AmazonがAI幻覚対策ツールを発表 AWSの新機能「Automated Reasoning checks」
生成AIが事実と異なる内容をもっともらしく答えてしまう「AI幻覚」への対策として、Amazon Web Services(AWS)が新ツールを打ち出しました。国際ニュースとしても注目される、生成AIの信頼性を高める最新の動きを整理します。
AI幻覚とは何か なぜ問題になるのか
AI幻覚とは、本来存在しない事実や根拠のない情報を、生成AIが自信満々に答えてしまう現象を指します。ニュース記事の捏造、存在しない法律の引用、ありえない数値の提示など、ビジネスや公共分野で使うには大きなリスクになります。
背景には、生成AIモデルが統計的なパターンから「次に来そうな単語」を予測しているという仕組みがあります。モデルは真実そのものを理解しているわけではなく、「それらしく見える答え」を確率的に組み立てているため、一定の誤りや幻覚はどうしても起こりやすい構造になっています。
AWSが投入した新ツール「Automated Reasoning checks」とは
AWSは火曜日、クラウドサービスのAWS Bedrock上で利用できる新機能「Automated Reasoning checks」を発表しました。生成AIモデルの回答を自動的に検証し、AI幻覚を抑えようとする仕組みです。
このサービスは、顧客が提供した情報をもとにモデルの回答をチェックし、正確さを検証します。AWSは、この機能をAI幻覚に対する「最初で唯一の安全策」だと説明しています。
仕組みのポイント
- AWS Bedrock上で動作する生成AI向けの検証ツール
- 顧客が自社の資料やデータをアップロードし、それを「事実上の基準」として設定
- ツールがそのデータから検証ルールを自動生成し、必要に応じて顧客がルールを調整
- モデルが回答を生成するたびに、基準データと照合して正しさをチェック
- 幻覚の可能性が高いと判断された場合、基準データに基づく「正しい答え」をAIの回答と並べて提示
AWSによると、このプロセスではモデルがどのような理由付けで回答に至ったのかを推定し、論理的に正しいかどうかを検証することを目指しています。
PwCが先行利用 企業のAIアシスタントに活用
AWSは、コンサルティング大手のPwCがすでにAutomated Reasoning checksを利用し、クライアント向けのAIアシスタントを設計していると明らかにしています。企業が自社データをもとにAIを活用する際、誤情報のリスクを抑制するための重要な部品として位置づけていることがうかがえます。
AWSのAI・データ担当バイスプレジデントであるSwami Sivasubramanian氏は、「こうした新しい機能の提供を通じて、生成AIアプリケーションを本番環境に移行する際に業界全体が直面している課題の解決を、顧客に代わって進めている」と述べています。
「論理的に正確」と主張 ただしデータは未公開
AWSは、このツールが「論理的に正確」で「検証可能な推論」に基づいて結論に到達すると説明しています。一方で、こうした仕組みがどの程度の精度でAI幻覚を防げるのかについて、具体的な評価データは公表されていないと報じられています。これはTechCrunchによる報道です。
つまり現時点では、仕組みの方向性は明らかになったものの、どこまで安全性や信頼性が高まるのかは、ユーザー企業による実運用や第三者による検証を通じて見えてくる段階だと言えます。
MicrosoftとGoogleも対策強化 競争が本格化
AI幻覚への対応は、AWSだけのテーマではありません。今年夏には、Microsoftが生成AIの誤りを指摘する「Correction」機能を導入しました。この機能は、事実と異なる可能性があるテキストを旗印のように示し、ユーザーに注意を促す役割を果たします。
またGoogleも、AI開発プラットフォームであるVertex AI上で、モデルを「グラウンディング」する機能を提供しています。これは、第三者のデータ提供企業の情報やユーザー自身のデータセット、さらにはGoogle検索の結果などを活用し、AIの回答を現実のデータに結びつける試みです。
生成AIをビジネスの現場に本格投入しようとする企業が増えるなかで、各社が「どれだけ誤情報を抑えられるか」を競う段階に入っていることがうかがえます。
日本のビジネスにとっての意味 何に気をつけるべきか
日本企業にとっても、生成AIの国際ニュースは他人事ではありません。社内ナレッジ検索、顧客対応、契約書レビュー、コード自動生成など、用途が広がるほどAI幻覚のリスクは高まります。新しいツールが登場したからといって、すぐに安心して任せきりにできるわけではありません。
導入を検討する企業へのチェックポイント
- どの情報を「正」とするか:アップロードする自社データの範囲と品質をどう管理するか
- ルールの更新:制度改正や商品変更などに応じて、検証ルールをどの頻度で見直すか
- 人間の関与:重要な判断において、人間による最終確認をどのように組み込むか
- 他社ツールとの比較:MicrosoftやGoogleの機能も含め、実務に合う仕組みを検証するか
AI幻覚対策ツールは、万能の防波堤というよりは、リスクを下げるための一つのレイヤーと考える方が現実的です。
これから問われるのは「根拠の見える化」
生成AIの活用が広がるほど、「なぜその答えになったのか」「どの情報に基づいているのか」という根拠の見える化が重要になります。AWSのAutomated Reasoning checksのような取り組みは、その第一歩と言えます。
今後、企業や研究機関が実運用でのデータや評価結果をどこまで公開していくのか、またユーザー側がどの程度まで説明可能性を求めていくのかが、生成AI時代の新しい論点になりそうです。
AIの便利さを享受しつつ、どこまでをAIに任せ、どこからを人間が確認するのか。今回のAWSの動きは、その境界線を改めて考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








