ選手で一流の弁護士にアクセスできれば、結果を左右できてしまうように見える
ジョコビッチは、こうした不満や不信感の背景には、処分の一貫性のなさがあると指摘しています。
世界1位シナーに3か月の出場停止 2年資格停止の可能性から一転
世界ランキング1位のヤニック・シナー選手は土曜日、3か月の出場停止処分を受け入れることで合意しました。シナーは、自身のチームによるミスに対して「部分的な責任」を認めており、3月に行われた検査で禁止薬物クロステボルの痕跡が2度検出されていました。
当初、国際テニスインテグリティ機関(ITIA)は8月にシナーを違反なしと判断しましたが、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)はこの判断を不服として、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴しました。シナーは最長2年の資格停止処分を科される可能性もあったとされています。
しかし、WADAは最終的にこの控訴を取り下げ、シナーが3か月の出場停止を受け入れる形で合意に達しました。この一連の経緯は「異例」とも受け止められており、ジョコビッチが指摘する制度の一貫性や透明性への疑問を強める結果となりました。
昨年のシフィオンテク案件 1か月の出場停止
昨年には、ポーランド出身でグランドスラム優勝5回を誇るイガ・シフィオンテク選手が、禁止薬物とされる心臓治療薬トリメタジジンの陽性反応により、1か月の出場停止処分を受け入れています。
シナーが3か月、シフィオンテクが1か月という処分にとどまった一方で、ジョコビッチは、ランキングの低い選手たちの案件では、より重い処分が科されるケースもあると感じる選手が多いとしています。こうした事例の違いが「なぜこの選手は軽く、別の選手は重いのか」という疑問を生み、「一貫性がない」という印象につながっているという見方です。
どこが「不公平」に見えるのか
アンチ・ドーピング制度の目的は、本来すべての選手に対して同じルールを適用し、公平な競技環境を守ることです。しかし、今回ジョコビッチが指摘しているのは、制度の運用が選手たちから見て納得しづらい形になっているのではないか、という点です。
選手の目線から見ると、次のような疑問が浮かび上がっています。
- 同じような違反内容でも、選手の知名度やランキングによって処分の重さが違って見える
- ITIA、WADA、CASといった組織の役割や判断基準が分かりにくく、プロセス全体が見えづらい
- 資金力のあるトップ選手ほど優秀な弁護士チームを雇えるため、最終的な判断に影響を与えられるのではないかという不信感がある
ジョコビッチは、自身の発言を通じて、こうした構造的な問題を表面化させようとしているように見えます。
テニスのドーピング制度に求められる「透明性」と「説明責任」
ジョコビッチは、個別案件の是非だけでなく、アンチ・ドーピング制度そのもののオーバーホール、つまり抜本的な見直しを呼びかけています。では、制度への信頼を取り戻すために、どのような点が課題となるのでしょうか。
一般論として、今回の議論からは次のような論点が浮かび上がります。
- 処分に至るまでのプロセスと判断基準を、選手とファンにも分かりやすい形で公開すること
- ランキングや知名度にかかわらず、同じルールを同じように適用する原則を明確にすること
- ITIAやWADAなど関係機関の役割分担を整理し、誰がどの段階で何を決めているのかを説明すること
- ロッカールームの声を拾い上げるため、選手側代表も参加する継続的な協議の場を設けること
こうした取り組みが進めば、「結果」だけでなく「どういうプロセスでその結果に至ったのか」を共有することができ、制度への不信感を和らげる一歩となるかもしれません。
ファンも問われる「公正さ」への視線
テニスは世界中で愛されるグローバルなスポーツであり、そのトップ選手が制度の不公平さを公に指摘することは、競技の信頼性に直結する重大なメッセージです。シナーとシフィオンテクというスター選手の案件、そしてジョコビッチの強い言葉は、テニス界に「本当に公正な制度とは何か」という問いを突きつけています。
2025年現在、この議論がどのような形で具体的な改革につながっていくのかはまだ見えていません。しかし、ファンやメディアもまた、勝敗やランキングだけでなく、その裏側にある制度やプロセスに目を向けることで、スポーツの公正さを支える一員になれるのではないでしょうか。
Reference(s):
Djokovic calls for overhaul of 'unfair' anti-doping system in tennis
cgtn.com








