ESAの欧州衛星が「人工日食」を実現 太陽コロナ観測の新時代へ
欧州宇宙機関(ESA)は、ヨーロッパの2機の衛星を使って史上初となる「人工日食」を実現し、その観測結果の画像をパリ航空ショーで公開しました。国際ニュースとして注目されるこの人工日食は、太陽の外層大気であるコロナを長時間、オンデマンドで観測できる新しい手法として期待されています。
自然の日食と何が違う? 宇宙でつくる「人工日食」
自然の皆既日食では、月が太陽をぴったり隠すことで、普段は見えない太陽のコロナが光の「王冠」のように浮かび上がります。しかし、皆既日食が起きる場所やタイミングは限られ、観測できる時間も数分ほどしかありません。
今回の人工日食では、ESAの2機の欧州衛星が地球から数万キロメートル上空を飛行し、そのうち1機が「人工の月」の役割を果たして太陽光をさえぎり、もう1機が望遠鏡を太陽方向に向けてコロナを観測します。これにより、研究者は必要なときに人工的な皆既日食の状態をつくり出すことができます。
150メートル間隔の精密フォーメーション飛行
この2機の衛星は、宇宙空間でわずか150メートルという近さで精密な編隊飛行を行っています。1機が太陽を隠す位置にぴたりと入り、もう1機の前方に人工的な影をつくることで、あたかも皆既日食のような状態を生み出します。
衛星同士の距離と位置を高い精度で保つことで、科学者たちは数時間にわたり皆既日食に近い状態を維持できるとされています。これにより、従来の自然日食では不可能だった「長時間・連続」のコロナ観測が可能になります。
2024年末打ち上げ、2025年3月から人工日食を連続生成
2機の衛星は2024年末に打ち上げられ、その後の準備期間を経て、2025年3月以降は人工日食を継続的に生成してきました。衛星は地球から数万キロメートル上空を周回しながら、編隊飛行を維持したまま、繰り返し人工日食を生み出しています。
今回パリ航空ショーで公開された画像は、こうした一連の観測で得られた成果の一部です。ESAは、ヨーロッパの衛星による初の人工日食として、その科学的・技術的な意義を強調しています。
なぜ太陽コロナをそこまで詳しく見たいのか
太陽コロナは、太陽表面よりもはるかに高温である一方、その理由はいまも完全には解明されていません。また、大規模なコロナの活動は、宇宙空間に高エネルギーの粒子やプラズマを放出し、衛星通信や電力網、航空機の運航などに影響を与える「宇宙天気」の原因にもなります。
自然の日食に頼らず、人工日食で長時間コロナを直接観測できれば、こうした物理メカニズムの理解が進み、将来の宇宙天気予報や、衛星・宇宙機器の保護策にも役立つと期待されています。国際ニュースとしての関心が高いのは、現代のインフラを守るうえで、太陽観測がますます重要になっているからでもあります。
「オンデマンド皆既」がひらく新しい観測スタイル
今回の人工日食ミッションの大きな特徴は、研究者が望むタイミングで「オンデマンド」に皆既状態をつくり出せる点です。これにより、特定の太陽活動が起きているときに合わせて観測を行うなど、これまで以上に計画的で柔軟な研究が可能になります。
また、衛星どうしを150メートルという近距離で制御し続ける技術は、宇宙工学の面でも大きな一歩です。将来は、複数の衛星が連携して一つの巨大な望遠鏡のように働く「編隊観測」が、天文学や地球観測の分野でも広がっていく可能性があります。
新しい宇宙開発の方向性として
ESAの人工日食ミッションは、太陽の謎に迫る科学ミッションであると同時に、編隊飛行や自律制御といった次世代の宇宙技術を実証する場でもあります。精密な位置制御や安全な運用が確立されれば、今後の宇宙開発の選択肢はさらに広がります。
宇宙でつくられた「人工の日食」は、一見すると遠い世界の出来事に思えるかもしれません。しかし、その先には、宇宙天気の予測精度向上や、私たちの通信・電力インフラを守るための知見の蓄積といった、身近な暮らしへの波及効果も見えています。
国際ニュースとしてのESAの今回の試みは、「読みやすいのに考えさせられる」宇宙開発の一例と言えるでしょう。太陽と地球、そして私たちの日常生活がどのようにつながっているのかを考えるきっかけとして、今後の観測成果にも注目が集まりそうです。
Reference(s):
ESA unveils 1st artificial solar eclipses made by European satellites
cgtn.com








