オーストラリア、16歳未満のSNS利用を原則禁止へ 世界で最も厳しい規制案
オーストラリア政府が16歳未満の子どものソーシャルメディア(SNS)利用を原則禁止する方針を打ち出しました。世界でも最も厳しい水準とされる規制は、日本を含む各国の議論にも影響を与えそうです。
何が起きたのか:16歳未満はSNS禁止へ
オーストラリアのアルバニージー首相は木曜日の記者会見で、16歳未満の子どもによるSNS利用を禁止する法案を準備していると発表しました。政府は、この規制を「世界をリードするパッケージ」と位置づけています。
政府案の主なポイントは次の通りです。
- 16歳未満の子どもはSNSプラットフォームを利用できなくなる
- 親の同意があっても例外は認めない
- すでにアカウントを持っている未成年も対象とし、例外にしない
- SNS企業側に、年齢確認とアクセス防止の責任を課す
法案は今年中にオーストラリア連邦議会に提出され、成立後12か月で発効する予定です。計画通り進めば、来年末までに実際の禁止が始まる可能性があります。
政府のねらい:子どもの心と体を守る
アルバニージー首相は「SNSは子どもたちに害を与えている。ここで歯止めをかける」と強調しました。背景にあるのは、子どもの身体的・精神的な健康への悪影響への懸念です。
とくに首相が危惧しているのは、
- 過度に加工された容姿や体型の画像が、少女たちの自己肯定感やボディイメージを傷つけること
- 女性蔑視や暴力的な男性像をあおるコンテンツが、少年たちに繰り返し届いてしまうこと
首相は「14歳の子どもが、心や身体が大きく変化している時期にこうしたコンテンツを浴び続ければ、本当に大きな負担になる。私たちは声を聞き、行動に移している」と述べ、規制強化の必要性を訴えました。
世界初レベルの年齢確認:生体認証や身分証も
今回のSNS規制を成立させるには、誰が16歳未満なのかをどう見分けるかという難題があります。オーストラリア政府は現在、年齢確認のための新しい仕組みを試験導入しており、その中には次のような方法が含まれます。
- 顔画像などを使った生体認証による年齢推定
- 政府発行の身分証明書を用いた本人確認
こうした手法を使い、一定の年齢未満の利用を一律に遮断しようとする取り組みは、どの国・地域でも本格的には行われておらず、事実上の世界初とされています。今後、プライバシー保護と安全確保をどのように両立させるかが大きな焦点になりそうです。
アルバニージー首相は、責任の所在について「負担を負うのは親や若者ではなく、SNSプラットフォーム側だ」と述べ、企業側に強い姿勢で臨む考えを示しました。
対象となる主なSNSプラットフォーム
ミシェル・ローランド通信相は、規制の対象となるプラットフォームとして、次のサービス名を挙げています。
- メタ(旧フェイスブック)のインスタグラムとフェイスブック
- バイトダンス傘下のティックトック
- イーロン・マスク氏が所有するエックス(旧ツイッター)
- アルファベット傘下のユーチューブも対象となる可能性が高い
ローランド通信相は「今回の措置は真に世界をリードするものになる」と述べ、規制強化への強い意欲を示しました。
他国と比べてどれくらい厳しいのか
子どものSNS利用をめぐっては、すでに複数の国が規制やルール作りに動いていますが、オーストラリア案はその中でも突出して厳しい内容です。
ユーザー入力で示された他国の例は次の通りです。
- フランス:15歳未満のSNS利用を原則禁止する法案を提案。ただし、親の同意があれば利用を認める仕組み
- アメリカ:長年にわたり、13歳未満の子どものデータを扱う際には保護者の同意を求めることを企業に義務づけ。その結果、多くのSNSが13歳未満の利用を禁じている
これに対しオーストラリアは、
- 年齢制限を世界最高水準の16歳に設定
- 親の同意による例外を認めない
- すでにアカウントを持っている未成年でも、年齢に達していなければ利用不可
という点で、他国より一歩踏み込んだ規制を目指しています。
テック業界の懸念:若者の孤立と「影のネット」
一方で、テック企業側からは懸念の声も上がっています。メタ、ティックトック、エックス、グーグル親会社アルファベットなどを代表する業界団体「デジタル・インダストリー・グループ(DIGI)」は、今回の方針に対し次のような問題点を指摘しました。
- 若者が、より匿名性が高く規制の行き届かない「影」のインターネット空間に流れてしまうおそれがある
- SNS上のコミュニティや支援ネットワークへのアクセスが絶たれ、かえって孤立を深めるリスクがある
DIGIのスニータ・ボース常務理事は、「若者をオンラインで安全に守ることは最優先だが、10代のデジタルプラットフォーム利用を一律に禁じるのは、21世紀の課題に対する20世紀型の解決策だ」と述べました。そのうえで、
- 年齢に応じた安全なオンライン空間づくり
- 子どもと保護者のデジタルリテラシー向上
- 有害コンテンツからの具体的な保護策
を組み合わせた「バランスの取れたアプローチ」が必要だと訴えています。
政治的な行方:超党派で支持
重要なのは、このSNS禁止方針に対して、オーストラリアの最大野党である保守連合・自由党も支持を表明している点です。与野党が同じ方向を向いていることで、法案審議は比較的スムーズに進む可能性があります。
政府は、プラットフォーム側に「合理的な措置」をとる法的義務を課す方針で、違反した場合の制裁など細かな設計が今後の焦点となります。
日本の私たちにとっての問い
オーストラリアの新しいSNS規制は、日本の議論にもいくつかの重要な問いを投げかけています。
- 子どもを守る責任は、どこまでが家庭で、どこからがプラットフォームや政府なのか
- 「一律に禁止すること」と「安全な使い方を学びながら共存すること」のどちらに重きを置くべきか
- 年齢確認や本人確認を強化するとき、プライバシーと自由をどう守るのか
通勤時間やスキマ時間にSNSを見ている読者の多くも、かつては10代のユーザーだったはずです。自分が10代だったら、こうした規制をどう受け止めただろうか、今の子どもたちにとって何が一番良い環境なのか。そうした想像力を持ちながら、各国の動きを見ていくことが求められています。
これからの注目ポイント
オーストラリア政府は今年中に法案を提出し、成立から12か月後に施行するスケジュールを描いています。計画通り進めば、16歳未満のSNS禁止という「世界初レベル」のルールが現実のものとなります。
子どもの安全、表現の自由、プライバシー、テック企業の責任――これらをどうバランスさせるのか。オーストラリア発のこの動きは、今後の国際的なネット規制の方向性を占う試金石になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








