エア・インディア機墜落予備報告 燃料カットオフ巡り深まる疑問
2025年6月のエア・インディア機墜落、予備報告が示した新事実
2025年6月12日にインド西部アーメダバードを出発しロンドンに向かっていたエア・インディアのボーイング787-8型機が離陸直後に墜落し、乗客乗員242人のうち1人を除く全員と地上の19人が亡くなりました。この国際ニュースについて、インドの航空事故調査局が公表した予備報告書の内容が注目を集めています。
燃料制御スイッチが衝突直前に「CUTOFF」に
インド航空事故調査局の15ページにわたる予備報告書によると、機体が記録上の最高速度に達した直後、左右2基のエンジンの燃料制御スイッチが、相次いで"RUN"から"CUTOFF"の位置に切り替わっていたことが確認されました。その時間差は1秒だったとされています。
燃料制御スイッチは、エンジンへの燃料供給を開始・停止するための重要な装置です。通常は離陸や上昇中に"CUTOFF"へ動かすことはなく、報告書の記述は大きな疑問を投げかけています。
コックピットで交わされた短いやり取り
コックピットボイスレコーダー(操縦室の音声記録)には、一人のパイロットがもう一人に対し「なぜ切ったのか」と問いかけ、もう一人が「自分は切っていない」と答えるやり取りが記録されていたといいます。スイッチ操作が意図的なものだったのか、意図しない作動だったのかは、現時点では明らかになっていません。
燃料供給が絶たれたことで、機体は急速に高度を失い、その後スイッチは再び"RUN"の位置に戻されたものの、墜落は避けられませんでした。パイロットの一人は最後に「メーデー、メーデー、メーデー」と救難信号を発していたと報告書は伝えています。
2018年の米当局通達とエア・インディアの対応
予備報告書は、米連邦航空局(FAA)が2018年に、燃料制御スイッチのロック機能が外れてしまう可能性について情報通達を出していたことにも触れています。これは、パイロットが意図せずスイッチを動かしてしまうリスクを念頭に置いた注意喚起でした。
ただし、この通達は「安全上の欠陥」とまでは位置付けられず、強制力のある指令ではなく「推奨事項」にとどまっていました。エア・インディアは調査当局に対し、この通達に基づく点検は任意と判断し、実施していなかったと説明しています。一方で、同社はボーイング787機に関するすべての耐空性指令やサービス通報には従っていたとされています。
エンジンや機体に「技術的問題なし」との見方
インドの調査局は現時点で、ボーイング787-8型機そのものや、搭載されていた米GE製GEnx-1Bエンジンに対し、新たな安全勧告を出す必要はないとしています。報告書は、他の運航者やメーカーに対する「推奨措置はない」と明記しており、少なくとも予備段階では、特定の設計上の欠陥は確認されていないというスタンスです。
機体メーカーのボーイングは、現時点でコメントを出していません。最終的な原因究明を前に、関係各社がどのような対応を取るのかが今後の焦点となります。
続く調査と国際的な協力
今回の墜落事故の調査には、インド当局に加え、米国と英国の航空事故調査当局も参加しています。国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)は、事故を担当する国に対し、原則として30日以内に予備報告書を提出するよう求めています。
インドの調査局は、関係者から追加の資料や情報を収集中であり、調査は継続中としています。最終報告では、操縦手順、機体や部品の状態、訓練や組織体制など、多角的な観点から原因が検証される見通しです。
甚大な被害とただ一人の生存者
墜落した便には、169人のインド人、53人の英国人、7人のポルトガル人、1人のカナダ人の乗客と、12人の乗員が搭乗していました。地上では数十人が負傷し、犠牲者数をめぐっては当初279人と発表されたものの、損傷の激しい遺体の鑑定が進む中で、最終的な死亡者数は260人と修正されています。
機内からはただ一人、英国人乗客が生存者として救出されました。この乗客は、炎上する残骸から自力で歩いて出てくる姿が目撃され、その後入院しましたが、現在は退院しているとされています。
私たちがこのニュースから考えたいこと
今回の予備報告書は、燃料制御スイッチの動きという重要な事実を示しながらも、なぜスイッチが動いたのか、最終的な原因は何だったのかについては結論を出していません。今後の詳細な調査結果次第で、運航手順の見直しや、機器設計の改善が求められる可能性もあります。
航空機事故はまれですが、一度起きれば被害は甚大です。国際ニュースとして伝えられる悲劇の裏側で、どのような教訓が引き出され、安全文化が更新されていくのか。最終報告の公表を待ちつつ、引き続き注視していきたいテーマです。
Reference(s):
Probe: Fuel to Air India engines cut off moments before deadly crash
cgtn.com








