国際報告書:AIが世界の電力需要を急増させ、その後安定へ
人工知能(AI)が世界の電力需要をどこまで押し上げるのか──北京で開かれた2025年グローバル・エネルギー・インターコネクション会議で公表された報告書は、AIによる電力需要は「近い将来に急増した後、やがて安定する」という見通しを示しました。
AIが押し上げる世界の電力需要
報告書によると、AIアプリケーションの普及は、世界中のデータセンターの電力消費を大きく押し上げています。AI向けの計算処理を担うサーバーの能力は、2010年以降、この10年間で全サーバーの成長ペースの4倍というスピードで拡大してきたとされています。
この分析をまとめたのが、北京に本部を置く国際非営利組織、Global Energy Interconnection Development and Cooperation Organization(GEIDCO)です。GEIDCOは、世界の持続可能なエネルギー開発の推進を目的とし、今回の会議の主催団体でもあります。
データセンター電力消費の急増
世界の電力消費に占めるデータセンターの存在感も、着実に高まっています。報告書は次のような数字を示しています。
- 2024年、世界のデータセンターの電力消費は約4150億キロワット時に達し、世界全体の電力消費の約1.5%を占めた。
- この規模は2005年と比べて4倍。
- 2020年から2024年の間に、AI向けのアクセラレーテッド・コンピューティングサーバーの電力消費は約2.4倍となり、年平均36%のペースで増加した。
AIが高度になるほど、必要な計算量が増え、そのためのサーバーや設備を動かす電力も増えていきます。データセンターは、AI時代の「電力を食うインフラ」として、すでに無視できない規模になりつつあると言えます。
3つの要因:アルゴリズム・ハード・省エネ性能
では、AIがどこまで電力を消費するのかを決めるのは何でしょうか。報告書は、AIによる電力消費の規模を左右する要因として、次の3つを挙げています。
- ソフトウェア・アルゴリズム:より効率的なアルゴリズムが使われれば、同じAIタスクをこなすために必要な計算量や電力を減らせる可能性があります。
- コンピューティングハードウェア:専用チップなど、AIに最適化されたハードウェアが進化することで、処理能力あたりの消費電力は抑えられます。
- データセンターのエネルギー効率:建物や冷却設備の設計、電力管理の仕組みを工夫することで、同じ計算能力でも必要な電力量を減らすことができます。
とくにデータセンターでは、AIを活用したエネルギーマネジメントシステムが、省エネの切り札になりつつあります。冷却に必要なエネルギー消費をAIで最適化することで、先進的なシステムでは冷却用エネルギーを約15%削減できるとされています。
「急増のち安定」というAI電力需要の未来
報告書は、AI関連の電力需要の伸び方を、時間とともに変化する二段階のプロセスとして描いています。
近い将来:急速な直線的成長
短期的には、AIによる電力需要は「急速な直線的成長」をたどると予測されています。スマートサービスや自動化システムなど、知能化されたアプリケーションがさまざまな場面に浸透していくことで、AI向けの計算需要が一気に高まるためです。
報告書は、今後、データセンター内で一般的な計算処理から「知能計算」への置き換えが進み、その割合が着実に上昇していくと見ています。やがて、AI向けの計算と電力消費が、データセンターの中で主要なセグメントになると指摘しています。
中長期:成長が鈍化する「ログ型」のパターン
一方で、長い目で見ると、AI全体の電力需要は「対数(ログ)型」の成長パターンに従うとされています。これは、
- 初期段階では成長が非常に速い
- その後、成長ペースが徐々に鈍化する
- 最後には、ほぼ横ばいに近い状態で落ち着く
というイメージです。背景にあるのは、先端的なコンピューティング技術の進歩と、エネルギー効率の改善です。アルゴリズムやハードウェア、データセンターの省エネが進むことで、「電力需要の増加」と「効率改善」がせめぎ合い、最終的にはAIの電力需要の伸びが抑えられていく、と整理できます。
世界の電力システムへの影響
報告書は、AIが地域によっては電力消費の新たな成長要因になるとしつつも、世界全体の電力消費に対する影響は「依然として小さい」としています。
つまり、AIは一部の地域では電力需要の伸びを牽引し、電力供給の安定性や柔軟性により高い要求を突きつける存在になる一方で、世界全体の電力量の中では、あくまで限定的な割合にとどまるという見立てです。
電力システムの側から見ると、次のような課題が浮かび上がります。
- 特定地域やデータセンター集中エリアでの電力需要ピークへの備え
- AI向けの安定した電力供給と、再生可能エネルギーなどとのバランス
- 送配電ネットワークの強化と、効率的な電力利用の促進
AIが世界の電力消費全体を一気にのみ込むわけではないものの、電力需要の「質」と「分布」を変えていく存在であることが示されていると言えるでしょう。
私たちが押さえておきたいポイント
今回の報告書から、読者が押さえておきたいポイントを整理すると、次の3点に集約できます。
- AIは電力需要の新しいエンジンだが、世界全体ではまだ限定的な規模
一部の地域や産業では大きな影響を与える一方で、世界全体の電力消費に占める割合は当面は小さいと見込まれています。 - 技術の進歩が電力需要のカギを握る
アルゴリズム、ハードウェア、データセンターの省エネ技術が進めば進むほど、AIの電力需要は「急増のち安定」の軌道をたどりやすくなります。 - エネルギー政策とデジタル政策を分けて考えられない時代に
AIの普及は、単なるITの話ではなく、電力インフラやエネルギー戦略と直結するテーマになりつつあります。
デジタル化と脱炭素化が同時に進むなかで、AIが電力システムにどのような負荷と機会をもたらすのか。この報告書は、その輪郭を示す一つの手がかりと言えます。今後も、AIの進化と電力需要の関係に注目していく必要がありそうです。
Reference(s):
Report shows global AI power demand to rise rapidly, then stabilize
cgtn.com







