長寿の秘密はコウモリに?自然界が教える「健康寿命」の最前線 video poster
人間はどこまで長く、そして健康に生きられるのか――そのヒントを、フランスのコウモリや再生能力を持つウーパールーパーなど、自然界の生き物から探る国際的な長寿研究が2025年現在も進んでいます。
フランスの小さなコウモリが長寿研究の主役に
フランスの農村地域では、意外な動物が老化研究のスターになっています。それが、greater mouse-eared batと呼ばれる比較的小さなコウモリです。体のサイズから考えると本来は短命なはずですが、このコウモリは期待される寿命の最大10倍も生きることができ、病気への耐性も高いとされています。
研究者たちは、このコウモリが生物学の常識を覆す存在だと見ています。なぜ小さな体で長く生きられるのか。なぜ病気に強いのか。その答えは、独特な遺伝子の働き方に隠れているかもしれません。
科学番組RAZORのReya El-Salahi氏は、アイルランドのUniversity College DublinのEmma Teeling教授と、フランスの自然保護団体Bretagne-Vivanteのチームとともに、ブルターニュ地方でこのコウモリを追跡・捕獲・観察する様子を取材しました。研究チームは個体ごとの行動や健康状態、遺伝情報を丁寧に記録し、長寿の秘密に迫ろうとしています。
バーミンガム大学で探る「老化の設計図」
イギリスのUniversity of Birminghamでは、João Pedro de Magalhães教授が、老化の遺伝学に取り組んでいます。狙いは、人間の寿命と健康寿命を左右する分子レベル・細胞レベルの要因を明らかにすることです。
健康寿命とは、単に長く生きる年数ではなく、自立して健康に生活できる期間のことです。平均寿命が伸び続ける一方で、どれだけの時間を健康に過ごせるかが世界共通の課題になっています。Magalhães教授は、長寿な動物とそうでない動物、そして人間の遺伝子や細胞の違いを比較し、老化のスピードを決める「設計図」を読み解こうとしています。
こうした研究が進めば、がんや認知症、生活習慣病など、年齢とともに増える病気のメカニズムの理解が深まり、将来的にはより効果的な予防や治療法の開発につながる可能性があります。
中国の研究機関で進む「再生」の科学
一方、中国の医療研究機関であるChinese Institutes for Medical Researchでは、Maximina Yun博士がアホロートルとしても知られるウーパールーパーの研究を行っています。ウーパールーパーは、驚異的な再生能力を持つ生き物として知られ、傷ついた組織を癒やし、失われた部位を再び生やすことができます。
Yun博士は、この再生能力の仕組みを詳しく調べることで、人間の医療への応用を目指しています。もしウーパールーパーのように、損傷した組織を安全に再生させる方法が分かれば、事故や病気で失われた機能を取り戻す再生医療の大きなブレークスルーになるかもしれません。
コウモリの長寿、ウーパールーパーの再生力、そして人間の老化をつかさどる遺伝子。これらをつなぐキーワードが、自然界のDNAです。異なる生き物同士を比較することで、生命が本来持っている修復力や防御力を、人間の健康に生かせる可能性が見えてきます。
自然界のDNAは長寿と健康に何を教えてくれるか
今回紹介した研究は、いずれもシンプルな問いから出発しています。それは「より長く、より健康に生きるには、何が必要か」という問いです。その答えを人工的な薬や装置だけに求めるのではなく、すでに自然界に存在する長寿や再生の仕組みから学ぼうとしている点が特徴です。
研究者たちが注目しているポイントを整理すると、次のようになります。
- 小さな体でも長く生きるコウモリに学ぶ、病気に強い体のつくり方
- 老化のスピードを左右する遺伝子や細胞の振る舞いを明らかにする取り組み
- ウーパールーパーのような再生能力から着想を得た、新しい医療の可能性
もちろん、これらの研究がすぐに不老不死につながるわけではありません。しかし、老化や病気の仕組みを深く理解することは、将来的に病気のリスクを減らし、一人ひとりの健康寿命を伸ばすための重要な一歩になります。
これからの長寿研究と私たちの選択
2025年の今、長寿やアンチエイジングは世界的な関心事となり、関連産業も急速に広がっています。その一方で、フランスの農村でコウモリを追いかける研究者や、実験室で細胞やDNAと向き合う科学者たちは、派手な宣伝とは距離を置きながら、基礎となる知識を一つひとつ積み上げています。
こうした地道な研究から得られる知見は、未来の医療やヘルスケアの選択肢を静かに、しかし確実に変えていく可能性があります。自然界の仕組みに学ぶ長寿研究は、人間の体を無理に変えるのではなく、本来備わっている力をどう引き出すかという視点を与えてくれます。
私たちにできることは、センセーショナルな「若返りの秘薬」を探すよりも、どのような科学的アプローチが長期的に健康に役立つのかに注目し続けることかもしれません。コウモリやウーパールーパーといった意外な生き物を通じて、長寿と健康をめぐる議論をアップデートしていくことが求められています。
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Reference(s):
cgtn.com








