IOC会長選目前:バッハ会長が語る「結束」と「政治的中立」
退任控えるバッハ会長、「結束」と「政治的中立」を強調
国際オリンピック委員会(IOC)はギリシャの古代遺跡オリンピアで第144回総会を開き、その後の投票で新たなIOC会長を選出する予定です。その直前となる月曜日、退任を控えるトーマス・バッハ会長がスピーチを行い、オリンピック・ムーブメントの未来を守るキーワードとして「結束」と「政治的中立」を改めて強調しました。
第144回IOC総会と会長選:歴史の舞台オリンピアで
バッハ会長が発言したのは、第144回IOC総会の開会式を翌日に控えたオリンピアでの場面でした。総会の開会後、IOC委員たちは今週木曜日に新会長を選ぶ予定です。近代オリンピックの創始者ピエール・ド・クーベルタンの言葉を引用しながら、バッハ会長はこの歴史的な集まりを「過去への巡礼であり、未来への信念の行為」と位置づけました。
会長は「明日、私たちは過去への巡礼を始める。そのうえで、オリンピック・ムーブメントの輝かしい未来を信じる行為を実行する」と述べ、オリンピックが単なるスポーツイベントではなく、時代を超えて続いてきた一つの思想であることを強調しました。
次期会長への2つの助言:アスリートと「オリンピック・ファミリー」
1. アスリートを常に中心に置く
次期IOC会長に向けたアドバイスとして、バッハ会長が最初に挙げたのは「アスリートをオリンピック・ムーブメントの中心に置き続けること」でした。競技大会の運営や商業面、国際政治の思惑など、さまざまな要素が絡み合うなかでも、原点はあくまでアスリートの経験と成長にあるべきだ、というメッセージです。
2. 「オリンピック・ファミリー」の結束を守る
もう一つの助言は、「オリンピック・ファミリーの結束を守ること」でした。ここでいうファミリーには、各国・各地域のオリンピック委員会、国際競技連盟、アスリート、関係団体などが含まれます。
バッハ会長は、結束とは「全員が同じ意見になること」ではないと説明しました。むしろ重要なのは、意見の違いがあっても、共有する価値を軸にまとまることだと指摘します。多様な立場や背景があるからこそ、価値観の共有がなければ簡単に分断が生まれてしまうためです。
結束を支える2つの原則:連帯と政治的中立
すべてのオリンピック委員会に「同じ権利と機会」を
バッハ会長は、結束を実現するための土台として「連帯」と「政治的中立」という2つの原則を挙げました。第一の原則である連帯については、特に各国・各地域のオリンピック委員会の間にある格差に言及しました。
会長は次のような趣旨を語りました。
- すべてのメンバー、とりわけすべてのオリンピック委員会は平等に扱われるべきであること
- オリンピック・ムーブメントがもたらす恩恵に、誰もがアクセスできるようにすること
- 特権的な委員会と、そうでない委員会との間のギャップを縮めること
- 「声」だけでなく、実際の「票」を持つ機会をすべての委員会に保証すること
資金や施設、選手層などの条件が大きく異なるなかで、いかに公平性を保つか。この点は、オリンピックの理想と現実の間にある課題でもあります。バッハ会長は、こうした格差を是正する努力こそが、オリンピック・ファミリーの結束を強めると強調しました。
政治的中立:地政学的な引き合いから距離を置く
第二の原則として、バッハ会長が強く警鐘を鳴らしたのが「政治的中立」です。世界が多極化し、新たな地政学的なブロックが形成されるなかで、スポーツやオリンピックを自らの側に引き寄せようとする動きがあると指摘しました。
もしIOCがどこか一方の立場を取ってしまえば、オリンピック・ムーブメントは引き裂かれ、もはや「地球規模の運動」ではなくなってしまう——バッハ会長はそのような危機感を示しました。その場合、オリンピックは世界を分断する「政治の道具」の一つになってしまう、と警告しています。
政治や外交の緊張が高まるほど、「どちらの陣営に立つのか」という問いが強く突きつけられます。その圧力に耐えながら、あくまで中立を貫くことができるのか。IOCにとっても、次期会長にとっても、避けて通れないテーマになりつつあります。
なぜ今、「オリンピックの中立性」が問われるのか
国際スポーツと政治の関係は、もはや切り離せないテーマになっています。開催地の選定、外交的ボイコットの是非、選手の表現行為、スポンサーの動きなど、競技の周辺には常に政治的な文脈が存在します。
そのなかでIOCが掲げる「政治的中立」は、単なるスローガンではなく、組織の存在意義そのものに関わる原則です。特定の勢力と距離を置くことで、異なる立場の国や地域が同じ大会に参加し、同じルールのもとで競い合える場を維持する——バッハ会長の発言は、その役割を改めて確認するものと言えます。
読者が押さえておきたい視点
今回の発言は、一見するとIOC内部の話に聞こえるかもしれませんが、国際ニュース全体を読み解くうえでも示唆に富んでいます。ポイントを整理すると、次のようになります。
- IOC会長選は、単なるポスト争いではなく、オリンピック・ムーブメントの「中立性」と「公平性」をどう守るかをめぐる選択でもあること
- 連帯の強化や格差是正への取り組みは、小さなオリンピック委員会やアスリートにとって、出場機会やサポート体制に直結するテーマであること
- 地政学的な対立が強まるなかで、スポーツ組織が「誰の側にもつかない」という姿勢を維持できるかどうかは、今後の国際スポーツ全体の信頼性にも影響すること
オリンピックにまつわるニュースを追うとき、「誰が勝ったか」「どの競技が盛り上がったか」だけでなく、今回バッハ会長が示したような原則や価値観に目を向けることで、見えてくる景色は大きく変わります。
スポーツが分断ではなく対話のきっかけになるのか。それとも、政治的な対立をさらに深める道具になってしまうのか。次期IOC会長を選ぶ投票は、その分かれ目を占う一つの重要な場面になりそうです。
Reference(s):
Bach stresses unity, political neutrality before IOC Presidential race
cgtn.com








