海底1500メートルの炎 広州から大湾区へ、中国全国運動会の聖火リレー
2025年11月に行われた中国第15回全国運動会と、続いて12月に開催されている第12回全国障害者運動会、第9回全国スペシャルオリンピック大会。その幕開けを告げる聖火が、この秋、広州でユニークなルートをたどって灯されました。
海底1500メートルから採られた源の炎
聖火の出発点となったのは、南シナ海の海底約1500メートルです。ここで2025年9月、可燃性氷と呼ばれる資源が採取され、その燃焼によって「源火」となる炎が生み出されました。
この炎は、単にトーチに点火された火ではなく、深海から採り出されたエネルギーそのものが可視化された存在でもあります。海の底からスポーツの祭典へ――その距離のギャップ自体が、今回の演出の一部になっているように見えます。
海上シルクロードを進んだ聖火
可燃性氷から生まれた源火は、調査船「Ocean Geology 2」に乗せられました。炎は海上シルクロードとも呼ばれるルートに沿って進み、ハイマ冷湧出域と呼ばれる海域を経由して中国本土へと向かいます。
その後、炎は陸に上げられ、広東省の中心都市・広州で行われた式典の場で、正式な聖火として再び灯されました。海底から海上、そして陸上へとステージを移しながら、聖火はゆっくりと「大会の炎」へと姿を変えていきます。
広州から粤港澳大湾区を巡るトーチリレー
広州での点火式を経て、トーチは今度は陸上の旅に出ました。ルートとなったのは、粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)と呼ばれる地域です。
聖火リレーは2025年11月にかけて、広州や深圳(Shenzhen)を走り、中国の二つの特別行政区である香港とマカオにも届けられました。比較的短い区間ながら、複数の都市と地域を結ぶこの旅は、3つの大会が大湾区全体で共有されるイベントであることを象徴するものでもあります。
全国運動会と障害者スポーツ、3大会のスケジュール
今回の聖火がともすのは、三つの全国規模のスポーツ大会です。
- 中国第15回全国運動会:2025年11月9日〜21日
- 第12回全国障害者運動会:2025年12月8日〜15日
- 第9回全国スペシャルオリンピック大会:2025年12月8日〜15日
全国運動会はすでに11月に日程を終え、現在(12月11日)は、障害のある人々による競技とスペシャルオリンピックの大会期間のまっただ中にあります。ひとつの聖火が、全国規模の競技と、より多様な人々が参加するスポーツの舞台を連続的につないでいる点が印象的です。
深海から街へ、そして人へ──静かなメッセージ
海底1500メートルの可燃性氷から生まれた炎が、海上シルクロードをたどり、粤港澳大湾区の街々を巡っていく今回のルートには、いくつかの層が重なっています。
ひとつは、海と都市、資源とスポーツという、一見離れたテーマをひとつの物語として結びつけた点です。もうひとつは、広州や深圳とともに、香港やマカオという特別行政区を含む大湾区全体を回ることで、地域をまたぐ一体感を静かに演出しているところでしょう。
そして何より、この聖火は、全国運動会だけでなく、全国障害者運動会やスペシャルオリンピック大会にも共通する象徴として位置づけられています。誰もが参加できるスポーツイベントへと炎が受け継がれていく流れには、競技の結果だけではない意味合いがにじみます。
華やかな開会式やメダルラッシュと比べると、聖火の「旅」は目立たない存在かもしれません。それでも、深海から都市、そして人々の記憶へと続いていくこのルートに、スポーツと地域のあり方について考えるための静かなヒントを見出すこともできそうです。
Reference(s):
Flame lighting ceremony for China's National Games held in Guangzhou
cgtn.com







