世界痛風デーに学ぶ 痛風・高尿酸血症の14の誤解
毎年4月20日は、痛風と高尿酸血症への理解を広げる国際的な取り組みである「世界痛風デー」です。2025年も、高尿酸血症や痛風についての誤解が治療の遅れにつながっている現状を踏まえ、中国・北京中医薬大学Eastern Hospitalの専門医が、代表的な14の誤解を整理し、正しい向き合い方を示しました。
健康診断で「尿酸が高め」と言われたまま放置している人や、痛風発作の痛みに悩まされている人にとって、日常の生活や治療方針を見直すヒントになる内容です。
痛風と高尿酸血症の基礎:そもそも何が違うのか
誤解1:高尿酸血症=痛風である
専門医によると、高尿酸血症とは、血中尿酸値が男性で420µmol/L以上、女性で360µmol/L以上になっている状態を指します。一方、痛風は、尿酸が結晶となって関節などに沈着し、急性炎症を起こすことで診断されます。
高尿酸血症の人すべてが痛風になるわけではなく、痛風発作を経験するのはおよそ1割程度にとどまるとされています。とはいえ、放置してよいという意味ではありません。
誤解2:発作がなければ、高尿酸血症は治療しなくてよい
症状が出ていない「無症候性」の高尿酸血症であっても、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患(心臓の病気)、脳卒中、腎臓病、尿路結石などのリスクを高めることが指摘されています。
そのため、専門家は、生活習慣の見直しに加え、必要に応じて薬物療法も組み合わせて尿酸値を下げ、全身の健康を守ることを勧めています。
薬と数値に関する誤解:やめ時・始め時・目標値
誤解3:尿酸を下げる薬は肝臓や腎臓を強く傷める
尿酸降下薬として承認されている薬は、安全性について厳しい試験を経ています。もちろん副作用の可能性はゼロではありませんが、慢性的な高尿酸血症が長期的に肝臓や腎臓に与えるダメージと比べると、管理しやすいものとされています。
専門医は、定期的な血液検査などのモニタリングを行いながら適切に薬を使用すれば、メリットがリスクを大きく上回ると説明しています。
誤解4:尿酸値が正常になったら薬は中止してよい
痛風は「一度治せば終わり」の病気ではなく、長期的な代謝の異常による慢性疾患です。多くの患者は、目標値を維持するために長期の尿酸降下療法が必要になります。
少なくとも2〜3年ほど安定してコントロールできている場合、医師の判断で少しずつ減量を検討することはありますが、自己判断で急に中止することは再発の原因となります。
誤解5:急性痛風発作のときに尿酸を下げる薬を始めるべきだ
激しい関節の痛みを伴う急性痛風発作では、最優先は炎症と痛みを抑える治療です。具体的には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、コルヒチン、ステロイドなどが用いられます。
この急性期に新たに尿酸降下薬を開始したり、急に増量したりすると、かえって発作を悪化させてしまうことがあります。急性期が落ち着いてから、低用量からの開始・再開を検討することが推奨されています。
誤解6:尿酸値は「正常範囲」に入ればどこでもよい
尿酸の目標値は、患者の状態によって変わります。専門家が示している目安は次のとおりです。
- 発作のない高尿酸血症:420µmol/L以下
- 痛風患者:360µmol/L以下
- 痛風結節(こぶ)や腎結石がある場合:300µmol/L以下
自分がどのレベルを目指すべきかは、合併症の有無も含めて医師と相談することが大切です。
誤解7:痛みさえ取れれば、尿酸値は気にしなくてよい
「痛みがなければ大丈夫」という考えは危険です。痛風発作の痛みを抑えることは第一歩に過ぎず、長期的には尿酸値をコントロールして、再発や合併症を防ぐことがゴールになります。
誤解8:尿酸は低ければ低いほどよい
尿酸は、体内で抗酸化作用も果たしており、極端に低すぎることにも注意が必要です。専門家は、120µmol/L未満まで下げると、神経系の疾患や腸内環境の乱れなどのリスクが高まる可能性を指摘しています。
大切なのは「適切な範囲」でコントロールすることであり、むやみにゼロに近づけることではありません。
運動と生活習慣:やりすぎより「ほどほど」を
誤解9:激しい運動と大量の汗で尿酸を外に出せる
適度な運動は、痛風や高尿酸血症の管理に役立ちます。週150分程度の有酸素運動(早歩きなど)は、体重管理や心血管の健康にも良い影響を与え、発作の頻度を減らす可能性があります。
一方で、極端に激しい運動や脱水を伴うような活動は、体内の尿酸濃度を高め、かえって発作を引き起こす引き金となることがあります。こまめな水分補給と「やりすぎない」運動強度がポイントです。
誤解10:炭酸水と低プリン食だけで痛風は予防できる
食事からのプリン体は、体内の尿酸の約2割に過ぎず、残り8割は体の中で自然に作られています。炭酸水や重曹水の「アルカリ化効果」も、ごく限定的なものにとどまります。
そのため、痛風や高尿酸血症の予防・治療には、次のような総合的な管理が必要だと専門家は強調します。
- 適切な薬物療法(必要な場合)
- 体重管理と適度な運動
- 十分な水分摂取
- バランスの取れた食事
食事に関する誤解:完全禁止ではなく「選び方」と「量」
誤解11:痛風になったら肉は一切食べてはいけない
肉を完全に断つ必要はありません。専門家は、脂身の少ない鶏肉や淡水魚など、プリン体が中程度の食品であれば、適量を守れば摂取可能だと説明します。
一方、赤身肉の食べ過ぎは控え、内臓(レバーなど)やエビ・貝類などの魚介類は避けるほうが望ましいとされています。1回の食事での目安は約100グラム程度で、茹でる・蒸すなどの調理法が推奨されます。
誤解12:野菜と果物はどれだけ食べても大丈夫
野菜や果物は健康にとって重要ですが、何でも無制限に食べてよいわけではありません。アスパラガス、キノコ、豆類など、比較的プリン体が多い野菜もあります。
また、ドリアンなどフルクトース(果糖)が多い果物を過剰に摂ると、尿酸値が上がる要因になります。さまざまな種類をバランスよく、量を意識して食べることが大切です。
誤解13:ビールだけがダメで、蒸留酒なら安心
アルコールであれば、種類に関係なく尿酸値を上げる作用があります。「ビールは禁止だが、白酒や焼酎は安全」という考えは誤りです。
理想的には禁酒が望ましいとされますが、どうしても飲む場合には、特別な機会に少量の赤ワインにとどめるなど、厳格な量の管理が必要だとされています。
誤解14:大豆製品と乳製品は避けたほうがよい
加工された豆腐や湯葉などの大豆製品では、製造工程でプリン体の多くが取り除かれています。低脂肪の乳製品と同様に、プリン体が比較的少なく、良質なたんぱく質源として活用できます。
さらに、低脂肪乳製品や大豆製品は、尿酸の排泄を促す可能性もあるとされ、痛風や高尿酸血症の患者にとって、むしろ取り入れたい食品といえます。
専門家が勧める「痛風・高尿酸血症」との付き合い方
こうした14の誤解を踏まえ、北京中医薬大学Eastern Hospitalの専門医は、次のようなポイントを強調しています。
- 定期的に尿酸値をチェックし、数値の推移を把握する
- 痛みだけでなく尿酸値そのものを中長期的にコントロールする
- 薬は自己判断で中断・変更せず、医師の指示に従う
- 食事は「完全禁止」ではなく、選び方と量、調理法に気を配る
- 適度な運動と十分な水分摂取、体重管理を心がける
- アルコールはできるだけ控え、飲む場合も量と頻度を厳しく管理する
痛風や高尿酸血症は、一度の治療で終わる病気ではなく、生活全体を見直しながら長く付き合っていくべき「代謝の病気」です。世界痛風デーをきっかけに、自分や家族の生活習慣を振り返り、専門家のアドバイスをもとに、無理のない改善から始めてみることが求められています。
Reference(s):
Experts Debunk 14 Common Gout Misconceptions on World Gout Day
bjnews.com.cn








