米国で麻しん再拡大 トランプ政権の対応に不安広がる世論調査
米国で麻しん(はしか)の大規模な流行が続くなか、最新の世論調査では、トランプ政権の対応力に不安を感じる人が多い一方で、麻しんワクチンそのものへの信頼は依然として高いことが分かりました。
世論調査が示す「政権不信」と「ワクチン信頼」
ロイター/イプソスが今年実施した全国世論調査によると、現在進行中の麻しん流行への対応について、トランプ政権が「責任ある対応をしている」と答えたのは全体の31%にとどまりました。
一方、「そうは思わない」と回答した人は40%に上り、残る人たちは「分からない」もしくは無回答でした。政権の危機対応能力を十分に信頼していない層が少なくないことがうかがえます。
また、「現政権が今回の流行を食い止め、麻しんが再び一般的な病気になるのを防げる」と考えている人は32%にとどまり、多くの人が先行きに懸念を抱いていることも明らかになりました。
今回の調査は、全米の成人1,163人を対象に行われ、誤差の範囲はプラスマイナス3ポイントとされています。
25年ぶりの規模 なぜ麻しんが再び広がっているのか
米国は現在、過去25年で最大となる単一の麻しん流行に直面しており、先週には累計症例数が1,000件を超えました。麻しんは発熱や発疹を引き起こす非常に感染力の強いウイルス性疾患で、合併症により命を落とすケースもあります。
麻しん、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、風疹に対する「MMRワクチン」は、2回接種すれば97%の感染を防ぐ効果があるとされ、高い接種率によって米国では2000年に麻しんが「排除状態」と宣言されました。
それにもかかわらず、近年はワクチン懐疑論や誤情報の拡散などの影響で、子どものワクチン接種率が低下していると専門家は見ています。今回の大規模流行は、その「すき間」をウイルスに突かれた形だと指摘されています。
MMRワクチンへの信頼は依然高水準
ワクチンそのものへの信頼は、依然として高い水準にあります。最新のロイター/イプソス調査では、回答者の86%が「MMRワクチンは子どもにとって安全だ」と答えました。これは、新型コロナウイルス流行初期の2020年5月に実施された同様の調査(84%)からわずかに上昇しています。
一方で、「安全ではない」と考える人も増えており、今回の調査では13%と、5年前の10%から上昇しました。少数派ではあるものの、ワクチンに不信感を抱く層がじわじわと広がっている様子が読み取れます。
「子どもにワクチンを打つ義務がある」それでも割れる世論
保護者の責任については、多くの人が明確な意見を持っています。調査では、回答者の76%が「すべての親には、子どもに麻しんワクチンを接種させる義務がある」という考えに賛成しました。共和党支持者と民主党支持者の双方で多数が賛同しており、党派を超えたコンセンサスがあることが分かります。
しかし、共和党支持者の約4人に1人は、この「義務」という考え方に反対しており、個人の自由や選択を重視する意識も根強いことがうかがえます。
麻しん流行そのものへの不安は、回答者の55%が「懸念している」と答えました。この割合は、失業(解雇)への不安と同程度であり、一方で、80%が懸念していると答えた「インフレ(物価上昇)」には及びません。生活コストの問題が最大の関心事である一方、感染症リスクも無視できない存在として意識されている構図です。
接種率の低下と「集団免疫」の崩れ
集団としての免疫を保つには、高いワクチン接種率が必要だとされています。米国疾病対策センター(CDC)によると、麻しんに対して社会全体を守るには、おおむね95%以上の接種率が一つの目安とされます。
2019〜2020年度の米国の幼稚園児では、MMRワクチンを2回完了していたのが95.2%と、この目安をわずかに上回っていました。しかし、2023〜2024年度には92.7%まで低下しました。
この数ポイントの低下が、地域によっては大きな意味を持ちます。接種率が十分に高い地域ではウイルスが広がりにくい一方、接種率が低い「ポケット」があると、そこから大規模な流行が生じる可能性が高まるからです。
テキサス州ゲインズ郡 低接種地域が「震源地」に
今回の流行の震源地のひとつとなっているのが、テキサス州ゲインズ郡です。同郡ではこれまでに700人以上が感染し、ワクチンを接種していなかった子ども2人が亡くなっています。
ゲインズ郡の幼稚園児でMMRワクチンを2回とも接種しているのは82%にとどまり、全米平均よりも大きく下回っています。95%という目安からは大きく離れており、こうした「免疫の穴」が悲劇的な結果につながったとの見方が出ています。
トップのメッセージが与える影響
感染症の専門家たちは、保健福祉長官ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の発言が、ワクチンへの姿勢に影響を与えかねないと懸念しています。ケネディ氏は今年2月に米国の最高位の保健当局者に就任しましたが、麻しんの重症度やワクチンの安全性・有効性について、受け手によっては「メッセージが揺れている」と受け止められかねない発言もしてきたと指摘されています。
一方でケネディ氏自身は、ワクチンに反対しているわけではなく、麻しんを防ぐ最も良い方法はワクチン接種だと明言しています。それでも、トップのメッセージがわずかにでも曖昧に聞こえると、もともと不安を抱えている人々の懸念を強め、ワクチン接種のためらいを助長する可能性があると専門家は見ています。
これから問われる「信頼」と危機対応
今回の世論調査からは、米国の多くの人が麻しんワクチンの有効性と安全性を信頼し、子どもへの接種を「親の義務」と考えている一方で、トランプ政権の対応力については十分な信頼を寄せていないという、ねじれた構図が浮かび上がります。
感染症対策では、科学的なワクチンの効果とともに、政府への信頼や情報発信のあり方が、接種行動を左右する大きな要因になります。今回の麻しん流行と世論の動きは、「科学への信頼」と「政治への信頼」のギャップが生むリスクを、あらためて突きつけているとも言えそうです。
日本を含む各国にとっても、ワクチン政策と危機時のコミュニケーションのあり方を考えるうえで、注目すべき事例だと言えるでしょう。
Reference(s):
Americans worried about Trump's handling of measles outbreak: poll
cgtn.com








