中国JUNOニュートリノ観測所 本体完成、地下700メートルから宇宙の謎に挑む
中国広東省江門市の地下に建設が進められてきた巨大なニュートリノ観測施設「JUNO(江門地下ニュートリノ観測所)」で、建設開始から9年以上をかけた観測装置本体の構築が今週完了しました。宇宙のしくみを探る国際ニュースとしても注目される基礎科学プロジェクトが、2026年の本格稼働に向けて大きな節目を迎えたかたちです。
JUNO本体が完成、2026年の稼働を予定
JUNOは、中国南部の広東省江門市に位置する地下ニュートリノ観測所です。地表から約700メートル下に設置された世界最大級の透明な球形検出器を使い、「ゴースト粒子」とも呼ばれるニュートリノをとらえることを目指しています。
建設には9年以上が費やされ、今週水曜日、観測装置の中心となる本体部分の組み立てが完了しました。施設は今後、試験運転や調整を経て、2026年に本格的な観測を始める予定です。
世界最大級の球形検出器、そのスケール
JUNOが収まっているのは、地下700メートルに掘られた深さ44メートルの巨大なタンクです。その内部には、次のような構造が組み込まれています。
- 直径41メートルのステンレス製メッシュ構造
- その内側に設置された直径35.4メートルの有機ガラス製の球体
- 球体の周囲を取り囲む約4万5千本の光電子増倍管(フォトマル)
光電子増倍管とは、ごくわずかな光をとらえて電気信号として増幅する装置です。JUNOでは、この多数の光電子増倍管が球体全体を覆うことで、検出器内部で生じるきわめて弱い光を逃さず観測できるようになっています。
「ゴースト粒子」ニュートリノをどう観測するか
ニュートリノは、電気的な性質をほとんど持たず、物質とほとんど反応しない素粒子です。そのため、宇宙空間や地球内部をほぼすり抜けて進むことができ、「ゴースト粒子」とも呼ばれています。
JUNOの透明な球体の内部には、ニュートリノとの反応で微弱な光を出す特殊な液体(液体シンチレーター)が満たされます。ニュートリノがこの液体を通過する際、ごく一部が液体の原子と相互作用し、かすかな光を放ちます。この光を周囲の光電子増倍管がとらえることで、ニュートリノの情報を読み取ります。
- ニュートリノが検出器を通過する
- ごく一部が液体と反応し、光(シンチレーション光)が発生
- 周囲の光電子増倍管がその光を検出
- 集めたデータから、ニュートリノのエネルギーや性質を解析
このようにして、直接見ることのできないニュートリノの性質を、光の情報として間接的にとらえる仕組みです。
JUNOの最大の目的:ニュートリノ質量階層の解明
JUNOは多目的のニュートリノ実験施設ですが、なかでも最優先の目標は「ニュートリノの質量階層」を明らかにすることだとされています。
ニュートリノには複数の種類があり、それぞれの質量がわずかに異なると考えられています。しかし、「どの種類が最も重く、どの種類が最も軽いのか」という質量の並び順は、まだはっきり分かっていません。この並び順のことを質量階層と呼びます。
質量階層が分かることで、
- ニュートリノの性質を説明する理論モデルの絞り込み
- 宇宙の歴史や物質の起源を考えるうえでの重要な手がかり
- 将来の精密な宇宙観測や素粒子実験の計画づくり
など、多くの分野で理解が一歩前進すると期待されています。
なぜ地下700メートルなのか
観測装置が地下深くに設置されているのは、宇宙線などの「雑音」をできるだけ減らすためです。地上には、宇宙から降り注ぐ高エネルギー粒子や放射線が常に飛び交っており、ニュートリノが生み出すごく弱い信号をかき消してしまうおそれがあります。
厚い岩盤に囲まれた地下700メートルに装置を置くことで、こうした不要な信号を大幅に減らし、ニュートリノによる反応だけをできる限り純粋な形でとらえようとしているのです。
アジア発の大型科学プロジェクトとして
ニュートリノ研究は、世界各地の地下観測施設や加速器実験で進められている国際的なテーマです。JUNOの本体完成は、アジアから発信される大型の基礎科学プロジェクトがさらに存在感を高めていることを示す動きとも言えます。
今後、観測データの共有や解析を通じて、各国・各地域の研究者が連携する機会が広がれば、日本の研究コミュニティにとっても重要なニュースソースになるでしょう。
宇宙の起源や物質の成り立ちに迫る挑戦は、一国だけでは完結しない長期的な取り組みです。中国広東省の地下で進むJUNOプロジェクトの一歩一歩は、世界が少しずつ宇宙の謎に近づいていくプロセスの一部でもあります。2026年の本格稼働に向けて、今後の動きにも注目が集まりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








