国際研究チーム、低質量ダークマター検出に新手法QROCODILEを開発
リード:国際研究チームが、超伝導ナノワイヤーを用いた新しい検出器「QROCODILE」を開発し、これまで捉えにくかった低質量ダークマターをとらえる有望な方法を示しました。
国際チームが示した「低質量ダークマター」への新アプローチ
ヘブライ大学(エルサレム)が日曜日に発表した声明によると、チューリヒ大学、ヘブライ大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者からなる国際チームは、低質量ダークマターの検出に向けた高度な新手法を開発しました。
ダークマターは、電磁気力とほとんど相互作用しないため、光を出さず、反射も吸収もしない「見えない物質」とされています。星や惑星のように光で観測する通常の方法ではとらえられないことが、研究の大きな壁になってきました。
QROCODILE 実験とは何か
今回の実験は「QROCODILE(Quantum Resolution-Optimized Cryogenic Observatory for Dark matter Incident at Low Energy)」と名付けられています。研究チームは、超伝導ナノワイヤー単一光子検出器と呼ばれる装置を設計しました。
この検出器は、細い超伝導ナノワイヤーが二つの役割を兼ねています。
- ダークマター粒子が衝突する「標的」となる素材
- 衝突によって生じるごく小さなエネルギーを電気信号として拾い上げる「センサー」
装置は絶対零度にきわめて近い温度、絶対零度よりわずか0.1度高い温度まで冷却されます。絶対零度とは、原子や分子の運動エネルギーが理論上もっとも小さくなる温度で、摂氏マイナス273.15度に相当します。
クーパー対が教えてくれる微小エネルギーの「さざ波」
研究者たちは、超伝導状態では電子が「クーパー対」と呼ばれる対を形成することに着目しました。超伝導とは、非常に低い温度で電気抵抗がほぼゼロになる状態のことです。
もしダークマター粒子がナノワイヤーに衝突し、わずかなエネルギーを与えると、そのエネルギーがクーパー対を壊す可能性があります。クーパー対が壊れると、超伝導状態にごく小さな乱れが生じ、それが測定可能な電気パルスとして現れます。
クーパー対を壊すのに必要なエネルギーは非常に小さいため、この方式の検出器は、エネルギーの小さい低質量ダークマターの候補を探るのに適していると研究者たちは説明しています。
まだ探索前だが、コンセプトの有効性を実証
今回の検出器は、まだ開発の初期段階にあり、コンセプトの実現性を示した段階だとされています。実際のダークマター探索には、まだ用いられていません。
それでも、約400時間におよぶ試験運転では、ダークマター検出器として非常に低いエネルギー閾値(しきい値)を達成しました。この結果、軽いダークマター粒子がどのように振る舞いうるかについて、新たな制限(リミット)を設定することに成功したといいます。
今後の計画:地下実験と次世代装置 NILE QROCODILE
研究チームは今後、検出器の感度をさらに高めることを目指しています。周囲の雑音となる信号を減らすため、実験設備を地下の研究施設へ移す予定も示されています。地中深くに装置を置くことで、外部からの不要な放射線や環境要因の影響を抑えられると期待されます。
さらに、より大規模な後続実験「NILE QROCODILE」の計画もすでに進行中です。スケールアップした装置と改良された感度を組み合わせることで、低質量ダークマターの手がかりをつかめる可能性が広がると見られています。
「見えないもの」をどう探すかという問い
光では見えないダークマターを直接とらえようとする試みは、観測の技術だけでなく、「世界をどう測るのか」という考え方そのものにも関わります。今回のQROCODILEのように、物質のごく小さな揺らぎを丁寧に拾い出す手法は、ダークマター研究に限らず、量子技術や極低温物理の分野にも新しい発想をもたらすかもしれません。
まだ実際のダークマターは見つかっていないものの、こうした一歩一歩の技術開発が、見えない宇宙の姿を少しずつ浮かび上がらせていくことになりそうです。
Reference(s):
Researchers develop promising method to spot low-mass dark matter
cgtn.com








