IOC新会長にコヴェントリー氏 女性・アフリカ出身で初のトップ
国際オリンピック委員会(IOC)の新会長に、ジンバブエ出身の元競泳選手キルスティ・コヴェントリー氏が選出されました。女性としてもアフリカ出身者としても初のIOC会長となる歴史的な人事で、来年6月から8年間の任期でIOCを率いる予定です。
IOCに初の女性・アフリカ出身会長が誕生
コヴェントリー氏は、木曜日に行われた選挙でIOC会長に選出されました。これまでIOCは、欧州出身の男性が長くトップを務めてきましたが、今回の選出は、ジェンダーや地域の多様性という点で大きな転換点といえます。
任期は8年で、来年6月に正式に会長職に就任する予定です。IOCのトップとして、オリンピック・ムーブメント全体の方向性や、競技大会の運営方針、アスリート支援など幅広い分野で舵取り役を担うことになります。
高校生で五輪デビュー ジンバブエ初の準決勝進出
1983年にジンバブエの首都ハラレで生まれたコヴェントリー氏は、2000年シドニー大会でオリンピックに初出場しました。当時はまだ高校生で、アメリカ・オーバーン大学に進学する前の時期でした。
シドニー大会では、
- 女子50メートル自由形
- 女子100メートル自由形
- 女子100メートル背泳ぎ
- 女子200メートル個人メドレー
の4種目に出場し、ジンバブエの競泳選手として初めて、オリンピックの水泳種目で準決勝に進出しました。アフリカの中でも競泳の強豪国とは言えないジンバブエから、世界の舞台へと飛び出したその姿は、多くの若いアスリートにとって象徴的な存在となりました。
5大会で7個のメダル アフリカ最多の五輪メダリスト
コヴェントリー氏は、その後も4大会のオリンピックに連続出場し、合計5大会で7個のメダルを獲得しました。アフリカで最も多くのオリンピックメダルを持つ選手とされており、その内訳は次のとおりです。
- 金メダル2個:女子200メートル背泳ぎ(2大会で制覇)
- 銀メダル4個:女子100メートル背泳ぎ、200メートル個人メドレー、400メートル個人メドレーなど
- 銅メダル1個:女子200メートル個人メドレー
背泳ぎと個人メドレーを中心に、長年にわたって世界のトップレベルで戦い続けた結果が、この7個のメダルにつながりました。小国ジンバブエから世界の頂点に立ったストーリーは、アフリカのスポーツ界全体にも大きなインパクトを与えました。
競技生活を終えたのは2016年。引退までの長い期間、オリンピックの舞台で結果を出し続けたことが、今回のIOC会長就任にもつながる「信頼の土台」となったと見ることができます。
引退後はIOCと政府で要職に
引退後、コヴェントリー氏はすぐにスポーツ界のガバナンス(運営)に関わる道を歩み始めました。2012年にはIOCアスリート委員会の委員に選出され、8年間にわたって現役選手の声をIOC内に届ける役割を担いました。
また、母国ジンバブエでは2019年にスポーツ相に任命され、国家レベルでスポーツ政策を担当する立場も経験しました。アスリートとしての視点と、行政・政策の現場を知る経験を両方持つことは、IOC会長としても大きな強みになりそうです。
2023年にはIOC理事会メンバー(IOC Executive Committee の一員)に選出され、その後、トーマス・バッハ会長の後任を目指す7人の候補の一人として名前が挙がりました。そして今回、その中から最終的に会長に選ばれた形です。
なぜこの人事が注目されるのか
今回のコヴェントリー氏の選出が注目される理由は、大きく3つに整理できます。
- 女性リーダーとしての象徴性
長らく男性中心だった国際スポーツ組織のトップに、初の女性会長が誕生したことで、スポーツ界におけるジェンダーバランスの改善を後押しする象徴的な一歩となります。 - アフリカ出身者として初のIOC会長
オリンピックには世界各地からアスリートが参加する一方で、意思決定の中心は欧州や北米に偏りがちだと指摘されてきました。アフリカ出身の会長誕生は、地域的なバランスの面でも重要な意味を持ちます。 - 元トップアスリートの視点
自らが五輪で7個のメダルを獲得したアスリートであることから、選手の目線に立った大会運営やルール作りが期待されます。アスリートファースト(選手本位)の姿勢をどう具体化していくかが注目されます。
今後8年のIOCに求められるもの
コヴェントリー新会長のもとで、IOCには今後8年間でさまざまな課題への対応が求められます。具体的な論点としては、次のようなものが挙げられます。
- オリンピック大会の持続可能性
開催都市への負担をどう軽減し、環境面や経済面で持続可能な大会モデルを作るかが問われています。 - アスリートの権利保護
ドーピング問題だけでなく、セーフスポーツ(暴力やハラスメントの防止)や、セカンドキャリア支援など、選手の人生全体を見据えた取り組みが重要になっています。 - デジタル時代の観戦体験
若い世代はテレビよりスマートフォンや配信サービスでスポーツを見る傾向が強くなっています。デジタルでの発信や、新しいファンとのつながり方も課題です。 - グローバルな対話のハブとしての役割
地政学的な緊張が高まる中で、スポーツを通じて対話の場を提供するというオリンピックの原点をどう守り、発展させるかも大きなテーマです。
アフリカで最も多くの五輪メダルを獲得した元スイマーが、今度はオリンピックそのものの行方を左右する立場に立つことになります。コヴェントリー新会長が、アスリートとしての経験と政策の現場で得た知見をどう生かし、IOCをどのような組織へ導いていくのか。今後の一手一手が、世界のスポーツ界に大きな影響を与えそうです。
Reference(s):
Coventry, Africa's most decorated Olympian, set to take charge at IOC
cgtn.com








