NASAジュノー探査機、木星衛星イオ火山の「心臓部」を解明
NASAの木星探査機ジュノーによる最新の観測で、木星の衛星イオの火山は「巨大なマグマの海」ではなく、それぞれ独立したマグマだまりに支えられている可能性が高いことが分かりました。木曜日に公表された研究によると、この成果はイオの火山活動の起源をめぐる約44年にわたる謎に決着をつけるものだとされています。
太陽系で最も「荒ぶる」天体・イオ
イオは地球の月とほぼ同じ大きさの衛星で、太陽系でもっとも火山活動が激しい天体として知られています。推定約400の火山が存在し、ほぼ絶え間なく溶岩や噴煙を噴き上げ、その噴出物が表面を覆っています。NASAは、そのまだら模様の姿から、イオの表面を「ピザのよう」と表現しています。
ジュノー探査機が至近距離から観測
ジュノー探査機は2023年12月と2024年2月、イオに約1,500キロメートルまで接近するフライバイ(接近通過)観測を実施しました。この「超接近」により、これまでにない精度でイオの内部構造を探るチャンスが生まれました。
その際、ジュノーはNASAの深宇宙通信網(ディープスペース・ネットワーク)と通信しながら、高精度な二周波ドップラーデータを取得しました。探査機から送られる電波の周波数が、イオの重力によってわずかに変化する様子を追跡し、その変化からイオの重力場、ひいては内部構造を推定したのです。
「マグマの海」ではなく、火山ごとのマグマだまり
今回の解析で、研究チームは、イオの火山が衛星全体を満たす一つのマグマの海から一斉にエネルギーを得ているのではなく、各火山がそれぞれ独立したマグマだまり(マグマチャンバー)を持っている可能性が高いと結論づけました。これにより、イオの劇的な噴火活動は、地下に広がる一つの巨大なマグマの海ではなく、数百の局所的なマグマシステムの集合として捉え直す必要が出てきています。
研究によると、こうした理解の更新は、イオの最も特徴的な地質活動の起源に関する44年越しの議論に決着をつけるものであり、火山活動のメカニズムを根本から見直すきっかけになるとされています。
鍵を握る「潮汐変形」の影響
NASAによれば、今回のフライバイ観測は、「潮汐変形」と呼ばれる現象の影響をより詳しく明らかにしました。潮汐変形とは、巨大な天体の重力によって衛星の形がわずかに伸び縮みし、その歪みが熱となって内部を温める現象です。
ジュノーの観測は、潮汐による力が必ずしも全球規模のマグマの海をつくるわけではないことを示しました。論文の筆頭著者であり、ジュノー計画の共同研究者でもあるNASAジェット推進研究所のライアン・パーク氏は、「ジュノーの発見は、潮汐による力が常に全球的なマグマの海を生み出すわけではないことを示し、イオの内部構造について私たちが知っているつもりだったことを見直すきっかけを与えてくれます」と述べています。
エンケラドス、エウロパ、系外惑星にもつながる発見
パーク氏はさらに、この発見は土星の衛星エンケラドスや木星の別の衛星エウロパなど、他の衛星に加え、太陽系外の惑星や「スーパーアース(地球より少し大きい岩石惑星)」を理解する上でも重要だと指摘しています。潮汐変形がどのような内部構造と火山・地質活動を生み出すのかを見直すことで、惑星や衛星がどのように形成され、どのように進化していくのかについて、新たなシナリオを描ける可能性があるからです。
同氏は、「今回の新しい結果は、惑星の形成と進化について私たちが知っていることを考え直す絶好の機会を提供してくれます」と強調しています。
これからの注目ポイント
今回の研究は、木星圏探査という一つのミッションが、太陽系全体、さらには系外惑星研究にまで波及するインパクトを持ち得ることを示しています。今後、研究者たちは次のような点に注目していくとみられます。
- イオの各火山ごとのマグマだまりの規模や分布を、重力や将来の観測でより詳しく推定できるか
- 潮汐変形が、衛星ごとの内部構造の違いに応じて、どのように異なる地質活動を生み出すのか
- エンケラドスやエウロパ、系外のスーパーアースの内部モデルに、今回の知見をどう組み込むか
木星の衛星イオの「火山の心臓部」をのぞき込んだジュノー探査機の成果は、私たちが「生きている惑星・衛星」をどう理解するかを静かに揺さぶっています。日々更新される宇宙探査のニュースの中でも、長年の謎を解きつつ、未来の惑星科学への問いを増やしてくれる発見と言えそうです。
Reference(s):
NASA's Juno mission uncovers heart of Jovian moon's volcanic rage
cgtn.com








