NASAのAxiom-4打ち上げ延期 トランプ氏とマスク氏の緊張が影落とす
米航空宇宙局(NASA)とAxiom Space、スペースXが計画する有人宇宙飛行「Axiom-4」ミッションの国際宇宙ステーション(ISS)向け打ち上げが、ロケットの液体酸素漏れを理由に延期されました。トランプ米大統領とスペースXのイーロン・マスク氏の間で緊張が高まるなか、アメリカの有人宇宙飛行の将来に不透明感がにじんでいます。
Axiom-4はどんなミッションか
延期となったAxiom-4は、NASAとAxiom Space、スペースXが共同で運用する最新の有人ミッションです。打ち上げにはスペースXの「クルードラゴン」宇宙船と「Falcon 9」ロケットが使われ、フロリダ州のケネディ宇宙センターからISSに向かう計画でした。
乗組員は4人の国際色豊かなクルーで構成されています。
- 船長:元NASA宇宙飛行士のPeggy Whitson氏
- パイロット:インドの宇宙飛行士Shubhanshu Shukla氏
- ミッションスペシャリスト:ポーランド出身のSławosz Uznański-Wiśniewski氏
- ミッションスペシャリスト:ハンガリー出身のTibor Kapu氏
もともと打ち上げは水曜日に予定されており、クルードラゴンがNASA向けだけでなく民間ミッションでも重要な役割を担い続けていることを示す象徴的なフライトと位置づけられていました。
延期の理由:Falcon 9で液体酸素漏れ
NASAによると、今回の打ち上げ延期の直接の理由は、Falcon 9ロケットの点検後に見つかった液体酸素(ロケットの酸化剤)の漏れです。打ち上げ後ではなく、事後の詳細な検査で問題が発見されたと説明されています。
NASAのサイトによれば、新たな打ち上げ日時は、スペースX側で必要な修理が完了し、射場の利用枠(レンジアベイラビリティ)の調整が済んだあとで、あらためて発表される見通しです。記事執筆時点(2025年12月)では、具体的な日程はまだ公表されていません。
トランプ大統領とマスク氏の緊張が背景に
今回の技術的なトラブルの背後には、政治とビジネスの緊張という別の不安要素も存在します。トランプ米大統領は最近、マスク氏が関わる企業との連邦政府の契約を打ち切る可能性に言及しました。
これに対しマスク氏は6月5日、SNS「X」に、大統領の発言を受けてスペースXがクルードラゴン宇宙船の退役作業を直ちに開始する意向を示す投稿を行いました。クルードラゴンは現在、NASAがISSとの間で宇宙飛行士を往復させるために使える唯一の認定機体とされています。
NASAはこうした動きに対し、報道担当のBethany Stevens氏が投稿で、政権の宇宙政策を支持するとしつつ、「産業界のパートナーと協力し続け、大統領の宇宙に関する目標が達成されるようにする」と強調しました。NASAとしては、政権の方針に沿いながらも、企業との協力関係を維持する姿勢を示した形です。
クルードラゴンの存在感とStarlinerの遅れ
クルードラゴン計画は2020年に始まりました。2011年のスペースシャトル退役後、アメリカはロシアのソユーズロケットに宇宙飛行士輸送をほぼ10年近く頼ってきましたが、クルードラゴンの運用開始はこの状況を大きく変える転換点となりました。
クルードラゴンの重要性を高めているのが、ボーイングが開発する競合機「Starliner」の遅れです。Starliner計画は繰り返し問題に直面しており、昨年には有人試験飛行が失敗するなど、予定通りの本格運用に至っていません。こうした経緯から、クルードラゴンはNASAにとって実質的な唯一の有人輸送手段として、存在感を増してきました。
延期が示す「技術」と「政治」の二重のリスク
本来であれば、今回のAxiom-4打ち上げは、クルードラゴンがNASAと民間の両方のミッションで引き続き中核的な役割を果たしていることを示す場になるはずでした。しかし、技術的なトラブルによる延期に加え、クルードラゴン退役の可能性をめぐる政治・ビジネス上の緊張が高まっていることで、アメリカの有人宇宙飛行は二重のリスクに直面しているようにも見えます。
もしマスク氏の退役方針が実際に進むことになれば、NASAはISSへの宇宙飛行士輸送手段をどう確保するのかという、極めて現実的な課題に直面します。Starlinerの開発が順調でないなか、選択肢は多くありません。
一方で、NASAは政権の方針と産業界との連携の両方を維持しようとしており、今後の交渉や政策判断しだいでは、緊張が和らぐ可能性もあります。今回の延期は、技術的安全性の確保が最優先であることを再確認させると同時に、政治やビジネスの決定が宇宙開発の現場に直接影響しうることを印象づけました。
これから注目したいポイント
今回の国際ニュースは、宇宙開発の話題であると同時に、アメリカの政治と産業構造を考える素材にもなります。今後、特に注視したいポイントは次のような点です。
- Falcon 9の修理と再点検がどの程度の期間で完了し、Axiom-4の新たな打ち上げ日時がいつ発表されるか
- トランプ大統領による契約見直し発言と、マスク氏のクルードラゴン退役方針が、実務レベルでどこまで具体化するのか
- Starlinerを含む他の有人宇宙輸送手段の動向が、NASAの選択肢にどのような影響を与えるか
Axiom-4の延期は、一見すると単なる技術トラブルのニュースに見えます。しかし、その背景にある政治的な緊張や、代替手段の乏しさを考えると、アメリカの有人宇宙飛行の行方を占う一つの試金石とも言えます。今後の発表や関係者の動きを丁寧に追いながら、宇宙開発と政治の距離感について考えていくことが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








