IOC会長選、今週ギリシャで決戦 世界スポーツの舵取り役は誰に
国際オリンピック委員会(IOC)の次期会長を選ぶ選挙が、今週ギリシャで行われます。12年間トップに立ってきたトーマス・バッハ会長の後任を巡り、7人の候補者が世界スポーツの「最も影響力のあるポスト」を争います。
今週ギリシャでIOC会長選 約100人の委員が投票
IOC会長選挙は、今週木曜日(現地時間)、ギリシャ南部ピュロス近郊の海沿いのリゾート地で実施される予定です。任期12年を務めたトーマス・バッハ会長が退任し、その後任を選ぶ重要な会合となります。
投票権を持つのはおよそ100人のIOC委員で、新会長に選ばれるには過半数の支持が必要です。複数ラウンド制で行われ、各ラウンドごとに最少得票の候補が脱落していき、最終的に過半数を獲得した候補が次期会長となります。
新会長は、各国オリンピック委員会や国際競技連盟、そしてIOCの主要スポンサーとともに、世界スポーツの全体像を形づくる役割を担うことになります。
7人が名乗り 多様なバックグラウンドの候補者たち
今回のIOC会長選には、以下の7人が立候補しています。いずれも国際スポーツ界で重要な役職を務めてきた顔ぶれです。
- デビッド・ラパルティアン氏:国際自転車競技連合(UCI)会長
- フアン・アントニオ・サマランチ・ジュニア氏:IOC副会長
- セバスチャン・コー氏:世界陸上競技連盟(World Athletics)会長
- カースティ・カヴァナフ氏:元オリンピック競泳金メダリストで、現在はジンバブエのスポーツ相
- フェイサル・ビン・アル・フセイン王子:ヨルダン王子
- 渡辺守成氏:国際体操連盟(FIG)会長
- ヨハン・エリアシュ氏:国際スキー・スノーボード連盟会長
競技団体トップ、IOC幹部、政治家、王族と、バックグラウンドはさまざまです。誰が新会長に選ばれるかで、IOCの意思決定スタイルや優先順位にも違いが出る可能性があります。
新会長が直面する三つの大きなテーマ
今回のIOC会長選は、単なるポストの交代にとどまりません。新会長は就任直後から、オリンピックの今後を左右する複数の難題に向き合うことになります。
1. トランスジェンダー選手の参加ルール
まず大きな論点となっているのが、トランスジェンダー選手の競技参加ルールです。現在、IOCはトランスジェンダー選手のオリンピック参加を認めていますが、具体的な条件は各競技団体の判断に委ねられています。
こうした状況に対し、「競技ごとにルールが違うのは不公平だ」「より分かりやすい統一基準が必要だ」といった声が高まっています。新会長の下で、IOCとしてどこまで共通ルールを示すのかが問われます。
このテーマは政治とも結びついています。ドナルド・トランプ米大統領は先月、国内競技会やナショナルチームからトランスジェンダー選手を除外する措置を打ち出しました。IOCが包摂と公平性のバランスをどう取るのかによっては、米国政府との摩擦が生じる可能性も指摘されています。
2. 米国との関係とロサンゼルス2028大会
IOC会長にとって、米国との関係は常に重要なテーマですが、2028年夏季オリンピック・ロサンゼルス大会を控える今、その重みはいっそう増しています。
各候補者は、トランプ大統領がこれまで示してきたオリンピックへの支持に言及しており、米国との建設的な関係を維持する重要性を強調しています。その一方で、ラパルティアン氏は「IOCとしての自律性(オートノミー)も維持しなければならない」として、政治的圧力とは一定の距離を保つ必要性も示唆しました。
ロサンゼルス大会は、放映権やスポンサー収入の面でも極めて重要な大会となる見通しです。新会長が米国とどのような距離感を選ぶのかは、IOCの経営やガバナンスに直結するテーマです。
3. ロシアをめぐる扱いとオリンピック憲章
ロシアの扱いも、新会長が避けて通れない課題です。ロシア・オリンピック委員会は、同国による2022年のウクライナ侵攻に関連してオリンピック憲章に違反したとして、IOCから資格停止処分を受けています。
一方で、昨年のパリ夏季大会では、一部のロシア出身選手が中立の立場で出場しました。今後も同様の枠組みを続けるのか、それとも方針を見直すのか。スポーツの場をどこまで政治から切り離せるのかという、難しい判断が迫られます。
潤沢な財政と揺らぐスポンサーシップ
バッハ会長の退任は、IOCの財政基盤が比較的堅調なタイミングで行われます。IOCはすでに、
- 2025~2028年向けに73億ドル
- 2029~2032年向けに62億ドル
とされるメディア権やスポンサー料などの収入を確保しています。さらに先週、IOCは米NBCユニバーサルとの米国向けオリンピック放映権契約を2036年まで延長し、その額は30億ドルに上ると発表しました。
一方で、この1年の間に複数のスポンサーがIOCから離れており、マーケティング戦略を見直すべきだとの声も出ています。デジタル配信の拡大や若い視聴者の離れなど、スポーツビジネスを取り巻く環境が変化する中、どのようなスポンサーシップの形を描くのかは、新会長にとって重要な経営課題となります。
IOC会長選が私たちに関係ある理由
IOC会長選は、一見すると国際スポーツ界の内部事情のようにも見えます。しかし、その影響は私たちの日常にも間接的に及びます。
- オリンピック開催地の選び方
- アスリートの権利やジェンダーに関するルール
- 戦争や政治的対立がスポーツにどう反映されるか
- 放映権や配信方法の変化による視聴体験
こうしたテーマは、単なるスポーツの話題を超え、社会の価値観や国際関係とも結びついています。次のIOC会長が誰になるのかは、「オリンピックをどんな場にしていくのか」という問いへの答え方に直結しているといえるでしょう。
今週の投票の行方に注目
今週木曜日の投票は、複数ラウンドにわたって行われる見通しで、序盤でいきなり過半数を得る候補が出る可能性は高くないとみられています。ラウンドを重ねるごとに支持の流れが変わり、最終的に誰が勝利するのかは、当日まで見通しにくい構図です。
オリンピックの在り方、トランスジェンダーやロシア問題への向き合い方、そして巨大なスポーツビジネスの舵取り。新会長に求められる役割は重く、多岐にわたります。ギリシャでの一票一票が、これからのオリンピックと世界スポーツの「次の12年」を形づくることになりそうです。
Reference(s):
Race for IOC Presidency enters home stretch with election this week
cgtn.com








