SpaceXスターシップが9回目の試験打ち上げ 「部分的成功」と残った課題
SpaceXの超大型ロケット「スターシップ」が、無人での9回目の試験打ち上げに挑み、前回2回を上回る飛行に成功しましたが、帰還や貨物ドアの制御などに課題も残りました。
テキサスから9回目の無人試験打ち上げ
米民間宇宙企業SpaceXが開発する次世代ロケット「スターシップ」が、米テキサス州南部ボカチカ近郊の発射基地「スターベース」から無人で打ち上げられました。今回で9回目の試験で、直近2回の飛行が爆発で途中終了していたのに対し、今回はそれらを大きく上回る高度と飛行時間を達成しました。
打ち上げは現地時間火曜日午後7時36分(米東部時間、協定世界時23時36分)ごろに行われ、SpaceXが配信したライブ映像には、複数のラプターエンジンが点火し、炎と水蒸気を噴き上げながら巨大な機体が夕空へと上昇していく様子が映し出されました。
スターシップは、上段の宇宙船「スターシップ」と、下段の超大型ブースター「スーパー・ヘビー」からなる2段式ロケットで、イーロン・マスク氏が掲げる「人類を複数の惑星に広げる」構想の中核を担う機体と位置づけられています。
分離までは順調も、ブースターと機体に相次ぐトラブル
今回のフライトでは、全長約71メートルの第1段ブースター「スーパー・ヘビー」が離陸から数分後に予定どおり分離し、上段のスターシップが単独で上昇を続けました。SpaceXは今回初めて、過去に飛行したスーパー・ヘビーブースターを再利用して打ち上げを行い、再利用性を示すことを狙いました。
分離後、ブースターは地球へと帰還する降下フェーズに入りましたが、SpaceXの管制チームは降下途中で通信途絶に見舞われました。当初は制御された着水を目指していましたが、ブースターは予定どおりのスプラッシュダウンには至らず、海上に落下したとみられています。
一方、上段のスターシップは打ち上げから約9分後、計画通りの準軌道(サブオービタル)軌道に到達しました。しかし、搭載物の放出を想定したペイロードドア(貨物室ハッチ)が開かず、模擬衛星群を放出できない不具合も発生しました。
計画では、スターシップが約90分未満の実験飛行を終え、インド洋への制御された降下と着水を行うシナリオでした。
しかし打ち上げから約30分後、SpaceXはスターシップの姿勢制御が失われ、機体が回転しながら再突入に向かっていると説明しました。ライブ配信の解説者は「大気圏再突入に向けて望んでいた向きにはなっていない。最後まで無事に降下できる可能性はかなり低い」と述べ、予定通りの着水は難しいとの見方を示しました。
前回は爆発で中止 規制当局も注視
今回の試験に先立ち、米連邦航空局(FAA)はわずか4日前にスターシップの最新飛行を認可する打ち上げライセンスを付与しました。これは、直近の失敗を受けて約2カ月にわたり実施された飛行中の異常事案の調査が終了したことを意味します。
スターシップの前回2回の試験飛行は、1月と3月に実施されましたが、いずれも上昇中に機体が空中分解し、飛行はごく短時間で終了しました。この際、破片がカリブ海の一部海域に降り注ぎ、周辺では多数の商業航空便に迂回などの影響が出たとされています。
こうした経緯から、FAAは今回の打ち上げに際し、上昇経路に沿った破片危険区域を従来より広く設定しました。安全確保と技術実証をどう両立させるかは、スターシップだけでなく民間宇宙開発全体にとっての重要な課題になっています。
「部分的成功」が意味するもの スターシップ計画の現在地
今回の9回目の試験は、計画していた着水や貨物ドアの作動に失敗した一方で、以下のような成果もありました。
- 再利用ブースターを用いた打ち上げを初めて実施
- ブースターと上段の分離に成功
- スターシップが予定された準軌道軌道に到達
- 前回2回の試験よりも長時間・長距離の飛行データを取得
スターシップは、従来のロケットよりも大幅な大型化と完全再利用を目指して設計されており、打ち上げコストを大きく引き下げると期待されています。その背景には、イーロン・マスク氏が掲げる「人類を複数の惑星に居住させる」という長期構想があります。
一方で、巨大な機体を安全かつ確実に帰還させる技術、軌道上での貨物運用、周辺環境への影響を抑えた運用体制など、多くの課題が依然として残されています。今回の飛行データは、こうした課題の洗い出しと改良に活用されるとみられます。
これからの注目ポイント
スターシップ計画は長期プロジェクトであり、今回も「一度で完成」を目指すのではなく、試験を重ねながら改良していくアプローチが取られています。今後の動きを理解するうえで、次の点が焦点となりそうです。
- 今回の姿勢制御喪失やペイロードドア不具合の原因分析と対策
- ブースターの制御着水に向けたエンジン制御や誘導技術の改良
- FAAなど規制当局との調整のあり方と、安全基準の更新
- 頻度の高い試験飛行を続けながら、周辺地域や航空路への影響をどう抑えるか
- 将来的な有人飛行や大規模衛星打ち上げに向けたロードマップの具体化
宇宙開発の現場では、「成功か失敗か」という二択ではなく、飛行のたびに何を学び、次にどうつなげるかが重視されます。スターシップの9回目の試験は、その意味で「前進と課題」が同時に見えたフライトでした。今後の試験で、どこまで安全性と再利用性を高められるのか。民間主導で進む宇宙開発の行方を考えるうえでも、引き続き注目していきたい動きです。
Reference(s):
SpaceX Starship launches on ninth test flight after last two blew up
cgtn.com








