温室効果ガスが低軌道の衛星収容力を弱める 新研究の警鐘
温室効果ガスの増加が、地球の気候だけでなく宇宙空間の使い方にも影響している可能性があることが、新しい研究で示されました。低軌道に長くとどまるデブリが増えることで、持続的に運用できる衛星の数が減るおそれがあるという指摘です。
何が分かったのか 温室効果ガスと低軌道の意外な関係
今回の研究は、マサチューセッツ工科大学(MIT)とバーミンガム大学の研究者によって行われました。テーマは、温室効果ガスが地球近傍の宇宙環境、特に低軌道にどのような影響を与えるかという点です。
研究チームによると、二酸化炭素などの温室効果ガスが増えると、地球の大気は赤外線としてより多くの熱を宇宙空間へ放出するようになります。その結果、上空の大気が冷え、全体として縮む方向に変化するとされています。
大気が縮むと、低軌道における大気の密度が下がります。低軌道とは、おおむね地表から数百キロメートルほどの高さにある軌道で、多くの通信衛星や観測衛星が運用されている領域です。
大気の密度が下がると起きること
宇宙ごみを落としていた大気のブレーキ
これまで低軌道では、わずかながら存在する大気が、衛星やデブリに対して抵抗として働いてきました。この抵抗は大気抵抗と呼ばれ、軌道上の物体にとってはブレーキの役割を果たします。
古くなった衛星や役割を終えたロケットの破片などは、この大気抵抗によって少しずつ高度を下げていきます。やがて大気の濃い領域に入ると、高温になって燃え尽き、多くの場合は地上に到達する前に消滅します。つまり、大気抵抗は宇宙ごみを自然に処理する仕組みとして機能してきました。
抵抗が弱まり、デブリが何十年も居座る
しかし、大気が冷えて縮み、密度が下がると、この自然のブレーキが弱くなります。研究によれば、低軌道での大気抵抗が小さくなることで、宇宙デブリが軌道上にとどまる期間が何十年単位で延びる可能性があります。
長く残り続けるデブリは、次のような問題を引き起こします。
- 軌道上の空間が埋まり、新しい衛星が使える領域が減る
- 衛星同士や衛星とデブリの衝突リスクが高まる
- 一度衝突が起きると破片がさらに増え、連鎖的に危険が拡大するおそれがある
その結果として、低軌道で持続的に運用できる衛星の総数が、温室効果ガスの増加によって徐々に制約されていく可能性があると研究チームは指摘しています。
宇宙利用と気候変動がつながるという視点
温室効果ガスというと、多くの人が思い浮かべるのは地球温暖化や異常気象など、地表付近の問題かもしれません。しかし今回の研究は、温室効果ガスが地球近傍の宇宙環境にも影響を与えうることを示しています。
ポイントは、温室効果ガスの増加が、低軌道を自動的にきれいにしてきた大気抵抗の仕組みを弱めてしまう可能性があるということです。これにより、宇宙空間の混雑やデブリ対策といった課題が、気候変動の問題と間接的につながってくる構図が浮かび上がります。
今後の衛星運用に何を示唆するのか
低軌道の環境が変化し、自然にデブリが減りにくくなるとすれば、衛星の設計や運用計画にも影響が出てきます。例えば、次のような視点がより重要になると考えられます。
- 寿命を迎えた衛星を自ら軌道離脱させる仕組みの重視
- 新たな衛星を打ち上げる際、軌道上の混雑状況をより慎重に評価する必要性
- デブリ除去技術や国際的なルール作りに対する関心の高まり
今回の研究が指摘するのは、こうした議論の背景として、地球の大気環境そのものが変わりつつあるかもしれないという点です。
読者が押さえておきたい三つのポイント
この記事で紹介した内容を、あらためて整理します。
- 温室効果ガスの増加は、上空の大気を冷やして縮ませ、低軌道での大気密度を下げる可能性がある
- 大気密度が下がると、宇宙デブリに働く大気抵抗が弱まり、デブリが軌道上にとどまる期間が長くなる
- その結果、低軌道で持続的に運用できる衛星の数が制限され、衝突リスクや軌道の混雑が深刻化するおそれがある
2025年の今、気候変動と宇宙利用は別々の話題に見えがちですが、地球の大気を介して静かに結びつき始めています。温室効果ガスの問題を考えるとき、空のさらに上、地球近傍の宇宙空間の変化にも目を向ける必要が出てきているのかもしれません。
Reference(s):
Greenhouse gases weakening LEO's satellite carrying capacity
cgtn.com








