IOCバッハ会長が終身名誉会長に 12年の任期に区切り
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が、第144回IOC総会で終身名誉会長(Honorary Life President)に選ばれました。12年にわたってオリンピック・ムーブメントを率いてきたトップが、任期の締めくくりにどんなメッセージを残したのかが注目されています。
終身名誉会長に指名 ギリシャで総立ちの拍手
終身名誉会長への指名が決まったのは、ギリシャ南西部の海沿いのリゾート地コスタ・ナバリノで開かれた第144回IOC総会の初日、水曜日でした。総会の終盤、提案が承認されると、その場にいたIOC委員たちは一斉に立ち上がって拍手を送りました。
71歳のバッハ氏は、しばらく席に座ったまま静かに会場の様子を見つめ、これまでの歩みをかみしめるような表情を見せたとされています。その後、スタンディングオベーションの中で演壇に向かい、感情をにじませながらスピーチを行いました。
「これは私一人の栄誉ではない」 強調された団結
バッハ氏はスピーチの冒頭、この栄誉を謙虚に受け止めるとしたうえで、その理由を二つ挙げました。一つ目は、これまでの成果は自分一人のものではないという点です。
氏は、日々の取り組みはIOC委員一人ひとりの貢献の積み重ねであり、最終的に到達した団結なくして、ここまで来ることはできなかったと強調しました。もしオリンピックの価値に対するコミットメントで一致していなかったら、今日の姿はなかったかもしれない、とも述べています。
だからこそ、自分に与えられた栄誉はすべてのメンバーに返したい──というメッセージは、バッハ氏が12年間の任期を通じて掲げてきた「団結」と「共有の責任」の考え方を象徴するものと言えます。
アスリートから会長へ スポーツが変えた人生
バッハ氏は元オリンピックのフェンシング金メダリストでもあります。スピーチでは、スポーツが自らの人生にもたらした影響について、あらためて感謝の思いを語りました。
この12年間について、外からは困難や犠牲が多かったと見る向きがあるかもしれないとしつつも、本人は「自分が犠牲を払ったと感じたことはない」と言います。競技者としてのキャリアを終えたあとも、スポーツへの情熱を生き続けることができたからだと説明しました。
バッハ氏は、自身のオリンピック金メダルが人生を大きく変えたと振り返り、その後はIOC会長として、今度は他の人々の人生を変える手助けをする機会を得た、と語りました。スポーツが個人にもたらす変化と、その力を次の世代にどうつなぐかという視点がにじみます。
12年の任期の先に IOC第10代会長へバトン
バッハ氏の12年間におよぶIOC会長としての任期は、オリンピックデーにあたる6月23日に公式に終了することになっています。その節目の日に、IOCは新たな第10代会長を迎える見通しです。
新会長は、今回の総会2日目となる木曜日に行われる選挙で選出されることになっており、その人物が今後のオリンピック・ムーブメントを率いていきます。
バッハ氏は、自身の任期について「オリンピック・ムーブメントのために自分のすべてを捧げてきたと言い切れる」と述べたうえで、「今こそ新しいリーダーの時代だ」と語りました。
そして、スポーツの世界では「昨日の成果は、明日の成功の土台にすぎない」として、自らの時代の実績は次の世代の出発点に過ぎないことを強調しました。過去にとどまらず、常に次の一歩を求める姿勢がうかがえます。
読み手に突きつけられる問い オリンピックの価値とは
今回のニュースは、一人のスポーツリーダーの人事にとどまらず、オリンピックが掲げる価値と、IOCという組織のあり方を考えるきっかけにもなります。
- 成果は個人ではなく「みんなのもの」と語るリーダーシップ
- アスリートとしての経験を、組織運営や価値づくりにどう生かすか
- 新しい会長の下で、オリンピック・ムーブメントはどこへ向かうのか
分断や対立がニュースになることの多い世界で、バッハ氏が繰り返し口にした「団結」や「オリンピックの価値」という言葉は、単なる美辞麗句ではなく、試され続ける理念でもあります。
IOCのトップが交代し、バッハ氏が終身名誉会長として新体制を見守るこれからの時期、私たち一人ひとりがスポーツに何を期待し、オリンピックにどんな意味を見出すのか。ニュースを追うだけでなく、自分の視点を更新するタイミングにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








