欧州の太陽観測ミッションProba-3、インドのロケットで打ち上げ
なぜこの太陽観測ミッションが重要なのか
欧州宇宙機関(ESA)の最新太陽観測ミッション「Proba-3(プロバ・スリー)」が、インド宇宙研究機関(ISRO)の主力ロケットで打ち上げられました。太陽のふるまいは、通信や電力など現代社会の基盤に直結する「宇宙天気」に影響を与えます。今回のミッションは、そのリスクをより正確に理解するための一歩と位置づけられています。
Proba-3とは? 2機の衛星で挑む人工日食ミッション
Proba-3は、10年以上かけて開発された2機編隊の人工衛星システムで、設計寿命は2年とされています。2機の衛星がきわめて精密な編隊飛行を行い、一方が遮蔽板、もう一方が観測機として機能することで、太陽の明るい本体を隠し、その周囲に広がるコロナ(太陽の外層大気)を観測します。
ESAにとって、Proba-3は既存の太陽探査機ソーラー・オービターと並び、太陽の複雑なダイナミクスを解き明かすための重要なピースになります。
インドのPSLV-XLで打ち上げ 前日の不具合を乗り越え
打ち上げはインド南部のサティシュ・ダワン宇宙センターで行われました。当初は水曜日に予定されていましたが、技術的な不具合により延期され、現地時間の木曜日に実施されました。
ISROの主力機であるPSLV-XLロケットは、協定世界時(GMT)10時34分に離昇。その約24分後の10時58分、PSLVミッションディレクターのM・ジャヤクマル氏が、衛星が無事に軌道へ投入されたと発表しました。
今回の成功は、月探査チャンドラヤーン3や太陽観測機アディティア-L1など、近年のISROの成果の延長線上にあります。欧州とインドがそれぞれの強みを持ち寄るかたちで、太陽研究の国際的なネットワークが強化されたと言えます。
太陽コロナに迫る 宇宙天気リスクをどう減らすか
太陽の外側を取り巻くコロナは、まだ十分に解明されていない領域です。Proba-3のシステムエンジニアであるエスター・バスティダ・ペルテガス氏は、事前に収録されたビデオで「太陽のコロナはこれまで非常に不十分にしか調べられてこなかった。コロナ質量放出や太陽風が、この領域でどのように生まれるのかを理解したい」と語っています。
コロナから放出されるコロナ質量放出(CME)や太陽フレアは、地球近傍の宇宙環境を大きく乱し、通信・測位・電力網などに深刻な影響を与える可能性があります。ESAとISROが進める今回の太陽観測ミッションは、こうした宇宙天気による経済・技術リスクをより正確に見積もるための取り組みです。
自然の皆既日食を超える 6時間の観測時間
Proba-3の大きな特長は、1周ごとの軌道で最大6時間にわたり太陽の内側コロナを観測できる点です。自然の皆既日食は、1回あたり数分程度しか続かず、100年のうちでもおよそ60回ほどしか起きません。
Proba-3は、衛星同士の編隊飛行によって人工的な日食の状態を長時間つくり出し、従来の観測ではとらえきれなかった微細な変化を追跡しようとしています。これにより、コロナ質量放出が生まれる瞬間にどこまで迫れるかが注目されています。
2億ユーロ規模、40社超が参加する欧州プロジェクト
このプロジェクトの費用は約2億ユーロ(約2億1000万ドル)とされ、欧州の40社以上が開発・製造に参加しています。参加企業には、SENER Aerospace、Redwire Space、Airbus Defence and Space などが含まれます。
一つのミッションに多くの企業が関わることで、欧州の宇宙産業の裾野が広がると同時に、太陽観測のデータや技術が広く共有されることが期待されます。
これからの焦点 私たちの暮らしとのつながり
今回のProba-3打ち上げは、宇宙ファンだけでなく、グローバルな経済やデジタルインフラに関心を持つ人にとっても重要なニュースです。宇宙天気の正確な予測は、次のような分野に直結します。
- 衛星通信やインターネットの安定運用
- GPSを使った物流・金融・モビリティサービス
- 大規模停電リスクの低減
今後2年間のミッション期間で、Proba-3がどこまでコロナの謎に迫れるのか。ESAとISROの協力から生まれる新しい知見は、私たちの見えない安心を支えるインフラづくりにもつながっていきそうです。
Reference(s):
Europe's sun-studying Proba-3 mission lifts off on Indian rocket
cgtn.com







