中国が地月空間DROに世界初の3基衛星コンステレーション、地月探査に新局面
2025年4月15日、北京で開かれた地月空間DRO探査研究学術シンポジウムで、中国の科学者たちが地球と月のあいだの宇宙空間に関する新たな成果を発表しました。地月空間のDRO(遠地点逆行軌道)に世界初となる3基の衛星コンステレーション(複数衛星が協調して観測や通信を行う仕組み)を構築し、この新しい宇宙空間の本格的な利用に向けた技術的な土台を固めたとしています。
世界初の「地月3基衛星コンステレーション」とは
今回の成果は、中国科学院が進める地月空間DRO探査に関するAクラス戦略パイオニアプロジェクトの一環として実施されました。3基の衛星は互いに測距(距離の測定)と通信を行うネットワークを形成しており、地球と月のあいだの広い空間を立体的に捉えるための基盤となります。
ミッションでは、次のような構成が採られました。
- 1基は高度約500キロメートルの太陽同期軌道に投入
- 残る2基は、地月空間のDROを目指して打ち上げ
打ち上げ異常からの「巧みな救出」
このミッションは、打ち上げ直後から順風満帆だったわけではありません。DROを目指していた2基の衛星は、当初の計画より低い高度、地球から約13万4千キロメートルの遠地点にしか到達できない異常事態に見舞われました。
さらに、セイルパネル(帆のような構造を持つパネル)にも損傷が発生していました。それでも、運用チームは短期間で救出計画を立て、限られた推進力と姿勢制御能力を最大限に活用。軌道制御を繰り返すことで、最終的に2基とも本来目指していたDROへの投入に成功しました。
打ち上げから約1年をかけて衛星を所定の軌道に導いたこのプロセスは、中国にとって地月空間での戦略的な優位性を確かなものにする一歩となったと位置づけられています。
地月空間DROとは何か
DRO(遠地点逆行軌道)は、地球から約31万〜45万キロメートル、月から約7万〜10万キロメートルという、地球と月のあいだの特定の範囲に形成される軌道です。地球と月、さらに太陽の重力が複雑に干渉する「カオス」のような空間の中で、DROは比較的安定したバランスが保たれる「絶妙な位置」とされています。
この軌道には、次のような利点があると説明されています。
- 低エネルギーで到達可能:太陽・地球・月の重力を上手に利用することで、従来の5分の1程度の燃料で進入できる
- 長期安定:一度投入すれば、数十年から100年近くにわたり安定して衛星を運用できる可能性がある
- 高い機動性:地月空間の周辺領域や月面など、近隣のさまざまな場所へ比較的少ないエネルギーで移動しやすい
つまりDROは、長期的に維持でき、なおかつフットワークも軽い「中継拠点」のような軌道といえます。今回の3基衛星コンステレーションは、そのDROを活用した初の本格的なネットワークであり、今後の地月探査や利用の可能性を試すための重要な実証の場となっています。
衛星どうしが追跡し合う、新しい運用スタイル
今回のミッションでは、軌道だけでなく運用方法にも新しさがありました。中国科学院・宇宙応用工程技術センターの研究員であるWang Wenbin氏は、この計画が国際的にも初めてとなる「衛星間追跡」を実現したと説明しています。
従来は、地上にある追跡局が衛星を追いかけ、位置や軌道を測定していました。今回の取り組みでは、その役割の一部を低軌道の衛星が担い、他の衛星を追跡・測位するという発想に切り替えています。いわば「地上局を宇宙に持ち上げた」ような形であり、地上局の見えない領域でも高精度な追跡が可能になると期待されています。
この衛星間追跡の技術は、将来の地月空間だけでなく、より遠い深宇宙での探査にも応用しやすいとみられており、新しい宇宙インフラのつくり方を示す試金石ともいえます。
地月空間という「新しいフロンティア」
地球と月のあいだの空間は、これまで「通り道」として見られることが多く、長期的に滞在する拠点としては十分に活用されてきませんでした。今回、中国のプロジェクトがDROを利用した世界初の3基衛星コンステレーションを実現したことで、この領域を「新しい宇宙空間」として本格的に使っていくための基盤づくりが一歩進んだかたちです。
地月空間に安定したインフラが整えば、将来の月探査ミッションの支援や、地球近傍の宇宙環境をより立体的にとらえる観測など、さまざまな展開が考えられます。今回の成果は、その長期的なビジョンに向けた起点として位置づけられ、今後の地月探査や深宇宙開発のあり方を静かに変えていく可能性を秘めています。
Reference(s):
China Pioneers Earth-Moon Exploration with First Three-Satellite Constellation
cctv.com








