世界204位バシェロが上海マスターズ初優勝 いとこ対決制す
男子テニスの国際大会「上海マスターズ」(ATPマスターズ1000)で、世界ランキング204位のバランタン・バシェロ(モナコ)が、いとこである世界54位アルテュール・リンデルネック(フランス)を逆転で破り、ツアー初優勝を果たしました。4大大会に次ぐ格付けのマスターズ1000で世界200位台の選手がタイトルをつかむのは極めて異例で、国際テニス界の注目を集めています。
世界204位がATPマスターズ1000を制覇
上海で現地時間日曜日に行われた男子シングルス決勝は、いとこ同士が対戦する「オールファミリー・ファイナル」となりました。予選から勝ち上がったバシェロは、マスターズ1000で史上最も低いランキングの決勝進出者でしたが、その勢いのまま本戦優勝まで駆け上がりました。
試合はバシェロが4-6、6-3、6-3で逆転勝ち。ATPマスターズ1000の決勝で、ふたりともシードされていない選手同士の顔合わせとなるのは、ツアー史上3度目という珍しいケースです。コーチで異母兄のベンジャミン・バレレ氏は、この結果を「まるでおとぎ話のようだ」と表現しました。
家族対決の流れを振り返る
第1セット:兄分リンデルネックが主導権
立ち上がりにリズムをつかんだのは、年上のリンデルネックでした。第3ゲームでバックハンドのリターンからブレークに成功。このゲームでバシェロはアンフォーストエラー(自らのミス)を3本重ねてしまい、流れを渡します。その後は互いにサービスゲームをキープし合う展開となり、この1ブレーク差を守り切ったリンデルネックが6-4で先取しました。
第2セット:チャンスを逃さなかったバシェロ
第2セットに入っても、ゲームの多くは互角のラリーが続きました。スタンドには男子テニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーも観戦に訪れ、会場の雰囲気をさらに盛り上げます。
均衡が崩れたのは第8ゲーム。サービスゲームのリンデルネックがブレークポイントを迎え、1本目はエースでしのいだものの、その後の有利なポイントをキープしきれません。ネットへのミスショットも出て、自らを苦しい状況に追い込む形となりました。このチャンスを逃さなかったバシェロがついにブレークに成功し、6-3でセットを取り返して勝負を最終セットに持ち込みます。
第3セット:湿度とプレッシャーの中で決着
最終セットは冒頭から激しい攻防となりました。バシェロはいきなり第1ゲームでブレークポイントを握り、そのままブレークを奪取。上海特有の蒸し暑さの中で、リンデルネックは第3ゲーム、第5ゲームとたびたびブレークポイントを背負い、苦しいサービスゲームが続きます。
リンデルネックは第5ゲーム後、背中の治療を受ける場面もあり、体力面の消耗も見えました。それでも意地を見せて一時は流れを引き戻し、観客を沸かせるラリーが何度も繰り広げられます。
しかし最終的には、第9ゲームでもう一度バシェロがブレークに成功。6-3でセットを締めくくり、逆転でタイトルをつかみました。勝利の瞬間、バシェロは信じられないといった様子でコート上で体を折り曲げ、歓喜と安堵が入り混じった表情を見せました。これはバシェロ本人にとってだけでなく、モナコにとってもATPツアー初のタイトルとなる歴史的な勝利です。
歴史的「下剋上」が持つ意味
今回の上海マスターズは、ランキングやシード順では測り切れないテニスのダイナミズムを象徴する大会となりました。世界204位、予選上がりという立場のバシェロが、4大大会に次ぐ格の大会で優勝したことは、ツアーの「裾野」にいる多くの選手たちに希望を与えます。
決勝がいとこ同士の対戦となった点も含め、ストーリー性の高いトーナメントでした。近しい関係の相手だからこそ、お互いのプレーを熟知し、同時に負けたくない気持ちも強くなります。その特別なプレッシャーの中で、最後まで攻める姿勢を貫いたバシェロのメンタルの強さが際立ちました。
また、ATPマスターズ1000でシードされていない選手同士による決勝は史上3度目とされ、テニスツアー全体の実力が拮抗しつつあることを示す結果ともいえます。ランキング上位だけでなく、ツアー全体にサプライズの余地が広がっていることを改めて印象づけました。
上海マスターズから見えた3つのポイント
今回の結果から、国際テニスの潮流として次のようなポイントが見えてきます。
- ランキングだけでは測れない、その時々のコンディションと「勢い」の重要性
- 予選上がりや下位ランカーにもビッグタイトルのチャンスが広がる時代になっていること
- 家族や身近な存在との対戦が、選手に特別なプレッシャーとモチベーションをもたらすこと
こうした視点で試合を振り返ると、単なる番狂わせやサプライズにとどまらず、ツアー構造や選手のメンタル面まで含めた「競技の今」を映し出す出来事だったと見ることができます。
これからの注目ポイント
今回の優勝により、バシェロが今後どこまでランキングを押し上げ、ATPツアーで存在感を高めていくのかが大きな焦点となります。予選から本戦の深いラウンドまで勝ち抜いた経験は、グランドスラムや他の国際大会でも大きな財産となるはずです。
一方で、決勝で惜しくも敗れたリンデルネックにとっても、この大会は収穫の多い1週間となりました。家族対決という難しいシチュエーションの中で見せた高いパフォーマンスと粘り強さは、今後のツアーでの活躍につながっていきそうです。
国際ニュースとしての側面で見れば、今回の上海マスターズは、テニスが依然として世界中で注目を集めるスポーツであることを再確認させる出来事でした。ランキング表だけでは見えてこないプレーヤーの物語や背景に目を向けることで、スポーツニュースはさらに豊かに楽しめます。今後のATPツアーでも、バシェロのような「新しい顔」が次々と台頭してくるのか、引き続き注目していきたいところです。
Reference(s):
World No. 204 Vacherot tops cousin Rinderknech to win Shanghai Masters
cgtn.com








