TikTok CEOがトランプ就任式に招待 禁止懸念の中で何が起きていたのか
米動画アプリTikTokの最高経営責任者(CEO)、Shou Zi Chew(ショウ・ジ・チュー)氏が、ドナルド・トランプ次期米大統領の就任式に招待されていた──。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の報道は、TikTok禁止をめぐる米国政治の緊張を象徴する出来事として注目されました。
TikTok CEO、トランプ就任式で「名誉席」に招待と報道
NYTは、就任式の計画に詳しいとされる関係者2人の話として、TikTokのShou Zi Chew CEOが2025年1月20日のトランプ氏の就任式に出席する予定だったと報じました。
報道によると、Chew氏は、通常は元大統領や家族、特別な要人が座る「名誉席」に招かれていたといいます。ソーシャルメディア企業のトップが、そのような象徴的な位置に座ることは異例であり、TikTokをめぐる議論の大きさを物語っています。
米国で迫っていたTikTok禁止期限
NYTがこの報道を伝えた当時、TikTokは米国で全面的に禁止される可能性に直面していました。現職のジョー・バイデン米大統領が署名した法律により、2025年1月19日までに措置が取られない場合、TikTokは米国内で禁止されるとされていたためです。
この禁止を回避する選択肢として、当時取り沙汰されていたのは主に二つでした。
- 米連邦最高裁判所や米政府が、この法律を見直し、TikTokへの適用を止めること
- TikTokの親会社である、中国本土に拠点を置くByteDance(バイトダンス)が、TikTokの米国事業を米企業などに売却すること
いずれもハードルが高い選択肢であり、約1億7,000万人の米国ユーザーにとって、先行きは不透明な状況でした。
約1億7,000万人の利用者がいるTikTok
報道によれば、TikTokは当時、米国だけで1億7,000万人以上のユーザーを抱えていました。その中には、短尺動画を投稿することで収入を得ているクリエイターも少なくありません。
もしプラットフォームが突然使えなくなれば、
- 収入源を失うクリエイター
- ビジネスの宣伝にTikTokを活用している中小企業
- 日常的な情報収集やエンタメの場として利用する一般ユーザー
など、多くの人の生活や仕事に直接影響が出る可能性がありました。
「国家安全保障上のリスク」と批判されてきたTikTok
TikTokは、米国の議員や政府関係者から、長年にわたり「国家安全保障上のリスク」だと批判されてきました。ユーザーデータがどのように扱われているのか、アルゴリズムがどのようにコンテンツを推薦しているのか、といった点が議論の的となってきたためです。
ただ、この議論には、純粋な技術・プライバシーの問題だけでなく、
- どの国の企業がプラットフォームを運営するのか
- 巨大テック企業と政治の関係をどう整理するのか
といった、より広い国際政治と経済の問題も重なっています。
トランプ氏はなぜTikTokを「救う」と報じられたのか
報道によると、トランプ氏は初めて大統領を務めていた時期にもTikTokを厳しく批判し、制限を試みていました。しかし今回、就任を前にしたトランプ氏は、大統領令によってTikTokを「救う」ことを検討しているとも伝えられていました。
就任式の名誉席にChew氏を招いていたとされることは、
- TikTokをめぐる自らのスタンスの変化を示すサイン
- プラットフォームの利用者や若い世代に向けたメッセージ
- テクノロジー企業との関係改善をアピールする狙い
など、さまざまな読み方ができる動きでした。
テックと政治が交差する象徴的な瞬間
TikTok CEOの就任式招待をめぐるNYT報道は、テクノロジー企業と政治がいかに密接に結びついているかを示す象徴的な出来事でした。
このニュースから見えてくるポイントを、改めて整理すると次の三つです。
- TikTok禁止の議論は、単なるアプリ規制ではなく、国際政治・経済の力学を映す鏡になっていること
- プラットフォームに依存するクリエイターや企業の存在が、政策決定において無視できない要因になっていること
- 一人の政治リーダーの判断が、デジタル空間での言論やビジネスのあり方を大きく揺さぶりうること
ニュースを追う私たちにとっても、使っているアプリの向こう側でどのような政治的・経済的な力学が働いているのかを意識するきっかけになりそうです。
Reference(s):
TikTok CEO Shou Zi Chew to attend Trump inauguration, NYT reports
cgtn.com








