NASAデータが示す火星マントルの「デコボコ」構造とは
NASAの火星探査機インサイトの観測データから、火星のマントル内部に巨大な岩塊が点在する「デコボコ構造」が見つかりました。45億年前の巨大衝突の名残とされ、火星の内部構造と初期の歴史を読み解く新しい国際ニュースです。
火星のマントルに見つかった「巨大な塊」
木曜日に科学誌Scienceに掲載された新しい研究によると、火星のマントルには、古代の衝突で飛び込んだ岩石が最大でおよそ4キロメートルほどの塊になって点々と存在していることが分かりました。
これらの塊は、火星に衝突した天体そのものの破片に加え、衝突の際にはぎ取られた火星の地殻やマントルの一部が混ざり合ったものと考えられています。火星の内部は一様ではなく、こうした「巨大な異物」が数多く埋め込まれている姿が浮かび上がってきました。
45億年前の巨大衝突とマグマオーシャン
研究によれば、こうした構造の起源は、火星が生まれて間もない約45億年前にさかのぼります。当時、火星には複数の巨大天体が衝突し、そのエネルギーは大陸規模の地殻やマントルを一気に溶かし、広大なマグマオーシャン(溶けた岩石の海)を生み出したとされています。
この激しい出来事の中で、衝突した天体の破片や、砕かれた火星の岩石がマグマの中にのみ込まれ、惑星の深部まで押し込まれました。今回見つかったマントル内の岩塊は、そのときに沈み込んだ破片が、何十億年ものあいだほとんど姿を変えずに保存されていた痕跡だとみられます。
インサイト探査機の静かな大仕事
こうした精密な内部構造は、NASAの火星探査機インサイトが残したデータから読み解かれました。NASAによると、インサイトは2018年に火星表面に初の地震計を設置し、ミッション終了までに1319回の火星地震を記録しました。
研究チームは、この豊富で詳細な地震データをもとに、火星内部をあたかもCTスキャンのように「透かし見る」手法で解析しました。その結果、マントルの中に密度や性質の異なる領域がいくつも存在し、それが巨大な岩塊として分布していることを突き止めたのです。
論文の筆頭著者であるインペリアル・カレッジ・ロンドンのコンスタンティノス・カラランボス氏は、惑星の内部をここまで細かく鮮明にとらえたのは初めてだと強調します。マントルには古代の破片がびっしりと埋め込まれており、それらが今も残っていることは、火星のマントルが何十億年もかけて非常にゆっくりと進化してきたことを示しているといいます。一方で、地球ではこうした痕跡の多くがすでに失われている可能性が高いと指摘しています。
地球との違い:なぜ火星では痕跡が残ったのか
地球の内部は、プレート運動や火山活動などが活発で、古い岩石構造は長い時間の中で再加工され、姿を変えてしまいやすいと考えられています。これに対して、今回の研究が示すように、火星のマントルはそれよりも「のんびり」と進化してきたため、誕生直後の激しい衝突の痕跡が内部にとどまりやすかったとみられます。
言い換えれば、火星の内部は太陽系初期の出来事を閉じ込めた「タイムカプセル」のような存在です。マントルに埋まった岩塊は、火星だけでなく、地球を含む岩石惑星がどのように作られ、どんな環境を経て現在に至ったのかを探るうえで、貴重な証拠になりつつあります。
私たちにとっての意味:宇宙と地球をつなげて考える
今回の発見は、火星の内部構造を詳しく描き直しただけではありません。巨大衝突とマグマオーシャンというダイナミックな歴史が、火星のマントルにどのような「傷跡」を残したのかを示すことで、惑星の成り立ちをより立体的に理解する手がかりを与えてくれます。
私たちは普段、地球以外の惑星の内部について意識することはあまりありません。しかし、火星のマントルに眠る古代の岩塊の存在は、地球もまたかつては激しい衝突と高温のマグマに覆われていた可能性があることを、さりげなく思い出させます。
インサイトのミッション自体は2022年に終了しましたが、その観測データは数年たった今も解析が進み、2025年の現在も新しい論文として次々に成果を生み出しています。スマートフォンで国際ニュースを追う私たちにとっても、遠い火星の内部で起きている物語は、宇宙と自分とのつながりを静かに問い直すきっかけになりそうです。
こうした宇宙探査の動きを、日本語ニュースで丁寧に追うことは、世界で進む科学技術の変化を自分ごととして考えるための第一歩でもあります。今回の火星マントル研究は、その入り口としても十分に「読みやすいのに考えさせられる」話題だと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








