AIで米国務長官ルビオをなりすまし 米国務省が各国に警告
AI技術を悪用したなりすましが、米国のマルコ・ルビオ国務長官を装って各国要人に接触していたことが明らかになりました。米国務省は2025年7月、世界中の在外公館に警告を発し、外交の現場でもサイバーセキュリティと情報リテラシーが問われています。
AIでルビオ国務長官になりすまし
米国務省が7月3日付で全ての大使館・総領事館に送った公電によると、AIを使ってルビオ国務長官になりすました人物が、少なくとも3人の外国の外相、1人の米上院議員、1人の州知事に接触を試みていました。連絡手段はテキストメッセージ、暗号化メッセージアプリのSignal、ボイスメールなどで、公電では具体的な相手の名前は明らかにされていません。
公電は、このなりすましがルビオ長官だけでなく、他の高官を装う試みの一部である可能性も指摘しています。現時点で、こうしたメッセージを受け取った側がだれかを含め、詳細は公表されていません。
米国務省「監視と対応を継続」
米国務省のタミー・ブルース報道官は、記者団に対し「国務省はこの事案を認識しており、現在も監視と対応を続けている」と説明しました。さらに「国務省は情報を保護する責任を重く受け止めており、将来の事案を防ぐため、サイバーセキュリティ態勢の強化に継続的に取り組んでいる」と述べています。
ただしブルース報道官は、安全保障上の理由と捜査が続いていることを理由に、それ以上の詳細には踏み込みませんでした。
「成功しなかったが、警告は必要」
複数の高官によると、今回のなりすましは「成功しておらず、あまり高度なものでもなかった」とされています。それでも別の高官は、公電で全職員と各国政府に注意を促したのは「賢明な措置」だと強調しました。
公電は「今回のキャンペーンによって国務省そのものに直接のサイバー脅威は確認されていない」としつつも、標的となった人物がだまされれば、第三者と共有された情報が漏えいする可能性があると警告しました。外交ネットワークに直接侵入しなくても、人を介した情報取得という形でリスクが生じるという見方です。
トランプ政権高官を狙うAIなりすましの連鎖
今回の事件は、トランプ政権の高官がなりすましの標的となった最新の事例です。5月には、ドナルド・トランプ大統領の首席補佐官スージー・ワイルズを装った別のなりすまし事件が明らかになっていました。
さらに今年春には、連邦捜査局(FBI)が、テキストや音声メッセージを使って米政府の高官になりすます「悪意ある行為者」の存在について警告を発しています。AIの精度向上と普及により、こうした手口は今後も増えるとみられます。
外交と民主主義にとってのリスク
AIによるなりすましは、単なる詐欺の問題にとどまりません。外相や議員、州知事クラスの要人がターゲットになることで、外交交渉や政策決定のプロセスそのものが攪乱されるおそれがあります。誤った情報や偽の要請が本物と信じ込まれれば、実際の政策判断に影響が及ぶ可能性もあります。
今回の警告は米国を舞台とした出来事ですが、AIなりすましのリスクは各国共通です。日本を含む各国の政府機関、企業、自治体、さらにはメディアや市民社会も、同様の手口に備える必要があります。
私たちが取れる対策は?
外交の世界で起きていることは、一般のビジネスや日常生活とも無関係ではありません。突然「著名人」や「組織のトップ」から連絡が来るケースは、個人レベルでも起こり得ます。リスクを減らすために、次のような基本的な対策が重要になります。
- 予期しない連絡が来た場合は、メッセージアプリだけを信用せず、公式連絡先や別のチャンネルで本人確認を行う
- テキストや音声メッセージで、機密性の高い情報や決裁を求められても、ワンクッション置き、上長や関係部署と相談する
- AIによる音声・文章生成がますます高度化していることを前提に、「本物らしく聞こえるから本物」とは考えない習慣を身につける
- 組織として、なりすましを想定した訓練やルールづくりを行い、現場レベルで判断できる体制を整える
2025年に入り、国際ニュースではAIと安全保障をめぐる話題が急増しています。今回のルビオ国務長官を装った事案は、技術の進歩がもたらす利便性と同時に、民主主義や外交の足元を揺るがしかねないリスクをあらためて可視化しました。私たち一人ひとりが情報の受け手として、何を信じ、どう確かめるのか。その問いが、これまで以上に重みを増しています。
Reference(s):
cgtn.com








