アフリカが訴える「科学と資金の気候行動」第13回会議から見える焦点
アフリカの気候交渉担当者と市民社会が、「科学」と「資金」と「公正」を軸に、世界の気候行動の枠組みを組み替えるよう呼びかけています。エチオピアの首都アディスアベバで開かれている第13回アフリカ気候変動・開発会議で、アフリカの立場と課題があらためて浮かび上がりました。
アフリカ発の気候科学を中心に
会議では、アフリカ交渉団グループ(AGN)のリチャード・ムユンギ議長が、世界の気候行動における「アフリカの科学」の重要性を強調しました。
「アフリカの科学こそが、気候行動と適応を導く中心に来なければならない」
ムユンギ氏は、アフリカ大陸が、外部から提供されるデータやモデルだけに頼るわけにはいかないと指摘し、アフリカ自身の研究と知見に基づく政策決定の必要性を訴えました。
そのうえで、アフリカは、豊かな生態系と資源に関する「自らのエコロジカルな富」を科学的な理解に基づいて見直しつつあり、新たな気候外交の段階に入っていると述べました。
「気候資金は慈善ではない」
議論のもう一つの柱となったのが、気候資金(クライメート・ファイナンス)のあり方です。ムユンギ氏は、アフリカや世界の後発開発途上国に対する気候変動への適応支援は、単なる善意ではなく、責任と信頼に基づくものだと強調しました。
「気候資金は慈善ではなく、権利であり義務であり、信頼の尺度でもある」
同氏は、各国のニーズに応じた「ニーズベース」の気候資金の仕組みを整えるべきだとし、とくに先進国に対して、適応策への資金支援を拡大するよう求めました。
3兆ドルが必要なのに、届くのはわずか3〜4%
市民社会の側からは、アフリカ気候正義連合(PACJA)のミシカ・ムウェンダ事務局長が、気候資金の「ギャップ」の大きさを数字で示しました。
ムウェンダ氏によると、アフリカは世界の温室効果ガス排出への寄与が最も小さいにもかかわらず、気候変動の影響を最も強く受けている地域の一つです。そのうえで、アフリカが2030年までに自ら掲げる気候目標を達成するには、約3兆ドルの資金が必要になると指摘しました。
しかし現状では、アフリカに流れている気候資金は、世界全体の3〜4%に過ぎないといいます。
「これは受け入れがたい状況だ」
とムウェンダ氏は述べ、現行の国際的な資金の流れが、影響を強く受ける地域の実情に十分応えていないと訴えました。
最も脆弱な人々が「決める場」にいない
ムウェンダ氏は、世界の気候行動の大きな欠点として、「最も脆弱な人々が意思決定のプロセスから排除されている」ことを挙げました。気候変動の影響を真っ先に受ける農民や都市の貧困層、沿岸部のコミュニティなどの声が、国際交渉や資金配分の場に反映されにくいという問題意識です。
こうした状況を改めるためには、単に資金の総額を増やすだけでなく、「国際金融アーキテクチャ(国際的な金融の仕組み)」そのものの構造改革が必要だと主張しました。
具体的には、気候変動による「損失と被害」に対応するために設けられた損失と被害基金(Loss and Damage Fund)への、迅速で公平かつ十分なアクセスを、アフリカ諸国が確保できるようにすべきだと求めました。
2024年だけで1億1千万人超が影響
背景には、すでに進行している深刻な被害があります。ムウェンダ氏によると、2024年だけで、洪水や干ばつ、熱波などの気候災害の影響を受けたアフリカの人々は、延べ1億1千万人を超えました。
- サヘル地域では大規模な洪水
- 南部アフリカでは深刻な干ばつ
- 北部では農地を焦がす前例のない熱波
こうした多様な被害が同じ大陸で同時に進むことは、地域社会のレジリエンス(回復力)を弱め、食料安全保障や経済発展にも長期的な影響を及ぼしています。
科学・資金・公正な移行をどう結びつけるか
今回の会議のテーマは、「科学」「資金」「公正な移行」を結びつけて、アフリカの気候行動を強化することでした。会場には、各国政府の担当者だけでなく、大学や研究機関の研究者、市民社会組織など、さまざまな立場の参加者が集まりました。
議論の方向性を整理すると、次のような問いが浮かび上がります。
- 誰のデータと知識をもとに、気候対策の優先順位を決めるのか
- 最も影響を受ける地域に、どのような形で資金を届けるのか
- 経済やエネルギーシステムの転換(移行)を、公正なプロセスとして進められるのか
アフリカからのメッセージは、「被害を受ける側」が単なる支援の受け手としてではなく、科学・制度・資金の設計において主体的な役割を果たすべきだ、というものです。
静かに広がる、気候正義をめぐる対話
気候変動は世界共通の課題ですが、その影響の分布も、歴史的な排出の責任も一様ではありません。今回のアディスアベバでの議論は、「誰がどれだけ負担し、誰がどのように決めるのか」という、気候正義をめぐる問いをあらためて投げかけています。
アフリカの交渉団や市民社会が求めるのは、単に「支援を増やすこと」ではなく、科学の作り方、資金の流れ、意思決定の場のあり方を含めた、世界の気候行動そのものの組み替えです。
気候変動が深刻さを増すなかで、こうした声をどう受け止め、どのように国際的なルールや枠組みにつなげていくのか。静かながらも重い問いが、アフリカから投げかけられています。
Reference(s):
Africa calls for reframing global climate action with science, finance
cgtn.com








