国連事務総長、AI企業に「2030年までにデータセンター再エネ100%」を要請
急速に拡大する人工知能(AI)とデータセンターの電力消費に対し、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、主要テック企業に「2030年までにデータセンターを再生可能エネルギー100%で運用するように」と呼びかけました。本格的なAI時代に向けて、エネルギーの使い方をどう変えていくのかが問われています。
国連トップ、AI企業に「再エネ100%」を要請
国連事務総長は今週、急成長するAI産業に対し、膨大な電力を消費するデータセンターの運用を持続可能な形に転換するよう訴えました。
グテーレス事務総長によると、典型的なAI向けデータセンター1カ所が消費する電力は、一般家庭およそ10万戸分に相当します。AI開発ブームが続く中で、この電力需要は急速に拡大しており、「最大規模のデータセンターの需要は、現在の20倍に達するようになる」との見通しも示しました。
事務総長はさらに、「2030年までに、すべての主要テック企業が自社のデータセンターを再生可能エネルギー100%で賄うべきだ」と強調し、「このままでは持続可能とは言えない。テクノロジー分野こそが先頭に立つ必要がある」と強い言葉で呼びかけました。
現在のトレンドが続けば、「2030年までに世界のデータセンターが消費する電力は、今日の日本全体の電力消費量に匹敵し得る」とも指摘しています。この規模感は、日本の読者にとってもイメージしやすい比較と言えそうです。
データセンターが世界の電力消費に占める割合
新たな国連報告書によると、世界全体の電力消費のうち、データセンターが現在占める割合は約1.5%とされています。この比率は、2030年までに2倍以上に拡大する見通しです。
つまり、AIやクラウドサービスなどデジタルインフラを支える「見えない電力需要」が、各国のエネルギー政策や脱炭素戦略に無視できない影響を与えるレベルに近づきつつある、という問題意識が背景にあります。
「解決策としてのAI」と「エネルギーを食うAI」
グテーレス事務総長は、AIがエネルギー問題の「一部の解決策」ともなり得る点も強調しました。AIは電力網の運用を最適化したり、発電設備の保守を効率化したりするなど、エネルギーシステムの効率・革新・強靱性を高める可能性があります。
一方で、AIそのものが「エネルギーを大量に消費する存在」であることも事務総長は認めています。高度なAIモデルの学習や運用には巨大な計算資源が必要であり、その裏側では膨大な電力が使われています。AIを活用してエネルギー効率を上げつつ、AIが増やす電力需要をどう抑えていくか――この「二面性」をどうマネジメントするかが大きな課題です。
2030年までに再エネ100%は実現可能か
「2030年までにデータセンターを再生可能エネルギー100%へ」という国連の呼びかけは、野心的な目標です。同時に、AIとクラウドサービスへの需要は今後も伸び続けるとみられ、現実的な道筋をどう描くかが問われます。
エネルギー分野では、すでに多くの企業が風力や太陽光などの再生可能エネルギーを直接導入したり、再エネ由来の電力を長期契約で調達したりする動きを見せています。データセンターで消費する電力を「どこから、どのような形で調達するか」が、企業の環境戦略の中核になりつつあると言えるでしょう。
テック企業が取り組める主な方向性
- データセンターの冷却方式や機器配置を見直し、電力効率を最大化する
- 再生可能エネルギー由来の電力を長期契約で確保し、新規発電設備の開発も後押しする
- AIモデルやアルゴリズムを省エネ設計とし、必要な計算量そのものを減らす工夫を進める
- 電力供給が安定し、再エネが豊富な地域へのデータセンター立地を検討する
こうした取り組みを組み合わせることで、「AIの成長」と「持続可能なエネルギー利用」を両立させられるかどうかが試されます。
私たちの暮らしとAI電力――日本の読者への問い
グテーレス事務総長のメッセージは、テック企業や政策担当者だけでなく、日々デジタルサービスを利用する私たち自身にも向けられていると捉えることができます。
- 私たちが便利に使っているAIサービスや動画配信は、どれほどの電力の上に成り立っているのか
- 利用するサービスや企業を選ぶとき、「再エネへの取り組み」をどれだけ意識しているか
- 企業や政府がより野心的な気候・エネルギー目標を掲げることを、どのように後押しできるか
デジタル化と脱炭素を同時に進めることは、もはや抽象的なスローガンではなく、具体的な選択の積み重ねになりつつあります。AIの進化を受け入れつつ、その足元を支えるエネルギーのあり方について、改めて考え直すタイミングが来ているのかもしれません。
国連報告書が示した「現在は世界の電力消費の1.5%、2030年にはその2倍以上へ」という数字は、まだ取り返しがつかないレベルではないかもしれません。しかし、グテーレス事務総長が語るように、「持続可能ではない未来」を「持続可能なもの」に変えられるかどうかは、今この瞬間からの選択にかかっています。
Reference(s):
cgtn.com








