AIバイオセンサーPlantVoice 高性能「つまようじ」が変える持続可能な農業 video poster
気候変動や土壌劣化、資源不足に直面する農業の現場で、「つまようじ」のような小さなバイオセンサーが、持続可能な農業の切り札になりうるのか注目されています。植物の内部信号をAIが読み解き、水や肥料、農薬のむだを減らす狙いです。
農業が抱える「三重の脅威」と新しいアプローチ
世界の農業は今、気候変動、土壌の劣化、そして水や肥料などの資源不足という「三重の脅威」にさらされています。何千年も作物を育ててきたにもかかわらず、植物がストレスにどう反応するのか、栄養がどのように体内を巡るのかといった基本的な部分について、まだ分かっていないことも多いままです。
そうしたなか、作物の健康状態をリアルタイムで解析し、そのデータを直接農家のスマートフォンに送ることができる新しいツールが開発されています。狙いは、水や肥料、農薬といった貴重な資源の使用量を減らしつつ、収量や品質を守ることです。
植物に挿す「つまようじ」型バイオセンサー PlantVoice
このツールの名前はPlantVoice。見た目は「つまようじ」のような細いバイオセンサーで、植物の内部に直接挿し込み、そのバイタルサイン(生命信号)を読み取ります。
センサーは、植物の体内で起きている化学的・生理的な変化を検知します。そこから得られた膨大なデータを人工知能(AI)が解析し、それぞれの信号がどのようなストレスや原因に対応しているのかを結び付けていきます。
PlantVoiceの共同創業者であるマッテオ・ベッカテッリ氏は、この仕組みを「植物に心電図を取るようなもの」と表現します。センサーが樹液などを通じて健康状態の変化を捉え、AIが「植物の心臓専門医」のような役割を果たしながら、その結果を分かりやすいアドバイスに翻訳するイメージです。
スマホに届く「異変の前ぶれ」
解析されたデータと提案内容は、農家のスマートフォンのアプリに直接送られます。これにより、葉がしおれる、色が変わるといった見た目のトラブルが現れる数日前の段階で、植物の状態変化に気づける可能性があります。
たとえば、ある区画だけ水分ストレスが高まっている兆候が出ていれば、そこに絞って灌漑を強化する、といったポイントを絞った対応がしやすくなります。逆に、肥料や農薬が十分に効いているサインが見えれば、過剰な投入を避ける判断材料にもなります。
水・肥料・農薬を最大2割強カット?
PlantVoiceによれば、こうしたリアルタイムの更新情報を活用することで、水や肥料、農薬の使用量を最大5分の2、つまり約40%まで削減できる可能性があるといいます。
広大な畑をイメージすると、そのインパクトはよりはっきりします。ベッカテッリ氏は「200エーカーの畑があり、1エーカーごとに何千本もの作物が植わっていると想像してほしい」としたうえで、「その水使用量の最大40%を節約できる技術があれば、影響は計り知れない」と強調します。
水や肥料、農薬の無駄が減れば、コスト削減だけでなく、地下水や周辺環境への負荷も抑えられます。持続可能な農業や環境保全を重視する国際社会にとっても、注目すべきテクノロジーといえそうです。
「植物の声」をどう生かすか
植物の内部信号を可視化し、AIで読み解くというアプローチは、農業の現場に新しい選択肢をもたらしつつあります。もし現場レベルで広く活用されるようになれば、
- 限られた水資源をどこに優先的に配分するか
- 肥料や農薬を最小限に抑えつつ収量を守るにはどうすべきか
- 見た目では分からないストレスを早期にどう発見するか
といった問いに対して、データに基づく新しい解決策を提示してくれるかもしれません。
2025年の今、気候変動への適応と食料安全保障は、国際ニュースでも繰り返し取り上げられる重要テーマです。小さな「つまようじ」型センサーが、その大きな課題にどこまで貢献できるのか。今後の展開を静かに見守りつつ、自分たちの食や農業のあり方を考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
RAZOR: Can a high-tech 'toothpick' make farming more sustainable?
cgtn.com







