ゴールだけじゃない デンベレがバロンドール最有力と言われる理由 video poster
バルセロナの「悪童」と評されたウスマン・デンベレが、いまやPSGの三冠を導いた司令塔としてバロンドール最有力候補と見られています。国際サッカーニュースの中心にいるこのウイングは、なぜここまで評価を変えたのでしょうか。
バルサの「悪童」からPSGの三冠マエストロへ
一時期、デンベレの名前は「才能」と同じくらい「問題児」「不安定」といった言葉とセットで語られてきました。バルセロナ時代には、コンディション管理やピッチ外の振る舞いが、プレー以上に注目されることも少なくありませんでした。
ところが現在は、PSGで三冠を成し遂げたチームの中心選手として扱われ、「バロンドール最有力」とまで言われています。かつては起用する側にとってリスクも抱えたタレントが、今ではタイトル獲得を「設計」できるマエストロ(司令塔)へとイメージを一変させました。
PSGで何が変わったのか:3つのキーワード
デンベレのPSGでの変貌を、サッカー解説番組「Sideline Story」でも取り上げています。同番組で議論されたポイントとも重なる、3つのキーワードで整理してみます。
1. 判断力:リスクから「選択の質」へ
かつてのデンベレは、派手で難しいプレーを狙いすぎて、ボールロストや決定機の逸失につながる場面も目立ちました。いまのPSGでは、ゴールやアシストだけでなく、「いつ仕掛け、いつシンプルに捌くか」という判断の質が格段に高まっています。
- 不用意なドリブルではなく、相手の急所を突く仕掛け
- 味方を生かすタイミングでのパス選択
- 試合の流れを読むプレーの緩急
こうした「ゲームをデザインする力」が、三冠を達成したPSGの攻撃を支える土台になっています。
2. ハードワーク:スターでも走る時代
もう一つの変化は、守備と献身性です。かつては前線に張り付き、守備での貢献が限定的と見られていたデンベレが、いまはプレスのスイッチ役となり、自陣まで戻って守る場面も当たり前になっています。
現代サッカーでは、「ボールを持っているときだけ輝くスター」は許されにくくなっています。PSGでのデンベレは、その象徴とも言える存在になりつつあります。
3. リーダーシップ:声より「姿勢」で引っ張る
デンベレは伝統的な意味でのキャプテンタイプではありませんが、そのプレーと態度がチームに与える影響は、すでにリーダーのそれです。
- 守備でも攻撃でも手を抜かない姿勢
- 厳しい時間帯でもボールを受けに行く責任感
- 自分で決めるだけでなく、仲間に得点を譲る選択
こうした振る舞いが積み重なることで、「問題児」から「模範とされるスター」へと評価が変わっていきました。
バロンドールは「ゴール数コンテスト」ではない
デンベレがバロンドール最有力候補と言われる背景には、賞そのものの捉え方の変化もあります。メッシとロナウドが現役ピークにあった時代、バロンドール議論はしばしば「ゴールとアシストの数比べ」に近いものになっていました。
しかし、ポスト・メッシ/ロナウドの時代に入った今、問われているのは次のような要素です。
- ビッグマッチでチーム全体のレベルを一段引き上げる力
- 攻守両面での影響力(前線からの守備やビルドアップへの関与)
- シーズンを通じた安定感と、チームメートを生かすプレー
- ロッカールームでの存在感やプロフェッショナリズム
デンベレは、こうした「総合力」を備えた選手として再評価されつつあります。ゴールやアシストが突出しているだけではなく、「三冠を達成したチームのフットボールそのものを体現した選手」として見られている点が、バロンドール最有力候補とされる理由の一つと言えます。
メッシとロナウドの後、「世界最高」はどう定義されるのか
「Sideline Story」でも議論されたのが、「メッシとロナウドの後、世界最高の選手は何で決まるのか」という問いです。かつては、二人の圧倒的な数字やタイトルが、議論をほぼ終わらせてしまう力を持っていました。
今はむしろ、次のような観点が重視されつつあります。
- ゲームコントロール:単に決める人ではなく、試合全体のリズムを操れるか
- 多様性:サイド、中央、トップ下など複数の役割をこなせるか
- 犠牲と献身:自分の数字よりもチームの勝利を優先できるか
- 持続性:シーズンを通じて高い基準を保ち続けられるか
ドリブル、パス、フィニッシュの三拍子に加え、ハードワークとゲームメイクを兼ね備えたデンベレは、まさにこの「新しい世界最高像」を体現している選手として語られています。
スーパースター特権の終わり?
記事冒頭の問い、「スーパースター特権は終わったのか」。デンベレのケースは、これに対する一つの答えを示しています。
かつては、守備に戻らない、練習態度にムラがある、戦術よりも個人プレーを優先する――そんな振る舞いも、「スターだから」「試合を決めてくれるから」と容認される場面がありました。
しかし、プレッシングと組織的な守備が前提となった現代サッカーでは、その「特権」は急速に狭まっています。監督も仲間も、スター選手に対してこう求めるようになりました。
- 誰よりも走るスター
- チームのためにスペースを作るスター
- 自分の役割以上の仕事をこなすスター
PSGでのデンベレは、まさにこの「特権より責任」を象徴する存在です。スターでありながら、特別扱いではなく「最も厳しい基準を課される選手」として、チームの中心に立っています。
デンベレの物語が示す、フットボールの行き先
2025年現在、デンベレがバロンドール最有力候補と語られることは、一人の選手の再生物語以上の意味を持っています。それは、フットボールというスポーツがどこへ向かっているのかを示す指標でもあります。
- 数字だけに頼らない「総合力」の評価軸
- ピッチ内外のプロ意識とリーダーシップの重要性
- スーパースターにも例外を認めない戦術・守備の要求水準
バルセロナの「悪童」と呼ばれた選手が、PSGで三冠を支えるマエストロとなり、「世界最高」の象徴として語られるようになった――この変化の裏側には、フットボールの価値観そのもののアップデートがあります。
バロンドールの結果がどう転んでも、デンベレの2025年までの歩みは、これからのサッカーにおけるスター像を語るうえで避けて通れないケーススタディになっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








