宇宙の寿命は10^78年?ホーキング放射が描き直す「終わり」のシナリオ
宇宙の「終わり」は、これまで考えられていたよりもずっと早く訪れるかもしれません。ラドバウド大学の研究者3人が行ったホーキング放射に関する最新計算によると、宇宙に残る最後の星の残骸が消え去るまでの時間は約1078年と見積もられました。これは、従来よく引用されてきた約101100年という途方もない数字から、大きく更新された結果です。
この研究は、宇宙論と素粒子物理学を扱う国際誌「Journal of Cosmology and Astroparticle Physics」に掲載されており、宇宙の最終的な姿をめぐる議論に新たな視点を投げかけています。
新研究が示した「宇宙の終焉」タイムライン
今回の日本語で読む国際ニュースのポイントを、まず整理しておきます。
- 宇宙の終焉(最後の恒星残骸が消えるまで):約1078年
- 従来の代表的な推定:約101100年
- 主な要因:ホーキング放射とよく似た「ホーキング様放射」による白色矮星などの蒸発
- 月や人間がホーキング様放射だけで消える時間:約1090年
研究チームを率いたハイノ・ファルケ氏は、「宇宙の究極の終焉はこれまで考えられていたよりもずっと早くやってくる。しかし、それでも途方もなく長い時間がかかる」とコメントしています。
ホーキング放射とは何か
今回の国際ニュースの鍵となるのが「ホーキング放射」です。これは物理学者スティーブン・ホーキングが提唱した理論で、ブラックホールの外側から黒体放射と呼ばれる熱的な放射が出てくるというものです。
量子力学の効果により、ブラックホールの周囲では粒子と反粒子の対が生まれます。その一方がブラックホールに落ち込み、もう一方が外へ逃げると、結果としてブラックホールはごくわずかずつエネルギーを失い、「蒸発」していくと考えられています。この非常にゆっくりしたエネルギーの放出がホーキング放射です。
ブラックホールだけでなく中性子星や白色矮星も
ラドバウド大学の研究チームは2023年、ブラックホールだけでなく、中性子星などの高密度な天体もホーキング放射に似た仕組みで「蒸発」し得るとする論文を発表しました。
この論文の公表後、「では実際に蒸発しきるまでどれくらい時間がかかるのか」という質問が多く寄せられました。今回発表された新しい研究は、その問いに正面から取り組んだ成果です。
白色矮星が消えるまで1078年
研究チームは、ホーキング様放射の効果だけを考慮して、宇宙で最も長く生き残るとされる天体の一つ、白色矮星が完全に消えるまでの時間を計算しました。その結果が約1078年です。
1078年というのは、「1」の後ろにゼロが78個並ぶ時間です。これでも現在の宇宙の年齢(約138億年)と比べると桁違いに長いのですが、以前よく示されていた101100年(ゼロが1100個)という推定と比べると、劇的に短くなっています。
これまでの推定は、白色矮星が量子トンネル効果など別の過程でゆっくり崩壊することを主に想定していました。新しい計算では、そこにホーキング様放射という新たな「抜け道」が加わったことで、宇宙の終焉までの時計の針が大きく進んだ形になります。
月や「人間」もホーキング様放射で蒸発?
研究者たちは、身近な例として月や人間がホーキング様放射だけで蒸発するまでにどれくらい時間がかかるかも計算しました。その結果は約1090年です。
1090年は、1078年よりさらに桁が大きく、「1」の後ろにゼロが90個並びます。想像するのがほぼ不可能なスケールですが、研究チームは、実際には他の物理的な過程によって、月や人間はそれよりもはるかに早く存在しなくなるだろうと指摘しています。つまり、この数字はあくまで「ホーキング様放射だけが働いた場合」の理論的な上限値と言えます。
私たちの今の暮らしと、遠い宇宙の未来
1078年や1090年という桁外れの時間は、日常感覚とはまったくかけ離れています。私たちの寿命や地球文明の将来を考える上で、今回の結果が直接の影響を与えることはありません。
それでも、このような研究にはいくつかの重要な意味があります。
- 宇宙の最終的な姿や「熱的死(すべてが冷えきった状態)」への道筋を、より正確に描き出せる
- 重力と量子力学をつなぐ物理法則を検証する一つの手がかりになる
- 「時間」や「終わり」をどう捉えるかという哲学的な問いを、科学的な枠組みの中で考え直すきっかけになる
宇宙の終焉が101100年から1078年へと「早まった」とはいえ、それは人類や地球の未来をめぐる議論とは別次元の、ほとんど永遠に近い時間です。ただ、こうした超長期の視点を知ることは、私たちが今いる瞬間の貴重さをあらためて意識することにもつながります。
「読みやすいのに考えさせられる」宇宙ニュースとして
今回のラドバウド大学の研究は、宇宙論の専門家だけでなく、宇宙や物理学に関心を持つ一般の読者にとっても興味深いニュースです。宇宙の寿命をめぐる数字が大きく書き換えられたことで、「宇宙はなぜ存在しているのか」「終わりがある宇宙をどうイメージすればよいのか」といった根源的な問いを、あらためて考えるきっかけになります。
ニュースを通じて遠い未来の宇宙に思いをはせることは、日々の議論やSNSでの会話にも、新しい視点をもたらしてくれそうです。
Reference(s):
Study shows universe's decay may be faster than previously estimated
cgtn.com







