ブルーオリジン、女性だけの著名人クルーを宇宙へ ケイティ・ペリーも搭乗
宇宙旅行をまだ遠い夢のように感じている人も多いなか、米宇宙企業ブルーオリジンが2025年12月8日、歌手ケイティ・ペリーさんら女性だけの著名人クルー6人を宇宙へ送り出しました。高度100キロを超える短時間の宇宙飛行は、宇宙ビジネスとジェンダーの両面で注目を集めています。
何が起きたのか:高度100キロ超、約10分の宇宙旅行
米富豪ジェフ・ベゾス氏のロケットを使うブルーオリジンは、同社のサブオービタル(弾道飛行)ロケット「ニューシェパード」で、6人の女性クルーを乗せた飛行を実施しました。
打ち上げは米テキサス州西部から現地時間の月曜日午前8時30分ごろに行われ、飛行時間は着陸までおよそ10分間でした。機体は垂直に上昇し、途中でクルーカプセルがブースターから分離。その後カプセルはパラシュートと逆噴射ロケットによって減速し、安全に地表へと戻りました。
カプセルは地球の表面から100キロメートルを超える高さまで到達しました。これは、国際的に宇宙空間の境界とされる「カーマンライン」を越えるもので、乗客たちは短時間ではあるものの、無重力状態と地球の曲面を体験したとみられます。
今回の飛行は、ブルーオリジンにとって11回目のサブオービタルの有人飛行です。同社はここ数年、宇宙旅行(スペースツーリズム)の商業運航を続けており、今回を含めて58人が搭乗してきました。これまでの乗客は、ビジネスや科学分野の人物、テレビ司会者、YouTuberなどが多くを占めています。チケットの価格は公表されていません。
6人の女性クルー、その顔ぶれ
今回の宇宙旅行は、ジェフ・ベゾス氏の婚約者でヘリコプターパイロット、元テレビジャーナリストでもあるローレン・サンチェスさんが他の5人を招待した形で実現しました。およそ10分間の全自動飛行に参加したのは次の6人です。
- ケイティ・ペリーさん:代表曲「Firework」や「California Gurls」で知られるポップスター。今回のクルーの中で最も知名度の高い存在です。
- ローレン・サンチェスさん:ヘリコプターパイロットで、元テレビジャーナリスト。ジェフ・ベゾス氏の婚約者としても知られ、今回の飛行の中心的役割を担いました。
- ゲイル・キングさん:米ニュース番組「CBS Mornings」の共同司会を務めるテレビ司会者。親友でトーク番組のレジェンドとして知られるオプラ・ウィンフリーさんも、テキサスで打ち上げを見守ったとされています。
- ケリアン・フリンさん:映画プロデューサー。エンターテインメント界から参加しました。
- アイシャ・ボウさん:元NASAエンジニアで、科学教育を広めることを目的とした企業を立ち上げた起業家。STEM(科学・技術・工学・数学)教育の重要性を訴えてきた人物です。
- アマンダ・グエンさん:他の恒星の周りを回る惑星(系外惑星)を研究してきた科学者で、現在は性暴力被害者の支援と権利擁護に取り組む活動家としても知られています。
クルーはいずれも、エンターテインメント、メディア、科学、社会活動など異なる分野で影響力を持つ人物たちです。宇宙への旅は、単なる娯楽にとどまらず、それぞれの分野での発信力を通じて、宇宙や科学に対する関心を広げる狙いもあると見られます。
1963年以来とされる、女性だけの宇宙クルー
今回のミッションは、1963年に歴史的な単独宇宙飛行を行ったワレンチナ・テレシコワ氏以来、初めての女性だけの宇宙クルーとされています。テレシコワ氏の飛行は、女性が宇宙へ進出する節目として特別な意味を持つ出来事でした。
それから約60年を経て、今度は民間の宇宙企業による、著名人中心の女性クルーが宇宙へ向かったことになります。今回は職業宇宙飛行士ではなく、あくまで「宇宙旅行の乗客」ですが、
- 宇宙分野での女性の可視性が高まること
- 科学・技術分野(STEM)を目指す若い世代へのロールモデルとなりうること
- ジェンダーの観点から宇宙開発・宇宙ビジネスを考えるきっかけになること
といった点で、象徴的なフライトだと受け止められています。
広がる宇宙旅行ビジネスと、その光と影
ブルーオリジンはここ数年、ニューシェパードを使い「数分間だけ宇宙空間を体験する」サブオービタル飛行を提供してきました。今回のような宇宙旅行は、一般の人が宇宙を体験する手段として注目される一方で、いくつかの特徴と課題もあります。
① ごく短時間でも「宇宙」を体験
- 高度100キロ超まで到達し、カーマンラインを越える
- 数分間の無重力や地球の地平線を体感できる
- 飛行自体は約10分間と非常に短い
地球周回軌道には乗らないため、一般にイメージされる「宇宙ステーションでの長期滞在」とは別ものですが、宇宙の入口に触れる体験としては大きな一歩とも言えます。
② 限られた人だけが参加できる現状
- チケット価格は公表されておらず、多くの人にとって手が届きにくい高額とみられる
- これまでの搭乗者58人の多くが、ビジネスや科学、メディアなどで成功を収めた人たち
- 宇宙旅行が「一部の著名人や富裕層の体験」にとどまるのか、それとも将来より広く開かれたものになるのかが問われています
宇宙旅行ビジネスは、技術開発や雇用、科学教育への波及効果など、ポジティブな側面を持つ一方で、「誰のための宇宙なのか」という問いも投げかけます。
私たちが考えたい3つのポイント
今回のブルーオリジンのニュースは、日本にいる私たちにとっても、次のような問いを投げかけています。
- 宇宙とジェンダー
女性だけのクルーが宇宙へ向かったことは、宇宙分野におけるジェンダーの多様性を考える材料になります。科学・技術の世界を目指す若い世代に、どんなメッセージを届けられるでしょうか。 - 著名人の発信力
ケイティ・ペリーさんのような世界的ポップスターやメディアでおなじみの顔が宇宙へ行くことで、宇宙や科学に興味を持つ人が増える可能性があります。一方で、話題性だけが先行しないために、どんなストーリーテリングが求められるかも考えどころです。 - 宇宙旅行の「公共性」
高額で限られた人しか参加できない宇宙旅行が、社会全体にどのような意味や価値をもたらすのか。科学教育や国際協力、環境問題への意識の高まりなど、公共的なメリットにつなげていけるかどうかが問われています。
宇宙旅行は、テクノロジーだけでなく、社会のあり方や価値観の変化とも深く結びついたテーマです。今回の「女性だけの著名人クルー」の打ち上げは、その議論を一段と加速させる出来事と言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com








