オーストラリア政府が偽情報対策法案を断念 SNS年齢制限へ軸足
オーストラリア政府が進めていたSNS上の偽情報・誤情報を規制する新たな法律づくりは、2024年末に正式に断念されました。一方で政府は、16歳未満のソーシャルメディア利用を禁止する別の法案を優先する姿勢を鮮明にしています。
2025年の今振り返ると、この判断は各国が模索するプラットフォーム規制の難しさを象徴する動きの一つだと言えます。本記事では、日本語で国際ニュースを追う読者向けに、この政策転換のポイントと背景を整理します。
何が起きたのか:偽情報対策法案を撤回
2024年の最終議会会期を前に、オーストラリアのミシェル・ローランド通信相は、SNS企業に偽情報・誤情報の監視と規制を義務づける法案について、政府として成立を断念すると発表しました。
この法案が成立していれば、オーストラリア通信・メディア庁(ACMA)が、対策を怠ったソーシャルメディア企業に対して罰金を科す権限を持つことになっていました。企業側には、自社のプラットフォームで拡散される偽情報や誤情報を監視し、抑制する責任が課される想定でした。
なぜ法案は頓挫したのか:上院で多数確保できず
ローランド通信相によれば、この偽情報法案は上院での支持を得られなかったことが最大の要因です。野党連合だけでなく、環境政党のグリーンズ、さらに複数の無所属上院議員が法案に反対し、与党・労働党は過半数に必要な票数を確保できませんでした。
この結果、政府は法案を通すための数の目算を失い、採決に進むルートが閉ざされました。偽情報への懸念が共有されていたとしても、その対応策をめぐる政治的な合意形成は容易ではないことが浮き彫りになった形です。
SNS規制の焦点は偽情報から年齢制限へ
偽情報対策法案を取り下げた一方で、オーストラリア政府は別のかたちでソーシャルメディア規制を進めようとしています。それが、16歳未満の子どもによるSNS利用を禁止する法案です。
この年齢制限法案は、世界初となるとされる、16歳未満のSNS利用を全面的に禁止する計画です。政府は2024年の最終議会会期に向けて審議を前倒しし、水曜か木曜にも議会を通過する見通しだと伝えられていました。
つまり、オーストラリア政府は、プラットフォーム上で発信される内容を直接規制するアプローチから、利用できる年齢を制限するアプローチへと、政策の重点を移しつつあると見ることができます。
偽情報対策はなぜ難しいのか
偽情報・誤情報をどう規制するかは、多くの国で頭を悩ませるテーマです。国家が何が正しい情報かを強く線引きすれば、言論の自由や政治的な議論を萎縮させるおそれがあります。一方で、プラットフォーム任せにすると、選挙や公衆衛生、安全保障に関わる深刻な影響が出るリスクも指摘されます。
オーストラリアの今回のケースは、プラットフォームへの責任を強めようとする動きと、表現の自由への懸念とのあいだで、政治的な合意形成がいかに難しいかを示したと言えるでしょう。
日本とアジアへの示唆:何を議論すべきか
日本でも、SNS上のフェイクニュースやオンラインでの誹謗中傷への対応が課題となっています。オーストラリアで偽情報対策法案が議会の壁に阻まれ、代わりに未成年のSNS利用を制限する案に重点が移ったことは、日本やアジアの議論にもつながるテーマです。
- 誰が偽情報を定義し、どこまで規制すべきか
- プラットフォーム企業にどこまで法的責任を負わせるのか
- 子どもの安全と、デジタル教育・リテラシーをどう両立させるか
単純な規制強化か自由放任かという二択ではなく、透明性の高いルールづくりや教育、企業の自主的取り組みを組み合わせた、きめ細かな設計が求められていると言えます。
2025年の今、オーストラリアの動きを振り返ることは、日本がこれからどのようなオンラインルールをつくるべきかを考えるヒントにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








