AIが通信業界に6800億ドル GSMAトップが語るデジタル未来
【リード】国際通信業界団体GSMAのトップが、AI(人工知能)が今後15〜20年で通信業界にもたらす経済効果を「最大6800億ドル」と見積もりました。中国の大手通信事業者が先頭を走るこの潮流は、2025年のいま、世界のデジタル経済を考える上で見逃せないテーマです。
AIが「6800億ドル」を生むとされる理由
2024年に中国・浙江省烏鎮で開かれた世界インターネット大会・烏鎮サミットの開幕式で、GSMA(世界移動通信システム事業者協会)CEOのジョン・ホフマン氏が登壇しました。
ホフマン氏は、コンサルティング会社マッキンゼーの報告書を引用しながら、今後15〜20年でAIが世界の通信業界に最大6800億ドル規模の価値を生み出す可能性があると述べました。
同氏は、AIがビジネスと社会を「かつてない規模で変革し得る強力な力として台頭している」と強調しました。
世界の通信事業者の8割が生成AIをテスト
ホフマン氏によると、世界の通信事業者の約81%が、すでに生成AI(ジェネレーティブAI)のソリューションをテストしているといいます。
そのなかでも、中国の通信事業者はこの分野のリーダーの一つだと指摘しました。大規模な投資、政府の強い支援、そして活発なテック産業が、その背景にあると説明しています。
中国3大キャリアがけん引
ホフマン氏は、チャイナモバイル(China Mobile)、チャイナテレコム(China Telecom)、チャイナユニコム(China Unicom)の3社を挙げ、AI研究と実用化の両面で「すでに大きな前進を遂げている」と評価しました。
これらのAIソリューションは、公共サービス、サプライチェーン(供給網)、医療などの分野を変えつつあるとされています。
洪水対策から文化多様性まで、具体例も
講演では、AIと高性能コンピューティングを組み合わせた具体的な事例も紹介されました。
- 中国北西部では、洪水防止を支援するためのインテリジェント・コンピューティング・サービス・プラットフォームが稼働し、地域の防災に活用されている。
- 中国南西部では、文化の多様性を守り、その発展に生かすことを目的としたAIデータベースが構築されている。
通信ネットワークとAIを組み合わせることで、インフラや地域社会の課題に直接アプローチしている様子がうかがえます。
今後5年で1億5,000万人以上の生活に変化か
ホフマン氏は、モバイルのビッグデータとAIソリューションにより、今後5年間で世界の1億5,000万人以上の人々の生活が改善される可能性があるとの見通しも示しました。
通信ネットワークが生活インフラとして定着した今、AIの活用は料金や通信速度だけでなく、防災、医療アクセス、行政サービスなど、日常生活のさまざまな場面に影響を及ぼすと考えられます。
AIの責任ある発展をどう実現するか
一方でホフマン氏は、AIには大きな機会と同時に責任も伴うと強調しました。倫理的で持続可能なかたちでAI技術を発展させる必要性を訴えています。
人権への配慮や公平性、環境負荷といった観点から、AIのガバナンスがこれまで以上に問われる時代に入ったとも言えます。
人を中心に据えたAI活用というテーマ
烏鎮サミットのテーマは、人を中心としたAI活用で、より良いデジタル未来を築き、サイバースペースでの共同体をつくるというものでした。
AIを単なる効率化ツールとしてではなく、社会全体の利益につなげる存在としてどう生かすか。2024年の議論は、2025年の今も各国や地域の政策、企業戦略を考えるうえで重要な視点を提供しています。
日本の読者への問いかけ
通信とAIの組み合わせは、すでに世界各地で公共サービスや社会課題の解決に使われ始めています。ホフマン氏の試算どおり、今後数十年で6800億ドル規模の価値が生まれるとすれば、その一部は私たちの身近な暮らしにも関わってくるはずです。
日本ではどのような分野で、AIと通信インフラを組み合わせた善のためのAIを実現できるのか。国際ニュースを日本語で追いながら、自分なりの答えを考えてみるタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








