NBAニュース:ポポビッチがスパーズ新HCジョンソンを紹介 「エル・ヘフェ」として続投
NBAサンアントニオ・スパーズの長年の指揮官グレッグ・ポポビッチ氏が、ヘッドコーチ職から退き、後継者としてミッチ・ジョンソン氏を正式に紹介しました。昨年11月2日の脳卒中からの回復途上で迎えた大きな節目は、「ポポ時代」から新体制へとバトンが渡された瞬間でもありました。
握手からハグへ――象徴的な「バトンタッチ」
記者会見の壇上で、ジョンソン氏が差し出した右手をポポビッチ氏が握り、そのまま引き寄せてハグを交わしました。言葉以上に雄弁なこのシーンが、スパーズに新しい時代が訪れたことを象徴していました。
ポポビッチ氏が公の場で話すのは、脳卒中を発症してから約半年ぶり。会見では「日ごとによくなっているが、これから我々が計画していることを考えると、まだ十分ではない。だからこそ、このタイミングで変化を起こすべきだ」と、退任の理由を静かに説明しました。
76歳となった名将は、これまでよりも柔らかく低い声ながらも、言葉の端々にスパーズへの深い思いと、後継者への強い信頼をにじませました。
役職は譲っても「エル・ヘフェ」としてチームに残る
ヘッドコーチは退くものの、ポポビッチ氏はスパーズのチームプレジデントとしてフロントに残ります。CEOのR.C.ビュフォード氏、ゼネラルマネジャーのブライアン・ライト氏ら経営陣も続投し、組織のトップ構造は変わりません。
会見でポポビッチ氏は上着を脱ぎ、自身の新たな肩書をプリントしたTシャツを披露しました。そこに書かれていたのはスペイン語で「ボス」を意味する「El Jefe(エル・ヘフェ)」。
「私はもうコーチではない。『エル・ヘフェ』なんだ」と、いつものユーモアを交えて語り、会場の笑いを誘いました。形こそ変わっても、組織全体を見渡す「ボス」としてチーム作りに関わり続ける姿勢を示したと言えます。
脳卒中からの復帰と「継続」のメッセージ
ポポビッチ氏は、昨年11月2日に脳卒中を発症しました。その日の夜、スパーズはミネソタ・ティンバーウルブズ戦を控えており、以降のレギュラーシーズン残り77試合はジョンソン氏が代行ヘッドコーチとして指揮を執りました。
会見でポポビッチ氏は、自身の体調について「回復は順調だ」としつつも、日々のハードな現場に立ち続けるには無理があるとの認識を示しました。そのうえで「大事なのは、スパーズらしさを守り続けることだ」と語り、チームの理念は変えないと強調しました。
「それを継続させることが目標だ。これからもミッチを全力で支えていきたい」と話し、後方支援に徹する覚悟をにじませました。
ミッチ・ジョンソン新ヘッドコーチの覚悟
ミッチ・ジョンソン氏は、代行としてシーズンの大半を指揮したのち、正式にヘッドコーチへと昇格しました。昇格は金曜日に正式発表され、この記者会見で改めて紹介されています。
会見では、「自分は彼(ポポビッチ)にも『エル・ヘフェ』にもなれない」と前置きしつつ、こう続けました。
「人と関係性にコミットし、投資すること。それは、ときに厳しく叱責し責任を求めることでもあり、ときに肩を抱いて愛情を示すことでもある。そして、その両方をこれまで誰よりも上手くやってきたのがポポだった。自分も自分なりのやり方で、それを受け継いでいきたい。」
「ポポのコピーにはならない」という宣言は、スタイルの違いを認めつつ、根っこにある「人を大事にする」哲学は継承するという意思表示でもあります。
レジェンドと若きスターが見守った門出
会見の場には、ティム・ダンカン氏、マヌ・ジノビリ氏といったスパーズ黄金期を支えたレジェンドたちが同席し、ポポビッチ氏の背後に並びました。現在の看板選手ビクター・ウェンバンヤマ選手をはじめ、現役の選手たちも顔をそろえ、まさに「スパーズ・ファミリー」が一堂に会した形です。
今回のポポビッチ氏の登場は、関係者にとっても少し意外なサプライズでした。会見開始の直前、同氏はスパーズのOBや現役選手たちに囲まれながら練習施設に歩いて姿を見せ、その後、マネージングパートナーのピーター・J・ホルト氏が開会のあいさつに立ちました。ホルト氏は言葉に詰まる場面もあり、この日がいかに特別な瞬間であるかが伝わってきました。
NBA最多勝利監督から学べること
NBA通算勝利数で歴代1位を誇り、1996年から長年スパーズを率いて5度の優勝に導いてきたポポビッチ氏。その「次の一手」は、多くの日本のビジネスパーソンにとっても示唆に富んでいます。
- 健康状態を直視し、タイミングを見極めて権限を委ねる決断力
- 役職を手放しても、組織への関与の形を柔軟にデザインし直す姿勢
- 後継者に「自分のコピー」ではなく「自分なりのスタイル」を求める寛容さ
スパーズのような長期的なチームづくりは、企業や組織のリーダー交代にも通じるテーマです。ポポビッチ氏が示したのは、「自ら一歩引きつつ、次の世代を支える」という新しいリーダー像かもしれません。
これからのスパーズと私たちの視点
ヘッドコーチが交代しても、ポポビッチ氏、経営陣、そしてスパーズの哲学はチームの核として残ります。一方で、新たなヘッドコーチのもと、戦い方やロッカールームの空気感には少しずつ変化が生まれていくはずです。
ジョンソン氏がどのように若い選手たちと向き合い、「人に投資する」スタイルを自分なりに体現していくのか。スパーズの今後数シーズンは、NBAファンだけでなく、組織づくりに関心のある読者にとっても注目のケーススタディになりそうです。
ポポビッチ氏の「エル・ヘフェ」としての新しい役割、そしてジョンソン氏のチャレンジを追いながら、「良いリーダーシップとは何か?」を改めて考えてみてはいかがでしょうか。
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Reference(s):
Popovich speaks at press conference to introduce new Spurs coach
cgtn.com







