中国とイスラエルの研究チーム、新しい遺伝子編集で作物改良に挑む
イスラエルと中国の研究チームが、現在広く使われているCRISPR遺伝子編集を拡張し、大量の作物遺伝子を一度に編集できる新しい手法を開発しました。気候変動や世界的な食料需要の高まりに向き合う上で、作物づくりの発想を大きく変える可能性があります。
中国とイスラエルの共同研究で生まれた新手法
イスラエルのテルアビブ大学は、声明の中で、中国科学院大学、イスラエルのアグリテック企業NetaGenomiXと共同で、新しい遺伝子編集技術を開発したと発表しました。これは、既存のCRISPR手法の規模と効率を高めることを狙った国際共同研究です。
参加した主な機関
- イスラエル・テルアビブ大学(TAU)
- 中国科学院大学
- イスラエルのアグリテック企業 NetaGenomiX
研究成果は、国際的な科学誌であるNature Communicationsに掲載されており、農業やバイオテクノロジー分野の新たな応用が期待されています。
CRISPRの限界だった遺伝子のだぶり問題
今回の国際ニュースの中心にあるのは、CRISPRという遺伝子編集の方法です。現在広く使われている一方で、従来のCRISPRには二つの大きな課題がありました。
- 一度に編集できる遺伝子の数に限りがあること
- 遺伝子の機能が重なり合う遺伝的冗長性の問題があること
遺伝的冗長性とは、似た働きを持つ複数の遺伝子が互いを補い合うことで、一つの遺伝子を変えても目に見える変化が出にくくなる現象です。作物の性質を詳しく調べようとしても、狙った変化が現れず、どの遺伝子が本当に重要なのか分かりづらいという壁がありました。
アルゴリズムでCRISPRライブラリを設計
この課題に対して、研究チームはアルゴリズムを使った新しいアプローチをとりました。ポイントは、CRISPRの設計そのものを大規模に自動化したことです。
- 関連する遺伝子を一つひとつではなく、家族ごとにまとめて対象にする
- そのためのCRISPRユニットを大量に設計し、ライブラリとして構築する
このアルゴリズムは、数千にも及ぶ関連遺伝子を狙えるCRISPRライブラリを作ることができ、従来は扱いづらかった遺伝的冗長性の問題に、一気に切り込める仕組みになっています。
トマト1,300株で検証:甘さ・形・病害抵抗性まで変化
研究チームは、まずトマトをモデルとして新技術を検証しました。
- 合計1万5千種類のユニークなCRISPRユニットを設計
- それらを用いて、1,300株を超えるトマトの遺伝子を編集
- そのうえで、甘さ、形、サイズ、病気への強さなどの形質を追跡
Nature Communicationsに掲載された結果によると、編集されたトマトの中には、通常よりも糖分が高い、あるいは低い実をつけたものが現れました。また、
- 味の変化
- 果実の形や大きさの違い
- 病害への抵抗性の高まりや変化
といった、農業や食卓に直結する性質にも明確な差が見られたと報告されています。多くの遺伝子を同時に、体系的に編集・観察できたことで、どの遺伝子群がどの性質に関わるかをより広い視野でとらえられるようになったと言えます。
次のターゲットはコメなど主要作物
研究チームは、今回の手法をトマトだけでなく、ほかの重要な作物にも広げていく方針です。特に、世界の主食であるコメへの応用に取り組んでいるとしています。
新しい遺伝子編集アプローチが本格的に実用化されれば、例えば次のような作物づくりが、これまでより効率的に検討できる可能性があります。
- 干ばつや高温など、気候変動によるストレスに強い品種
- 病害に強く、農薬使用を抑えやすい品種
- 収量や味、栄養価のバランスをととのえた品種
イスラエルと中国の研究者が協力して生み出した今回の技術は、国境を越えた科学協力が食料問題の解決策を探る一つのかたちとしても注目されます。
気候変動と食料危機の時代に考えたいこと
新技術への期待が高まる一方で、遺伝子編集作物が広く使われるようになれば、安全性評価の方法や表示のあり方、倫理的な議論もいっそう重要になります。
今回のニュースをきっかけに、私たちが意識しておきたいポイントを整理すると、次のようになります。
- 科学技術としての遺伝子編集は、より精密で大規模な段階に入ろうとしていること
- 気候変動や人口増加の中で、安定した食料供給をどう確保するかという課題があること
- その解決策としての技術を、社会としてどう受け止め、どのようなルールで使うかを議論していく必要があること
newstomo.comの読者にとっても、これは単なる海外の科学ニュースにとどまりません。今後、世界の農業政策や食の選択肢、日本の食卓にも間接的に影響しうるテーマです。今後の研究の進展や各国・各地域の議論の動きも、継続的に追っていく価値がありそうです。
Reference(s):
Chinese, Israeli scientists develop new approach for genetic editing
cgtn.com








