フランスがAIに1,090億ユーロ投資誘致 マクロン氏が大型戦略を発表
フランスのマクロン大統領が、今後数年で総額1,090億ユーロ(約1,120億ドル)の人工知能(AI)関連投資をフランスに呼び込む計画を明らかにしました。UAEや北米の投資ファンド、フランス企業が参加する大型構想で、世界のAI競争とAIガバナンス(AIのルール作り)をめぐる議論に大きな影響を与えそうです。
この記事のポイント
- フランスが今後数年でAI分野に総額1,090億ユーロの投資を誘致すると発表
- 資金はUAE、米・カナダの大手ファンド、フランス企業から拠出される見通し
- 中国のAIモデルDeepSeekについて、マクロン氏は「出身国だけを理由に禁止しない」と発言
- パリでは来年2月10〜11日にAI Action Summitが開催予定で、約100の国や地域の代表が参加
- AIの公共性、労働、文化・イノベーション、信頼性、グローバルなルール作りが主要テーマになる
1,090億ユーロ規模のAI投資、どこから来るお金か
マクロン大統領は日曜日夜のテレビインタビューで、フランスが今後数年にわたって総額1,090億ユーロのAI関連投資を受けると発表しました。これはフランス国内の研究開発やデータセンター、スタートアップ支援など、AIエコシステム全体を対象としたものとされています。
資金の出どころとして挙げられたのは、次のようなプレーヤーです。
- アラブ首長国連邦(UAE)
- 米国とカナダの大手投資ファンド
- フランスの企業
海外と国内の資本を組み合わせることで、フランス発のAI技術や企業を育てる「ハブ」としての役割を強化したい狙いが読み取れます。
米国の「Stargate」に匹敵する計画と位置づけ
マクロン大統領は今回の投資について、米国が発表したAI関連の大型構想「Stargate」に相当するものだと表現しました。アメリカが巨大な計算資源や研究開発投資で主導権を強めるなか、フランスとしても同規模の野心を示した形です。
こうしたメッセージは、単なる産業政策にとどまらず、AI時代におけるフランスと欧州の「存在感」を内外にアピールする意味合いもあります。AI開発の拠点やルール作りの議論が一部の国に偏らないようにするための動きとも言えます。
DeepSeekをめぐる発言:出身国で線を引かない姿勢
インタビューでは、中国のAIモデルDeepSeekに対するフランスの対応も問われました。これに対しマクロン大統領は、現時点でDeepSeekを禁止する考えはないと明言しました。
その理由として示したのは、「技術の出身国だけを理由に禁止するのは適切ではない」という考え方です。フランスは、特定の国を理由に技術へのアクセスを制限するアプローチとは一線を画したい姿勢を打ち出した形です。
一方で、AIの安全性やデータ保護、人権尊重といった観点からのルール作りは引き続き重要な課題です。技術のオープンさと安全性をどう両立させるかは、フランスだけでなく各国が直面している共通のテーマになっています。
パリでAI Action Summit 来年2月に開催予定
急速に進化するAIをめぐる国際的な議論の場として、フランスは来年2月10〜11日にパリで「AI Action Summit」を主催します。この国際会議は、世界のAIガバナンスや公共政策を議論する場として位置づけられています。
サミットでは、次の5つの主要テーマが取り上げられる予定です。
- 公共の利益に資するAI(公共サービスや医療、教育などを含む)
- 仕事の未来(雇用への影響やスキル転換など)
- イノベーションと文化(クリエイターや文化産業への影響)
- AIへの信頼(透明性、安全性、説明責任など)
- グローバルなAIガバナンス(各国・地域のルール調和や国際協調)
主催者によると、約100の国や地域の代表に加え、1,000人を超える企業関係者や市民社会の参加者が招待されています。招待にあたっては、AIの開発に関わるだけでなく、国際的な議論に貢献する意思があるかどうかも重視されたとされています。
なぜ今、フランスのAI戦略が注目されるのか
今回の発表とAI Action Summitの組み合わせは、フランスが「AIをめぐるお金とルールの両方」で存在感を高めようとしていることを示しています。
背景には、次のような状況があります。
- AIの研究開発とインフラ整備には、巨額の投資が不可欠になりつつある
- 一方で、AIの利用ルールや倫理、国際協調の枠組みづくりはまだ途上にある
- 技術とルールの両方で主導権を握る国・地域が、今後のデジタル経済の方向性を左右しうる
フランスは、投資を呼び込みつつ、多国間の対話の場を提供することで、AI時代の国際秩序づくりに関与していく姿勢を示したと言えるでしょう。
日本やアジアにとっての示唆
日本やアジアの読者にとっても、今回の動きは他人事ではありません。AIの投資競争とルール作りの両方が、ビジネスと社会の在り方を大きく変えていくからです。
特に、次のような点は今後の議論のヒントになりそうです。
- 海外資本と国内企業をどう組み合わせてAIエコシステムを育てるか
- 技術の出身国で線を引かずに、安全性や信頼性の基準をどう設計するか
- イノベーションと文化産業、クリエイターの権利を両立させる仕組みづくり
- 国や地域をまたぐAIガバナンスに、どのような立場で関わっていくか
マクロン大統領の発表とAI Action Summitは、「AIをどのように社会に組み込むのか」という問いを、改めて世界に突きつけています。日本からも、欧州や他地域の動きを冷静に観察しつつ、自分たちにとって望ましいAIの姿を考えていくことが求められそうです。
Reference(s):
cgtn.com








