ドーピング違反でローレウス賞候補取消 テニス世界1位シナーに何が起きたか
男子テニス世界1位のヤニック・シナーが、ドーピング違反による3か月の出場停止処分を受けた影響で、ローレウス世界スポーツ賞の年間最優秀男子選手候補から外されました。この決定は、トップアスリートとドーピング規則、そして国際的なスポーツ賞のあり方に改めて注目を集めています。
ローレウス世界スポーツ賞が下した決断
ローレウス・アカデミーは木曜日、シナーの年間最優秀男子選手賞へのノミネーションを取り消すと発表しました。アカデミー議長のショーン・フィッツパトリック氏は、ノミネーションパネル宛ての書簡で、次のようなポイントを示しています。
- これまでシナーの事案と、関係する国際機関の判断を注意深く追ってきたこと
- シナー側に情状酌量の余地がある事情も認識していること
- それでも、3か月の出場停止処分が科されたことで、候補としては資格を満たさないと判断したこと
フィッツパトリック氏は、シナー本人とチームにはすでに決定を伝えたとしています。
ローレウス世界スポーツ賞は2000年に創設され、世界各地のメディアが候補を選出し、個人およびチームの活躍をたたえる国際的な賞です。ことしの候補者は、スペイン・マドリードで3月3日に発表される予定だとされています。
ドーピング違反の中身:陽性物質と出場停止
シナーは、筋肉増強作用のある禁止薬物クロステボルに陽性反応を示したことで、3か月の出場停止処分を受けることになりました。23歳のシナーは、この物質はサポートチームのメンバーによるマッサージやスポーツセラピーを通じて、意図せず体内に入ったと説明しています。
シナーはローレウス賞の決定が公表される前の時点で、この3か月の出場停止処分を受け入れており、処分期間は5月4日までとされていました。
2024年3月の陽性反応と独立審理の判断
事案の発端は、2024年3月に行われた2度のドーピング検査でした。この検査でシナーはクロステボルに陽性反応を示しましたが、異議申し立て手続きが続いていたため、その後もツアーへの出場は認められました。
シナーは、その後のシーズンを戦い続け、翌年1月には全豪オープンでタイトルを防衛しています。一方で、ドーピング検査の結果は、水面下で大きな問題として残り続けることになりました。
陽性反応が公になったのは、シーズン最後の四大大会である全米オープンの開幕直前でした。独立した審理機関はこの段階で、シナーには過失や責任はないと結論づけ、違反はあったものの処分は科さないと判断しました。その結果、シナーは全米オープンにも出場しましたが、シーズン最後の大舞台が大きな論争に包まれることになりました。
WADAの上訴と3か月処分への和解
しかし、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)は、この独立審理機関の判断に異議を唱えました。9月、WADAはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴し、シナーに過失も責任もないとした結論は、適用される規則の下では誤りだと主張しました。WADAは、本来であれば1年から2年の出場停止処分が妥当だとする立場でした。
その後、WADAはシナー側と協議を重ね、出場停止期間を3か月とすることで和解に達します。シナーは即時適用の3か月の処分を受け入れ、WADAはCASへの上訴を取り下げました。
この合意により、シナーは3か月の出場停止を経て、次の四大大会となる全仏オープンが始まる前にツアーへ復帰できるスケジュールとなりました。
なぜローレウス賞の候補資格を失ったのか
ローレウス世界スポーツ賞の年間最優秀男子選手は、その年を代表するアスリートとして、実績だけでなくフェアプレーの象徴とみなされることが多い賞です。今回、アカデミーが情状酌量の余地を認めながらもノミネーションを取り消した背景には、次のような事情があると考えられます。
- 意図的かどうかにかかわらず、ドーピング違反により公式な出場停止処分を受けた選手を表彰することへの違和感
- WADAとの和解によって処分は3か月にとどまった一方で、違反事実自体は残ること
- 国際的な賞として、公平性やクリーンなイメージを維持しなければならないというプレッシャー
一方で、サポートスタッフの過失が原因だとするシナー側の説明や、独立審理機関が一度は責任なしと判断した経緯を踏まえると、ローレウス・アカデミーにとっても簡単な決断ではなかったことがうかがえます。
特別扱いだったのか:選手とファンのまなざし
シナーのケースでは、陽性反応が出たあともツアーへの出場が認められていたことに対し、一部の選手やファンから批判が噴出しました。
- 陽性反応が出た選手をプレーさせ続けるのは公平なのか
- 男子テニス世界1位という立場が、特別扱いにつながったのではないか
- 独立審理機関とWADAで判断が分かれ、制度の分かりにくさが露呈したのではないか
こうした疑問は、ドーピング規則の運用が選手の知名度やランキングによって左右されていないか、というより根本的な問いにもつながっています。
相次ぐトップ選手の処分とスポーツ界へのメッセージ
シナーは、ここ数か月でドーピング違反による出場停止処分を受け入れた2人目のトップ選手でもあります。女子テニス世界2位のイガ・シフィオンテクも、11月に1か月の出場停止処分を受け入れています。
男女の世界トップクラスの選手が相次いで処分を受けたことは、ドーピング問題が依然としてスポーツ界にとって大きな課題であることを改めて浮き彫りにしました。検査体制やルールの厳格さだけでなく、その運用の一貫性や透明性も問われています。
このニュースから私たちが考えたいこと
2025年も終わりに近づいた今、シナーのドーピング問題とローレウス賞ノミネーション取り消しの一連の流れは、いくつかの重要な問いを投げかけています。
- ドーピング規則は、選手本人の意図やサポートスタッフの過失をどこまで考慮すべきか
- 独立審理機関とWADAなど複数の機関の判断が食い違ったとき、誰が最終的な基準を示すのか
- 国際的なスポーツ賞やメディアは、どのような価値観に基づいて選手を評価すべきなのか
3か月の出場停止処分を受け入れたシナーが、今後どのように信頼を回復し、キャリアを築いていくのかは、テニス界だけでなくスポーツ界全体が注視するテーマになりそうです。
ファンとしては、スター選手のプレーを楽しむと同時に、競技の現場が公平でクリーンに保たれているのかにも、これまで以上に目を向けていくことが求められています。
Reference(s):
Sinner's Laureus Sportsman of Year nomination revoked after doping ban
cgtn.com








