ホワイトハウスがTikTok公式アカ開設 トランプ政権のSNS戦略を読む
米ホワイトハウスが短編動画アプリTikTokに公式アカウントを開設しました。禁止や売却の議論が続くなかでの一手は、米国政治とSNSの関係を考えるうえで象徴的な動きです。
ホワイトハウスがTikTokに参入
ホワイトハウスの新たな公式TikTokアカウントは、火曜日に投稿された27秒の短い動画からスタートしました。米国内で1億7,000万人以上のユーザーがいるとされるTikTokの拡散力を意識した発信です。
アカウント開設から約1時間後の時点で、フォロワー数はおよそ4,500人。政権としてはまだ立ち上げ直後ですが、若年層を中心にした巨大なユーザーベースに直接メッセージを届けられる新たな窓口を手に入れた形です。
トランプ個人アカの存在感と数字
一方で、トランプ氏個人のTikTokアカウントは、すでに約1億1,010万人のフォロワーを抱えています。最後の投稿は2024年11月5日、米大統領選の投票日でしたが、それ以降更新がなくても、依然として圧倒的な規模を維持していることが分かります。
トランプ氏はTikTokだけでなく、複数のSNSを使い分けています。
- TikTok:フォロワー約1億1,010万人
- X(旧ツイッター):フォロワー約1億800万人
- 自身が所有するSNS「トゥルース・ソーシャル」:フォロワー約1,060万人
これに対して、ホワイトハウスの公式アカウントは、Xで約240万人、Instagramで約930万人のフォロワーにとどまっています。数字だけで見れば、「トランプ個人」と「ホワイトハウス公式」の影響力の差は明らかです。
TikTokを巡る「売却か禁止か」の連邦法
こうしたTikTok活用の裏側では、同じアプリに対する厳しい法的圧力も続いてきました。連邦法は、国家安全保障上の理由から、TikTokの所有構造を問題視し、米国内事業について、中国に拠点を置かない企業への売却か、アプリの禁止かを求めていました。
この法律は、トランプ氏の就任式が行われた1月20日の前日、つまり就任直前に発効する予定でした。しかし、2024年の選挙戦でSNSをフル活用し、自身もTikTokを好んでいると語ってきたトランプ氏は、大統領就任後、この禁止措置をいったん停止します。
さらに6月中旬には、人気動画アプリであるTikTokに対し、「中国以外に本拠を置く買い手」を見つけるか、さもなければ米国内で禁止されるかを判断する期限を、追加で90日延長しました。この延長は9月中旬に期限を迎える予定でした。ホワイトハウスがTikTokに公式アカウントを開設したのは、まさにこのような「売却か禁止か」という緊張感のただ中にあるタイミングだったことになります。
トランプはなぜTikTokを「守る」と言うのか
トランプ氏は当初、TikTokの禁止や事業の切り離しに前向きだったとされています。しかし、TikTokが世界でおよそ20億人に迫るユーザーを抱え、2024年11月の大統領選で、特に若年層の支持を広げるうえで役立ったと考えるようになってから、立場を大きく変えました。
現在では、プラットフォームを「守る」と公言し、TikTokを自らの支持基盤を広げるための重要な道具として位置づけています。若い世代が日常的に利用する場から距離を取ることは、その世代とのコミュニケーションの機会を自ら手放すことにもつながるためです。
安全保障やデータ保護の懸念と、選挙で「票」に結びつくSNSの力。その間で揺れ動く姿が、トランプ氏の態度変化から読み取れます。
規制対象のサービスを、政権が使うというジレンマ
今回のホワイトハウスのTikTok参入で特に象徴的なのは、本来は規制や売却の対象とされてきたサービスを、政権自らが最も発信力のある広報チャネルのひとつとして使い始めた点です。
規制の議論と実際の利用が同時に進むことで、次のような問いが浮かび上がります。
- 米政権と議会は、TikTokへの安全保障上の懸念と、若年層への重要な発信手段としての価値をどのように両立させるのか
- トランプ氏の個人ブランドと、ホワイトハウスの「公式」ブランドは、TikTok上でどのように住み分けられていくのか
- ショート動画プラットフォームは、今後の米大統領選や各国の選挙戦で、どこまで影響力を持つようになるのか
規制対象であっても、そこに人々が集まり、議論し、情報を得ている以上、政治はその場を無視できません。今回の動きは、その矛盾と現実主義を端的に示しています。
日本の読者にとっての意味
日本でも、多くの政治家や自治体がSNSやショート動画を使った情報発信を強化しつつあります。米ホワイトハウスとトランプ氏によるTikTok活用は、「どのプラットフォームで、どの世代に、どのような語り口でメッセージを届けるか」という課題を、私たちにも投げかけています。
規制の議論と実際の利用、そのギャップに目を向けることで、SNS時代の民主主義が直面する課題がより立体的に見えてきます。ホワイトハウスの新しいTikTokアカウントが今後どのような発信を続けるのか、引き続き注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








