トランプ政権2期目で揺れる米テック業界 対中規制と人材争奪の行方
米国では今年1月20日にトランプ政権の2期目が始まり、テクノロジー業界では今も先行きの不透明感が続いています。とくに対中国本土へのテック制限、半導体、ビザ政策、ビッグテック規制は、今後数年の世界のデジタル産業を左右する重要な論点です。
トランプ政権2期目で高まるテック業界の不確実性
トランプ政権は1期目から、中国本土への技術供与を抑制する強い姿勢で知られてきました。関税、輸出管理、そして中国本土からの対米テック投資への制限などがその柱です。こうした政策には超党派での支持もあり、2期目では「対中国本土に厳しい」路線がさらに強まる可能性が高いと見られています。
その結果、米中双方のテック産業だけでなく、グローバルなサプライチェーン全体に波紋が広がっています。とくにスマートフォンなどの消費者向け電子機器では、部品コストの上昇が最終製品の価格に跳ね返りやすく、消費者にとっても無視できない影響となりつつあります。
対中テック制限がもたらす影響
トランプ政権の対中国本土政策は、次のような形でテック産業に影響を与え続けると考えられます。
- 高い関税により、部品と完成品のコストが上昇する
- 輸出管理の強化で、先端チップや製造装置へのアクセスが制約される
- 投資規制により、米中間の資本・技術の行き来が細る
当初、これらは米国内回帰や自国製造の強化をねらったものとされてきましたが、同時に中国本土の企業が自立的な技術開発を加速させるきっかけにもなっています。
半導体産業: 中国本土の自立加速と競争激化
とくに半導体は、トランプ政権の対中国本土戦略の中心にある分野です。追加関税や輸出管理の継続・強化は、中国本土企業にとって「自分たちで作るしかない」という強いインセンティブになっています。
2024年の急速な統合と台頭
2024年、中国本土の半導体産業ではサプライチェーン全体にわたって40件を超える合併・統合が発表されました。小規模な企業同士が連携・統合することで、設計から製造、素材までを一体で手掛ける体制が急速に整いつつあります。
一部のネットインフルエンサーは、米国の制限がなければここまでのスピードで産業がアップグレードすることはなかったと評価し、制限を逆に「成長のきっかけ」として捉える見方も示しています。
これは、米半導体企業にとって次のような意味を持ちます。
- 中国本土企業との競争が、従来以上に本格化する可能性がある
- 一部市場では、米企業のシェアを中国本土企業が代替する展開もあり得る
- 同時に、サプライチェーンの多様化という形で新たな協力の余地も残る
半導体は日本やアジアの企業とも関係が深く、米中対立の行方は地域全体の産業戦略に影響を与え続けます。
ビザと人材: H-1Bを巡る攻防
米テック業界にとってもう一つの鍵は、人材をどう確保するかです。ここで焦点となるのが、海外の高度人材向け就労ビザであるH-1Bです。
トランプ政権1期目の時期、H-1Bビザの却下率は2015年の6パーセントから2018年には24パーセントまで上昇しました。2期目でも同様のスタンスが続けば、米テック企業は海外からの人材確保に苦労するおそれがあります。
一方で、テスラやスペースXを率いるイーロン・マスク氏は、2期目のトランプ政権下でH-1B枠の拡大を支持する姿勢を見せています。しかし、マスク氏のこの発言には、アメリカには高度技能職に就ける自国人材が十分いると考える支持層からの反発も起きました。
この対立は、次のような論点を浮かび上がらせています。
- イノベーションの源泉を「国内人材中心」にするのか、「世界中の人材の競争」に開くのか
- ビザ政策が、アジアを含む各国の研究者・エンジニアのキャリア選択にどう影響するか
- 米国が将来もテック人材の「磁石」であり続けられるか
日本やアジアの若いエンジニアにとっても、米国のビザ政策はキャリア設計に直結する重要なニュースです。
ビッグテックとの距離感はどう変わるか
トランプ政権とビッグテック企業との関係も、2期目の注目ポイントです。1期目には、アマゾン、アップル、グーグル、メタなどが司法省や連邦取引委員会による反トラスト法(独占禁止法)関連の調査・訴訟の対象となりました。
しかし2期目については、物価抑制や景気の下支えといった課題を優先し、ビッグテックへの圧力をやや緩めるのではないかという見方も出ています。イーロン・マスク氏との近さを背景に、一部のテック企業にはむしろ追い風となる可能性も指摘されています。
暗号資産への前向きな姿勢
トランプ氏は暗号資産に対して比較的前向きな発言を重ねており、これはテック業界に対する姿勢の変化を象徴していると見る向きもあります。暗号資産やブロックチェーンは、既存の金融システムとデジタル技術が交わる領域であり、規制のあり方が新しいビジネスの成否を左右します。
一方で、グーグルなどに対する政府調査について、トランプ氏自身は「グーグルのやり方は好きではないが、会社を解体する必要まではない」といった、明確でない態度も示してきました。2期目の政権がどこまで踏み込むのかは、依然として読みづらい状況です。
日本とアジアの読者にとっての意味
米国のテック政策は、日本やアジアの企業・個人にも直接的な影響を与えます。ポイントを整理すると次の通りです。
- サプライチェーン再編: 中国本土、米国、アジア各国・地域の役割がどう変わるか
- 半導体競争: 日本や韓国、台湾地域などの企業が、米中の間でどうポジションを取るか
- 人材流動: 米ビザ政策の変化が、日本やアジアの研究者・技術者の移動パターンをどう変えるか
- デジタル規制: 暗号資産やビッグテック規制の動きが、日本の制度設計にもどのように波及するか
日本国内のIT企業やスタートアップにとっても、米テック業界の動きは、自社の調達コスト、海外展開、人材戦略に直結します。ニュースを追う際には、単に米国の内政としてではなく、「自分たちの事業や仕事とどうつながるか」という視点を持つことが重要です。
不確実性の時代に何を見るべきか
トランプ政権2期目は、米テック業界にとってチャンスとリスクが入り交じる時期となっています。対中国本土のテック制限、半導体の競争環境、人材ビザ、ビッグテックと暗号資産の扱いなど、複数の要素が同時に動いているからです。
これから数年を見通す上で、注目すべきポイントとしては次のようなものが挙げられます。
- 関税や輸出管理の対象や範囲が、どのようなペースで変化するか
- 中国本土の半導体企業の技術力と国際展開がどこまで進むか
- H-1Bビザをはじめとする人材政策が、どの方向に振れるか
- ビッグテックへの反トラスト対応と暗号資産規制のバランスがどう取られるか
不確実性が高いからこそ、短期の価格動向だけでなく、中長期の構造変化を意識してニュースを読み解くことが大切です。日本語で国際ニュースを追う私たちにとっても、米テック政策はこれからの数年、ウォッチし続ける価値のあるテーマと言えるでしょう。
Reference(s):
Navigating uncertainty: U.S. tech faces challenges under Trump
cgtn.com








