日本企業ispace、月面着陸2度目の失敗 原因はレーザー測距装置の遅延
日本の宇宙企業ispaceが今月行った月面着陸ミッションで、着陸船が再び月面に「硬着陸」し、その原因がレーザー測距装置の作動遅延だったと東京で火曜日に発表しました。民間企業による月面探査の難しさと、失敗からどう学ぶかという課題があらためて浮き彫りになっています。
レーザー測距装置の作動遅れで「硬着陸」
今回、月面着陸に挑んだのはispaceの着陸船「Resilience」です。同機は、月面の遠い北方にあるマーレ・フリギリス(ラテン語で冷たい海を意味し、「冷たい海」とも呼ばれます)を目指していました。
しかし、着陸の鍵を握るレーザー測距装置(地表までの距離を測る装置)の立ち上がりが遅れ、月面までの正確な距離を十分に把握できないまま降下が続いたとされています。会社側によると、Resilienceは秒速42メートルという高い速度で降下している状態で管制との通信が途絶え、その約5秒後に月面へ衝突したとみられます。
先週には、米航空宇宙局(NASA)の月周回探査機「ルナー・リコネサンス・オービター」が撮影した画像が公開され、着陸船Resilienceと小型ローバーが残骸となって月面上に散らばった様子が確認されました。
今月の事故で見えてきたポイント
- 着陸船Resilienceのレーザー測距装置が作動するタイミングが遅れ、地表までの距離情報が十分に得られなかった
- 降下速度は秒速42メートルのまま減速しきれず、通信断から5秒後に衝突したとみられる
- トラブルはいずれも着陸の最終段階という「やり直しのきかない」フェーズで発生した
前回はソフトウェア、今回はセンサー 2年連続の失敗
ispaceにとって月面着陸の失敗は2度目です。2023年には、初号機の着陸船がソフトウェアの不具合により月面に衝突しました。このときも問題が起きたのは、今回と同じ最終降下段階でした。
つまり、1回目はソフトウェア、2回目はレーザー測距装置という違いはあるものの、どちらも「最後の数分」のリスクが噴き出した形です。着陸フェーズでは、センサーからの情報とソフトウェアの判断が秒単位で噛み合うことが求められ、わずかな遅れや誤差が結果を大きく左右することがうかがえます。
民間の月面着陸、完全成功はまだ一社のみ
近年、世界では民間企業による月面着陸の試みが続いていますが、そのハードルは依然として高いままです。ここ数年で民間企業による月面着陸は7回試みられましたが、そのうち完全な成功を収めたのは1例だけだとされています。
唯一の完全成功例とされるのが、米企業Firefly Aerospaceの着陸船「Blue Ghost」による今年3月の月面着陸です。Blue Ghostは、今回事故を起こしたResilienceと同じロケットに相乗りする形で、今年1月に米フロリダ州からSpaceXのロケットで打ち上げられました。
同じ民間ミッションでも、一方は成功し一方は失敗するという事実は、月面着陸が「誰にでもできる技術」にはまだ程遠いことを示しています。技術面だけでなく、リスク管理や検証体制など、ミッション設計全体の総合力が問われていると言えます。
2027年に3度目の挑戦 4回目のミッションも計画
それでもispaceは、月面探査から撤退するどころか、むしろ次の一歩を踏み出す構えです。同社は2027年に3回目となる月面着陸ミッションを予定しており、この計画には米航空宇宙局NASAとの協力も含まれています。さらに、4回目となるミッションもすでに計画段階に入っています。
今回明らかになった不具合を受けて、同社は追加の試験や設計改善を行う方針で、その結果として開発コストは最大で約15億円(約1000万ドル超)増加する見込みだとしています。外部の専門家も事故調査に参加し、日本の宇宙機関とも技術面での連携を強めていくとしています。
CEOで創業者の袴田武史氏は、日本語での説明の中で「逆風に直面しても歩みを止めていない」と強調し、顧客やパートナーからの信頼を取り戻す意欲を示しました。
信頼回復に向けた現実的な一歩
ミッションのコストが増えることは、ベンチャー企業にとって大きな負担です。それでも、センサーやソフトウェアの検証を強化し、設計の冗長性を高めるために投資することは、長期的には信頼とビジネスを守る手段にもなります。
ispaceは今回、原因究明に外部の専門家を招き、国内の宇宙機関との技術連携も深めるとしています。社内だけで問題を抱え込まず、外部の目を入れる姿勢は、「失敗を次につなげる」という意味で重要な一歩だと受け止められます。
民間月面探査が示す「挑戦」と「学習」のサイクル
今回の事故は、民間企業による月面探査が「成功か失敗か」だけでは語れない世界であることも思い出させます。特に月面着陸のような高難度のミッションでは、一度の失敗で得られるデータや教訓が、その後の複数ミッションの安全性や成功率を左右することがあります。
ispaceは2年連続で痛みの伴う経験をしたことになりますが、そのなかで、ソフトウェア起因のトラブルと、センサーの作動タイミングという別種の問題に直面しました。これは、複雑なシステムのどこにボトルネックが潜んでいるのかを可視化するプロセスでもあります。
一方で、民間企業による月面着陸の試み全体を見ても、完全な成功はまだ一社のみという状況です。成功例であるBlue Ghostと、連続した失敗に直面するResilienceの対比は、宇宙ビジネスが「勝者総取り」のシンプルな世界ではなく、多くの試行錯誤と学習の上に成り立つ長期戦であることを物語っています。
ニュースをどう受け止めるか
通勤電車の中でこのニュースをスマートフォンで読んでいる人にとって、「また失敗か」と感じるのは自然な反応かもしれません。ただ、民間企業が月面の遠い北方まで着陸船を送り込み、最終段階まで到達しているという事実も同時に存在します。
今回のispaceの決断は、「失敗が続いたから計画を縮小する」のではなく、「失敗を踏まえて検証と投資を増やす」という方向でした。2027年の3回目の月面着陸、そしてその先の4回目のミッションまで視野に入れる同社の動きは、宇宙ビジネスが短期の成功・失敗だけでは測れない長いゲームであることを象徴しています。
私たちにとっては、こうしたニュースを「また失敗だ」で終わらせるのではなく、「なぜ難しいのか」「どのように学ぼうとしているのか」という視点で見ていくことが、宇宙開発だけでなく、日々の仕事や挑戦を考えるヒントにもなるかもしれません。
Reference(s):
Japanese company blames laser tool for 2nd crash landing on the moon
cgtn.com








