トランプ政権高官も利用の通信アプリ侵入 米政府データ流出が拡大
トランプ政権で国家安全保障担当補佐官を務めたマイク・ウォルツ氏も利用していた通信アプリへの侵入が、当初の想定より広い範囲の米政府関係者のやり取りをさらしていたことが、ロイター通信の分析で分かりました。政府高官の連絡インフラの脆弱さを改めて浮き彫りにする事案です。
何が起きたのか
ロイターによると、2025年12月初旬に発覚した通信サービス「TeleMessage」への不正アクセスで、ハッカーはウォルツ氏のほか、多数の米政府関係者のメッセージにアクセスしていました。TeleMessageは、暗号化メッセージアプリ「Signal」を業務向けに管理するために使われているサービスで、これまで政府や金融業界以外ではあまり知られていませんでした。
今回、ハッキングデータの一部を公開したのは、ハッキングや内部告発で得られた文書を公益目的で保存・公開している米非営利団体「Distributed Denial of Secrets」です。同団体が保管していた漏えいデータをロイターが分析した結果、少なくとも60人以上の米政府ユーザーがTeleMessageを通じてやり取りしていたことが判明しました。
そこには、災害対応担当者、税関職員、複数の米外交官、ホワイトハウスのスタッフとみられる人物、さらにはシークレットサービス(大統領警護などを担う組織)の関係者のものとみられる情報が含まれていました。
内容より怖い「メタデータ」の流出
ロイターは漏えいデータ全体の真正性までは確認できていないものの、少なくとも複数のケースで、流出した電話番号が当人のものと一致することを確認したとしています。また、ウォルツ氏や他の閣僚級高官の具体的なチャット内容は見つかっておらず、明確に機微な内容も確認されていません。
それでも、いくつかのチャットには、政府高官の移動に関する情報が含まれていました。例えば「POTUS | ROME-VATICAN | PRESS GC」と名付けられたグループでは、ローマとバチカンでのイベント運営に関わるやり取りが行われていたとみられます。別のグループでは、米政府関係者のヨルダン訪問に関する情報が話し合われていました。
元米国家安全保障局(NSA)で現在はサイバーセキュリティ企業Hunter Strategyの研究開発担当副社長を務めるジェイク・ウィリアムズ氏は、たとえメッセージ本文が無害に見えても、「誰が」「いつ」「どのグループで」やり取りしていたかというメタデータ自体が、対情報活動(スパイ対策)上の重大なリスクになると指摘します。ウィリアムズ氏は「コンテンツがなくても、それ自体が最高レベルのインテリジェンスアクセスだ」と述べています。
TeleMessageとSignalをめぐるこれまでの緊張
TeleMessageは、もともと限られた専門的な領域で使われてきたサービスでしたが、2025年4月30日に撮影されたロイターの写真で、ウォルツ氏が閣議中にTeleMessage版Signalを確認している様子が報じられ、一気に注目を集めました。
ウォルツ氏のSignal利用は今回が初めて話題になったわけではありません。過去には、イエメンへの空爆についてトランプ政権の閣僚らとリアルタイムで協議していたSignalグループに、誤って著名記者を招き入れてしまい、批判を浴びたこともありました。暗号化メッセージアプリの「安全性」と、運用ミスがもたらすリスクが同時に露呈した出来事でした。
トランプ政権の情報セキュリティへの問い
ロイターは、特定された政府関係者全員にコメントを求めましたが、本人確認に応じた人もいれば、回答を控えたり所属機関に問い合わせるよう求めたりした人もいたといいます。現時点で、米政府として包括的な説明は十分になされていません。
今回のTeleMessage侵入は、トランプ政権のデータ保護体制や、政府高官が日常的に利用する通信手段のあり方に、改めて疑問を投げかけています。特に、
- 暗号化アプリを業務利用する際のガバナンス(運用ルール)
- メタデータを含む通信記録の保護
- 外部サービスに依存した際のリスク管理
といった課題が浮き彫りになりました。
日本の私たちにとっての示唆
今回の問題は米政権の話に見えますが、日本を含むあらゆる国や組織に共通する教訓を含んでいます。スマートフォンでメッセージアプリを使うことは、官民を問わず当たり前になりましたが、その便利さの裏側には、次のようなリスクがあります。
- メッセージ本文だけでなく、「誰と」「いつ」連絡したかも機密情報になりうる
- 安全だとされるアプリでも、その管理サービスや設定が弱いと狙われる
- リアルタイムで危機対応や外交調整を行うほど、運用ミスの代償が大きくなる
ビジネスパーソンや公的機関で働く人にとっても、業務用チャットやメッセージアプリの「設定」と「運用ルール」を見直すきっかけになるニュースと言えるでしょう。国際ニュースに目を向けることは、自分たちの足元の情報セキュリティを考え直すヒントにもなります。
Reference(s):
Breach of app used by Trump aide exposed more govt data than estimated
cgtn.com








