アイスランドの目覚めた火山:レイキャネス半島と地熱エネルギー最前線 video poster
アイスランド南西部のレイキャネス半島で続く火山活動が、地球の内部で何が起きているのか、そしてエネルギーと防災の未来を考えるうえで重要な手がかりを与えています。
「火と氷の島」を形づくる火山の力
火山は、地球表面のおよそ8割を形づくってきたとされる、最も強力な自然の力の一つです。国際ニュースでもおなじみのアイスランドは、その象徴的な存在です。
「火と氷の島」と呼ばれるアイスランドは、ユーラシアプレートと北米プレートが離れていく「中央海嶺(ミッド・アトランティック・リッジ)」の上に位置しています。このプレートの裂け目に沿って、さまざまなタイプの噴火が繰り返されてきました。
800年の眠りから覚めたレイキャネス半島
最近の火山活動の中心となっているのが、首都レイキャビク近くのレイキャネス半島です。この地域では「レイキャネス火炎」と呼ばれる一連の噴火が1240年に終わって以降、およそ800年間、目立った活動がありませんでした。
ところが2021年初頭、この半島が再び目を覚まします。それ以来、地域では11回の噴火が記録され、アイスランドの火山研究者たちの最大の関心事となっています。
溶岩サンプルが語る「地下で何が起きているか」
噴火が始まると、アイスランド大学の火山学者サイモン・マシューズ教授らのチームが動き出します。流れ出る溶岩だけでなく、過去の噴火で固まった岩石も慎重に採取します。
こうして集めたサンプルは研究室に運ばれ、電子顕微鏡で観察され、細かい粉末にされ、化学的に溶かされて分析されます。岩石に含まれる鉱物や元素の組成を調べることで、地表からは見えない火山システムのふるまいを読み解くことができます。
どのようなマグマが、どのくらいのスピードで、どの深さから上がってきたのか。こうした情報は、噴火の仕組みの理解と将来の活動予測に欠かせません。
地熱大国アイスランドと「偶然の発見」
アイスランドは、豊富な地熱資源に支えられた国でもあります。家庭の約9割が地熱で暖房をまかない、電力の4分の1以上が地熱発電で賄われています。
現在の噴火エリアのすぐそばにあるHSオルカ社のスヴァルツセンギ地熱発電所では、偶然の発見がありました。この発電所で得られた観測データが、最近の一連の火山活動を予測するうえで決定的なヒントになったとされています。
エネルギーインフラとしての地熱発電が、同時に火山監視の「観測装置」としても機能しうることを示す事例といえます。
マグマ溜まりへ直接到達を目指す大胆プロジェクト
アイスランド北部では、さらに野心的な計画が進んでいます。「クラフラ・マグマ・テストベッド」と呼ばれるプロジェクトです。
この計画は、世界で初めてマグマ溜まりに直接ボーリングを行うことを目指しています。目的は二つあります。
- 火山の内部をより正確に監視し、災害リスクを減らすこと
- マグマの極端な高温を利用した、次世代の地熱発電の可能性を切り開くこと
とはいえ、マグマという極限環境に耐える掘削技術や材料を用意するのは、容易なことではありません。工学的な課題は大きく、慎重な検証と段階的な試験が欠かせません。
それでも、もしこの取り組みが成功すれば、アイスランドだけでなく世界各地で、より安全で持続可能なエネルギーシステムづくりに応用される可能性があります。
火山の国から見える「エネルギーと共生」のヒント
2021年以降のレイキャネス半島の火山活動と、その周辺で進む地熱発電・マグマ掘削の取り組みは、いくつかの問いを私たちに投げかけています。
- 自然のエネルギーをどこまで安全に利用できるのか
- 防災とエネルギー開発をどう両立させるのか
- 極端な環境を研究することが、より広いエネルギーや環境の議論にどうつながるのか
火山研究は、単に噴火のメカニズムを解き明かすだけでなく、エネルギー政策や都市計画など、社会の将来像を考えるうえでも重要なテーマです。アイスランドの「火山の目覚め」は、遠い国のニュースであると同時に、私たちの未来の選択に静かに影響を与える出来事でもあります。
Reference(s):
cgtn.com








