NASA火星探査車パーセベランス、古代生命かもしれない痕跡を岩石中に発見
NASAの火星探査車パーセベランスが採取した岩石サンプルから、古代の微生物生命が存在した可能性を示す手がかりが見つかったとする研究が発表されました。火星生命探査の国際ニュースとして、2025年の今も大きな関心を集めています。
火星の湖底で生まれた岩石に「生命の手がかり」候補
今回の結果は、パーセベランスが探査を続けているジェゼロ・クレーターで採取された岩石サンプルに基づいています。このクレーターは火星の北半球にあり、かつて水で満たされた古代の湖だったと考えられています。
研究チームによると、問題のサンプルは数十億年前、湖の底にたまった堆積物が固まってできた赤みを帯びた岩石で、そこに潜在的な「バイオシグネチャー」(生命活動の痕跡の可能性がある特徴)が見つかったといいます。
サファイア・キャニオン・サンプルとは何か
パーセベランスは2024年7月、ネレトヴァ渓谷(Neretva Vallis)と呼ばれる古代の河川谷の縁に位置する露頭から、新たなサンプルを採取しました。これが今回話題となっているサファイア・キャニオン・サンプルです。
サンプルが得られたブライト・エンジェル層と呼ばれる地層は、次のような特徴を持つ堆積岩で構成されています。
- 細かい泥が固まってできた泥岩(マッドストーン)
- 砂利サイズの粒がより細かい堆積物で固められた礫岩(コングロマリット)
これらはいずれも、水が運んできた粒子が湖底などにたまってできる典型的な堆積岩です。パーセベランスは着陸した2021年以降、こうした岩石や砂や砂利にあたるレゴリス(表面のゆるい物質)を採取し、搭載した機器で分析してきました。
「バイオシグネチャー」候補となった2つの鉱物
今回の研究を率いた米ストーニー・ブルック大学の惑星科学者、ジョエル・フロウィッツ氏らは、サファイア・キャニオン・サンプルの中に、生命活動と関わって生成した可能性のある鉱物の組み合わせを見いだしました。
それが次の2つの鉱物です。
- ビビアナイト:鉄とリン酸からなる鉱物
- グレイガイト:鉄と硫黄からなる硫化鉱物
研究チームの解釈によると、ブライト・エンジェル層の泥と、そこに存在していた有機物が化学反応を起こしたことで、これらの鉱物が形成されたように見えるといいます。こうした、有機物との反応でできたと考えられる鉱物の組み合わせは、潜在的なバイオシグネチャーとみなされます。
それでも「生命の存在を証明した」と言えない理由
とはいえ、フロウィッツ氏は慎重な姿勢も強調しています。今回見つかったビビアナイトやグレイガイトは、生命とは関係のない純粋な化学反応だけでも生成しうるからです。
同氏は、パーセベランスのデータだけでは、生物が関与した反応と非生物的な反応を完全に区別することはできないと指摘しています。つまり、今回の結果はあくまで「潜在的な」バイオシグネチャーにとどまり、火星生命の存在を決定的に証明するものではありません。
3.5億年以上前の火星は「もっと地球に近かった」
現在の火星は寒く乾燥した厳しい環境ですが、かつては地表に液体の水が存在していた時期があったと考えられています。ジェゼロ・クレーターについては、約35億年以上前、周囲の河川がクレーターの縁を越えて流れ込み、湖をつくっていたというシナリオが有力です。
科学者たちは、こうした古代の湖底堆積物が残る場所こそ、かつての微生物生命の痕跡が保存されやすいとみており、パーセベランスの着陸地点として選ばれました。今回のサファイア・キャニオン・サンプルは、その期待を裏付ける有力な例のひとつといえます。
サンプルを地球に持ち帰る意味
今回のサンプルは、科学誌ネイチャーに発表された研究の中で、生命由来なのか、それとも非生物的なプロセスなのかを見きわめるうえで重要な「試金石」として位置づけられています。
研究チームは、今後の追跡研究によって、次のような検証可能な仮説を立てることができるとしています。
- ビビアナイトとグレイガイトの組み合わせが、どのような条件で最もできやすいのか
- 地球上の類似環境(微生物が関わる堆積物など)とどこまで似た特徴を示すのか
- 非生物的なプロセスだけで同じ特徴を再現できるのか
そして、サファイア・キャニオン・サンプルが将来地球に持ち帰られれば、パーセベランス搭載機器では不可能な、より精密で多様な分析を行うことができます。そのとき初めて、ブライト・エンジェル層の特徴が本当に生命活動を反映しているのかどうかを、決定的に検証できる可能性が高まります。
2025年の視点:何をウォッチすべきか
2024年に採取されたサファイア・キャニオン・サンプルは、2025年現在も専門家の間で注目の対象であり続けています。今回の研究が示すのは、「火星に生命がいた」という結論ではなく、「生命がいてもおかしくない環境が、実際に存在していた可能性が高い」ということです。
今後の国際ニュースとして、読者が注目しておきたいポイントは次の3つです。
- ジェゼロ・クレーター内の他のサンプルからも、同様のバイオシグネチャー候補が見つかるかどうか
- 地球上の実験室で行われる追跡研究が、生命由来説と非生物説のどちらをより強く支持するか
- サファイア・キャニオン・サンプルを含む火星サンプルの地球搬送計画が、どのように具体化していくか
火星にかつて生命が存在したのかという問いは、人類の「自分たちは宇宙で特別なのか」をめぐる根本的な疑問ともつながっています。今回の発見は、その大きな問いに少しずつ近づいていくための、静かだが重要な一歩といえそうです。
Reference(s):
NASA rover finds potential sign of ancient life in Martian rocks
cgtn.com








