IOCがリヤドeスポーツ五輪計画を中止 サウジとの12年契約を解消
IOC(国際オリンピック委員会)とサウジアラビア当局は、リヤドでeスポーツ版オリンピックとされるオリンピック・eスポーツ・ゲームズを12年間開催する計画を、合意のうえで打ち切ると発表しました。サウジの大胆なスポーツ戦略にとって、まれに見る後退局面となるこの国際ニュースを、日本語ニュースとして整理し、背景と今後を解説します。
IOCとサウジ、12年のeスポーツ提携を解消
IOCは木曜日、サウジアラビアとオリンピック・eスポーツ・ゲームズに関する協力関係を終了することで、双方が合意したと明らかにしました。対象となるのは、リヤドを開催地とする大会を12年間にわたり実施する長期パートナーシップです。
この提携は、昨年のパリ五輪開幕前日に正式に確認されたものでした。当初は今年、リヤドで初のオリンピック・eスポーツ・ゲームズを開く計画でしたが、その後すでに2027年への延期が決まっていました。
IOCは今回の発表で、今後はIOCとサウジがそれぞれ独自にeスポーツ分野の取り組みを進めていくと説明しました。カースティ・カバナ氏がIOC会長に就任してから約7カ月で、大型プロジェクトのリセットに踏み切ったかたちです。
ビジョン2030の目玉だったリヤドのeスポーツ五輪
リヤドでのeスポーツ五輪構想は、サウジアラビアの経済・社会改革プランであるビジョン2030の看板プロジェクトのひとつとされてきました。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は熱心なゲーム愛好家として知られ、同国はここ数年、スポーツとゲーム産業への大型投資を加速させています。
リヤドではすでに、世界中のプロチームが集うeスポーツ・ワールドカップが毎年開かれ、賞金総額は数千万ドル規模に達します。オリンピック・eスポーツ・ゲームズが実現していれば、サウジのeスポーツ戦略を象徴するイベントになるはずでした。
最大の争点はどのゲームを採用するか
今回の計画見直しの背景には、競技タイトル選定をめぐる溝があったとみられます。サウジが主催するeスポーツ・ワールドカップでは、コール オブ デューティやストリートファイターといったシューティング系・格闘系タイトルが目玉になっています。
一方でIOCは、若い世代との接点を広げたいという狙いを持ちながらも、暴力表現を含むゲームをオリンピックの一部として認めることには慎重です。前IOC会長のトーマス・バッハ氏は、サウジとの提携を発表した際に、オリンピックの価値が尊重されること、とくに採用タイトルの面で配慮していると強調していました。
サウジ側も、スポーツ相兼サウジオリンピック委員会会長のアブドゥルアジーズ・ビン・トゥルキ・アルファイサル王子が、オリンピックの価値を尊重し、たたえる特別な大会にすると語るなど、折り合いを探ってきました。それでも最終的には、双方が目指すeスポーツの姿にズレが残ったとみられます。
ゲーム産業への巨額投資が続くサウジ
今回の契約解消は、サウジの政府系ファンドが老舗ゲーム会社エレクトロニック・アーツ(EA)の買収に、約550億ドル規模の資金を投じたと伝えられてから、数週間後のタイミングとなりました。総資産9,250億ドルとされるこのファンドは、エンターテインメントやゲームへの投資を通じて、石油依存からの脱却を図っています。
この買収案件では、米国のジャレッド・クシュナー氏が率いる投資会社もパートナーの一つとして関与したとされています。eスポーツ五輪構想が消えたとはいえ、サウジがゲームやデジタル領域への攻勢を弱めているわけではなく、むしろ投資は一段と拡大していることがうかがえます。
IOCは新しいeスポーツ五輪モデルを模索
IOCは今回、オリンピック・eスポーツ・ゲームズについて、新たなアプローチとパートナーシップモデルを検討すると表明しました。声明では、オリンピック・ムーブメントの長期的な目標により適合する形にすることを掲げ、可能なかぎり早期の初回開催を目指すとしています。
候補地としては、2023年にIOC関係者向けのeスポーツイベントであるオリンピック・eスポーツ・ウィークを開いたシンガポールが一案として挙げられています。同国出身のベテランIOC委員、ン・セリアン氏が、今回のサウジとの12年契約を取りまとめるうえで重要な役割を果たしたとされています。
また、中国は2022年の杭州アジア大会でeスポーツを正式競技として実施した実績があり、視聴者数と収益の両面で世界最大級のeスポーツ市場として知られています。こうした実績から、将来の開催候補として名前が挙がる可能性もあります。
なぜこのニュースが重要なのか
eスポーツは、アジアを中心に急速に成長しているデジタル・カルチャーであり、国際ニュースの重要なテーマになりつつあります。IOCとサウジの決断は、次のような問いを投げかけています。
- どこまでゲームらしさを残しつつ、オリンピックの価値観と両立させるのか
- 潤沢な資金を持つ開催都市と、スポーツ・ガバナンスのバランスをどう取るのか
- アジア、とくに中東と東アジアが、世界のeスポーツ拠点としてどのような役割を担うのか
日本の読者にとっても、これは単なる海外のeスポーツニュースではありません。ゲームとスポーツの境界が薄れ、デジタル空間が国際政治や経済戦略と直結する時代に、どのようなルールと価値観を共有していくのかを考えるきっかけになります。
これからをどう見るか
サウジにとっては痛手に見える一方で、同国のeスポーツ・ワールドカップやゲーム産業への投資は続いています。IOCにとっても、若い世代との接点を広げるためにeスポーツは避けて通れないテーマです。
どの都市とどのゲームタイトルを軸に、オリンピック・eスポーツ・ゲームズの初回大会が形づくられていくのか。リヤド計画の白紙化は、その議論の出発点にすぎないとも言えます。今後の動きを、アジア発の視点から追い続ける必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








